うみねこで親睦を｜リアクション

うみねこで親睦を

●新年会の準備を

　新年会当日３時間前。
　幹事の総悟は大衆食堂『うみねこ』店内を清掃していた。
「おはようございます。早いですね」
　最初に来た参加者は、調理しようと猫鳴館の裏庭菜園で育てた野菜を持ってきた森蓮。
　蓮が育てた野菜は無農薬有機栽培なのでピクニックに持って行ったお弁当は好評だった。
「総悟さん、新年会のお誘い、ありがとうございます」
　いろいろあって会えなかったが、新装開店を手伝ってくれた縁で知り合ったので総悟は蓮を誘ったのだった。
「おはよう。来てくれてありがとう、森くん。その野菜は？」
「私が育てた野菜です。皆さんに召し上がってもらおうと思い持ってきました」
　持ち込まれたのは鍋料理に欠かせない白菜をはじめ、ネギ類やホウレンソウ、ブロッコリー等の栄養たっぷり野菜。
　持ち込まれた野菜の色艶の良さを見ると、彼が丹精込めて育てたのが一目でわかる。

　野菜のことで話をしていたところに、綾辻綾花と長い鞄のようなものを担いだ天満七星がやって来た。
「おはようございます。調理の下ごしらえのために早めに来たんですが遅かったですか？」
　大丈夫という言う総悟に安心した顔をする綾花。
「天満さん、その荷物……」
「これですか？　お琴です。持ち込んでも大丈夫と仰ったので持ってきました」
「琴、重たくないですか？」
　心配する綾花に「慣れれば大丈夫ですわ」と微笑む七星は、持ち運び当初は重たくて大変でしたと言った。
「おはようなのだー！　総悟、新年会開いてくれてありがとうなのだー！」
　魚戸夫妻に会えることが楽しみだった李小麗が笑顔で駆け寄る。

「新装開店したのは知っていたけど、雰囲気は昔と変わらないわね」
　家族で来たことを思い出した後、仙藤紫は店の前を見つめる。
「あなたも『うみねこ』の新年会に参加するの？」
　英モニカに声をかけられ、紫は懐かしい思い出から現実に戻る。
「ええ、調理の手伝いをしようと思って」
「私もよ。今日は皆で、おもいっきり楽しみましょう」
　
　調理や『うみねこ』会場飾りつけに来た面々は、各々の準備に取り掛かった。
　新年会に出す料理の準備の前に、まずは『うみねこ』店内の飾りつけを。
　綾花は持ってきたペーパーナプキンをハートやバラの形に折り始めた。
「綾辻様、お手伝いしますわ。作り方を教えてくださいませんか？」
「こうしてですね……」
　丁寧な教え方だったので、七星もすぐバラの形に折ることができた。
　その間、総悟と小麗は各テーブルに真っ白なテーブルクロスを敷いている。
「おじちゃんとおばちゃん、喜んでくれるといいのだ」
「そうだね」
　蓮は『うみねこ新年会』と大きく書かれ、様々な魚のイラストが描かれた紙を壁に貼り付けて総悟に確認してもらう。
「総悟さん、この辺りで良いでしょうか？」
「ちょうどいいよ」
　小上がりのお座敷には、総悟が前日に作った三角に切った折り紙と魚の形に切った色紙で作ったフラッグガーランド。
　テーブル側の壁に綾花が作った新年会の紙とペーパーナプキンで作ったバラを貼り付け。
　各テーブルには、ハートやバラの形のペーパーナプキンを置き、中央には新年会らしさを演出すべく、総悟が用意したミニ門松を。
「……ぬ、ぬぅ」
　壁に家で作ってきた輪っかの飾り付けを壁につけようとする小麗だったが、届かないので踏み台を借りて飾りつけを。
「で、できたのだ！」
「皆、会場セッティング手伝ってくれてありがとう。すごく綺麗になったよ」

　女の子が手伝ってくれて助かった、と安心する総悟だが、彼には受付の仕事が残っている。

このページにイラストを設定する