うみねこで親睦を｜リアクション

うみねこで親睦を

●楽しい合間の知的な話

　飲んで食べてと楽しんでいる中、ひとりの男性が『うみねこ』に。
「遅くなりました。新年会に来たのですが」
「架神先生、待っていたですよ！　まだ大丈夫ですよ！」
　玄の言葉を聞き、架神十字は安心した表情で総悟に会費を手渡す。
　会費を封筒にしまうと、総悟は皿洗いをすべく厨房へ。追加される料理が増える分、洗い物も増える。
　それと入れ替わりに、小皿に盛られた料理をお盆に載せて持ってきた森蓮が十字に挨拶を。
「架神先生、あけましておめでとうございます。林檎古書店の読書会で架神先生が紹介した『巖流の栄養疫学入門』読みました」
　蓮が持ってきた料理は、その書籍を参考に作った健康的な料理だった。
　栄養バランスが良いレンコンとニンジン、大豆を加えた味噌炒め。
　ヘルシーな今が旬の白菜、チンゲン菜、春菊、大根の付け合せ。
　それを見た女性陣は、栄養を考えた蓮の気遣いに感心。英モニカは、彼に付け合せのレシピを教わった。

「架神先生が紹介した本によると、早食いは太りやすいそうです」
　それを聞きギクッ！　となる参加者（特に女性）。
　早食いが太る理由については、ふたつ考えられる。
　ひとつは、食べてから満腹感を感じるまでに時間がかかるため、早食いすると必要以上に食べ過ぎてしまう。
　もうひとつは、早食いの人は、早く食べられるものを選んで食べる傾向。
「具体的には、良く噛まなくても飲み込めるものや食物繊維の少ない食べ物ですね。食物繊維の摂取量が少ないと肥満になりやすいことは数多くの研究で明らかにされているそうです」
　ですから、ゆっくり食事するため、一度に出す食品の量を減らしましょう。
　ということで、それを踏まえて料理を小分けに出す蓮。

　その頃、玄は十字に病院でどんな治療しているのかを聞いている。
「私も聞かせてほしいのだけど、いいかしら？」
　興味を示した仙藤紫も聞くことに。
「私は今、家族療法をしている。家族療法とは家族を対象とした心理療法の総称だ」
　家族をひとつのまとまったシステムとみなし、家族のメンバーの相互作用性を重視するシステム論的アプローチだと説明してから続きを。
「家族から問題を抱えた誰かを探すのではなく、家族メンバー間の相互関係を把握し、そのシステムに変化を生み出すことで個人の問題を解消していこうとする心理療法だ」
　なるほどですよ！　とうんうんと頷いて聞く玄に対し、紫は真剣に聞いている。
「対抗逆説法は、家族が抱えている逆説を利用して、家族が陥っている悪循環の解消を目指す技法だ」
　症状の改善や家族行動の変化を求めてきた家族に対し、セラピストが「現状を維持するように」という逆説的なメッセージを送る。
　現状を維持するよう言われた家族は、現在の家族システムに揺らぎを感じるようになり、その揺らぎが家族行動の悪循環を変化させ家族システムの再組織化につながると十字は解説。
「肯定的意味づけは、家族の問題行動をその状況のなかで「意味のあるもの」と肯定的に意味づけることで、家族全体のシステムの枠組みを変えていく手法だ。現在の状況を問題視している家族は肯定されることに困惑し、それが固定化したシステムが再編成されるきっかけに……話、難しかったかな？」
　専門用語を交えての会話だったので、理解してもらえたかどうか十字は不安に。
「いいえ、勉強になったわ。お話、ありがとう」
　料理を作るから失礼するわ、と紫は席を立ち、厨房へ。
「難しい話は若い子に敬遠されると思っていましたが、聞いてくれる子がいてくれて嬉しかったです」
　先生の話はためになるですよ！　と十字の肩をポンと叩く玄、そうだと言ってくれる蓮。
　たまには仕事や研究のことを忘れ、楽しむのもいいかもしれない。
　気持ちを切り替え、十字は蓮が作った付け合せを一口。

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