アモーレ４アモーレ！｜リアクション

アモーレ４アモーレ！

　柔らかな陽光が降り注ぐ。
　四季折々の花が飾られたガーデンは、目にも鮮やかだ。
　桜や紅葉と奥ゆかしい日本古来のものや、薔薇などのイングリッシュ・ガーデンを想像させる植物が並んでいる。
　ごォん、ごォん。
　荘厳なる鐘の音と共に姿を見せた新郎新婦は誰もかれも幸福と星屑を感じさせて。
　ラブの星屑は甘いコンペイトウを思わせる。きらり、きらりと輝いて、拾い集める天使達も幸福そうだ。
「うひ～、式が沢山あるみたいだね～」
　回田はつなの言葉に、千鳥雅人はトレンチを手にしたまま大きく頷いた。
　天界と魔界の間に鎮座するレストラン『アモーレ』の従業員である二人は楽しげに給仕を続けている。
　天使の雅人は星屑をトレンチに幾つも乗せて、厨房で待つシェフ、鴻上彰尋――悪魔のアキヒロへと運び続けている。
　雅人やはつなの知っている彰尋とは何処か雰囲気の違うアキヒロは『美食』の罪で悪魔へと堕ちた所謂、堕天使なのだという。
「美食の悪魔が作るんだから、星屑の甘さも手伝ってもぉ～っと美味しいよね～」
「うん！　美味しい物を食べれば、みーんな幸せになるもんね！」
　美味しい物を想像してうっとりとして見せたはつなにぴょこりと生えたアホ毛を揺らして雅人は嬉しそうに笑みを零す。
　花嫁のドレスをちらりと見遣り、その幸福そうな表情に周囲には花が舞い散った。
「気合入れてお仕事しよ！」
　やる気も十分、レストラン『アモーレ』は今日も天使と悪魔に大繁盛です。

「いっぱいみんなを幸せにして、いっぱいラブを集めようねー！」
「ね～！　その分、後での一杯が美味しくなるし～」
　そんな、はつなの言葉に老紳士・ヴァレンシュタイン氏がちいさな咳払い。
　小さく笑みを零した雅人とヴァレンシュタイン氏を前にして、はつなは「ち、違うよ～！　お仕事はしっかり頑張るよ～！」と慌てた様に零した。

　

　どたばたとしたウェイトレス二人とヴァレンシュタイン氏のやり取りを見ながら、厨房で星屑を調理するアキヒロは悪魔の料理人として美食を提供する。
　やけに人の出入りが多いガーデンテラスには、天使や悪魔のお客様が大勢姿を見せている。
「今日は色々と忙しいなぁ」
　ぽつりと漏らしたアキヒロの元へ、はつなが「おねがいしま～す」と淡い紫色の星屑が入ったバスケットを厨房へと運びこんだ。
「了解」
「うひ～、大忙しだね～」
　今日は、結婚式のお客様が多いみたいだと零したはつなに成程とアキヒロは頷く。
　硝子が張られ、オープンキッチンの様に、シェフの様子が見える『アモーレ』。
　確かに新郎新婦と思わしき客足の多さにはアキヒロも気付いていた。折角の『幸福』の日だ。
「今日はとびきり忙しい日になりそうだね。結婚式が何組もあるようだし……お客様が多いのもそのせいかな？」
「そうだね。沢山の人が来てる！」
　アホ毛をぴん、とさせた雅人が運びこんだ薄桃色の星屑。受け取ったアキヒロは二人がオーダーを取りに走って行った事を見送って、さて、と一つ伸びをした。
「今日も楽しく料理を振る舞おうか。どれだけの人が料理に夢中になるかな？」
　口元に浮かんだのは意地の悪い笑み。
　元・天使の美食の悪魔は悪魔とも天使ともつかぬ微笑みを浮かべて料理へととりかかる。

　レストラン『アモーレ』、本日も盛大にオープンしております

「さぁ、ご注文は？」

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