アモーレ４アモーレ！｜リアクション

アモーレ４アモーレ！

　鏡を見なくても確信出来る位に刀は自分の顔が真っ赤になった事を自覚した。
　きっと、口元はどうしようもない位に緩んでいる事を確信していた。
　或る意味、有り得ない位に幸せだ。共に手を取り、歩き出す妻は二人。
　幸せの二倍にならない筈があるだろうか？

『どうかしたの？』
「……い、いや。大丈夫だ！」
　反射的に口元に手を当てた刀は小首を傾げた海を遮るようにそう応えた。
　二人の花嫁は刀の良い所も駄目な所も良く知っている。

　だが今日は晴れの日なのだ。
　どれだけ嬉しくても、どれだけ感無量でも無様な姿は見せたくなかった。
　出来れば格好良い旦那様だと考えて欲しいし、感じて欲しかった。
　一緒に居ると心地良い関係には違いない。
　結婚式は乙女の夢――なら、こういう日位は何より自分が彼女達の夢を叶えなければならないとそう思う。
　頼まれてはいないが、やはり男児の本懐というものだ。
（好きになって貰った……からにはな）
　やはり駄目だ、と刀は大きく頭を振った。
　深呼吸を一つ。気を取り直して――二人の手を取る。

　リンゴン、リンゴン、リンゴンと――

　左右の両手に二人の花嫁の重みと、温度を携えて。
「……さっきの答え」
「……？」
「最高に綺麗だよ、千歳も、海も」
　不器用な少年が何とか発したその一言は――次々に降る口付けで遮られた。
　千歳から刀へ、海から刀へ、刀から海へ、刀から千歳へ、海と千歳も。

　リンゴン、リンゴン、リンゴン……

　夢か現か。それとも、もう少し上質な奇跡か。
　それは現実の世界では有り得ないかも知れない幸せの形。
　レストラン『アモーレ』は、まるで砂糖菓子を固めて作ったちょっとした夢の世界。
　……この先に待つ本当の結末は未だ誰にも分からないけれど、少なくとも今だけは甘く夢を見るのも悪くは無い。
『そういえば二人は子供は何人欲しい？
　私は四人は欲しいかなって……私の子が二人と千歳の子が二人で合わせて四人！　刀には頑張ってもらわないとだけど……大丈夫だよね！』
　だが、刀君。海のこの一撃には噴き出した。
　
　