『輝け！　ミッドナイト・フリーキー・コンテスト！　第一部』（３）

　まったくもって、妙なことに巻き込まれてしまったようです。司会者に名前を紹介されて、わけも分からずステージへ送り出されるにあたって、巫部 紫苑は頬に手を当てて、ちょっぴり思案顔。
「パフォーマンスと言われましても。お腹が空いてそれどころじゃ……」
　きゅるるるる。寂しそうに訴えかけるお腹を押さえて、切なく眉を寄せた彼女の恰好ときたら、薄いネグリジェ一丁。身体を傾けた拍子に、豊かなお胸がぽよんとひとつバウンドして、発散されるキョーレツな色気には、視聴者からもウオーーー！　などと手放しの歓声が上がります。もっとも、紫苑本人としては肌の露出くらい、全くの無頓着ではありましたけれど。
「……あ。そうです♪」
　ぴこん。何かを思いついたらしく、華やかな笑顔を浮かべてぱちりと両手を叩いたら、むにゅっと魅惑の双丘が寄せて上がって、興奮の視聴者は再び、ウオーーー！！

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　ちょうど、夜食を準備中なところを呼び出されてしまったという、すこぶる大食漢である彼女。
「え～。何をしても良いと言われたので、料理なんかをやらせてもらいます」
　どこから取り出したやら、紫苑は真っ白なエプロンを身に着けて、やる気十分。なのは良いとして、その下はテレビに映るには少々露出過多なセクシーネグリジェ姿なもので、これっていわゆる……裸エプロンみたい！
　途端に、ピー、ピピー！　と審査員席から鳴った口笛に手を振って応えつつ、フリフリエプロンの紫苑がステージの中央へ進むと……ごんごんごんごん。ずごごごご……！　突如として床からせり上がってきた陳列台には、つやつやの霜降りお肉に、みずみずしい新鮮お野菜。とれたてピチピチのお魚に、色とりどりのフルーツも。いかにも美味しそうな、食材てんこ盛り！　どうやらこのステージには、各種様々な仕掛けが施されているようで、出演者のあらゆるニーズにバッチリと応じてくれる、スペシャルな舞台であるようです。

「さあ、お料理開始です♪」

♪『ニャーピー・４分クッキングのテーマ』

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演奏　ユメギワ空想楽団

　おなじみの軽快なマーチに乗って、紫苑はさっそく食材選び。鼻歌まじりに、
「あら、この牛肉、とっても美味しそうですね♪　使わせていただきましょ……あらあら、こちらのブリも美味しそう、あらあらあら？　このピーマンの色つや、なんて素敵！」
　くるくると食材置き場を巡って、てきぱきとピックアップ。
　きらきら輝く、新品の調理器具が満載のキッチンに幾つも収められた、オールステンレスの美しい包丁たちを品定め。しゅらんとその中の一本を引き抜くと、さっそく調理開始！
「まずは、サンドイッチを作りますね」
　ふっくら焼けたほかほか食パンを手際よく切り分けたら、ハムを薄くスライス、卵は半生スクランブルエッグに。レタスにトマトをトッピングしてむぎゅっと挟んだら、あっという間にサンドイッチが完成！　お皿に乗せて、審査員席へ運ぶ……のかと思いきや、
「はむっ。んんん、美味しいです！」
　自分で食べたー！
「あ、これは私のおやつですよ？　本番はこれからです♪」
　ボリュームたっぷりのサンドイッチをパクつきながら、改めまして。本格クッキング開始！



　お鍋でぐつぐつ、凝縮された魚介の旨味が染み出した濃厚スープから立ち昇る、何とも爽やかな潮風。
「まあ、ぷりぷりして美味しそう！　はむっ」
　身がぎゅうっと詰まった大振りのエビちゃんをひょいと取り上げて、ぱくりっ。
　大皿に刻んだ葉物野菜を敷き詰めたら、茹でたマカロニをどっさり。ミニトマトとコーン、ブロッコリーを添えて、マヨネーズベースのドレッシングを控えめにかけたら、
「この、新鮮お野菜のみずみずしさがまた……はむっ」
　ブロッコリーをひと摘み、ぱくりっ！
　鉄板でじゅうじゅう、極厚巨大ステーキ肉が焼ける、この香ばしい香りときたらもう……！
「ああ、染み出るこの肉汁がもう、たまりません……はむっ♪」
　ご丁寧にサイコロ状にカットしてから、お肉をぱく、ぱくりっ！！
　調理中であるとか、見守る観衆やら審査員の目とか、そんなことにはもはや一切の関わりも無いとばかりに、とにかく紫苑は、食べるわ食べるわ！　つまみ食いの域はもはや超越して、出来上がる前に全ての食材を食べ切ってしまうのでは……？　なんてすさまじい勢いです。おまけに、最初に作ったつまみ用のサンドイッチを全て平らげてしまうと、即座に新たなサンドイッチを補充してしまう手際の良さ。恐るべきは、紫苑の胃袋！！
　とかなんとか、人目はばからず食べまくりながらも。
「……はいっ、できました！　ブイヤベース風魚介のお鍋に、マカロニシーザーサラダ、サーロインの１ポンドステーキに……」
　審査員席のテーブルには、彼女が食べた分と比べるといささか少量ではありながらも、極上の食材をふんだんに使った紫苑の手料理が、ずらずら、ずらり！　視聴者的には深夜に酷な、破壊力抜群なメシテロ映像が展開されていくのでした。

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「んじゃさっそく、いたらきま～……美味っ！！　何コレ美味っ！！　お酒のつまみにピッタリだわ～、ウヒヒヒヒ♪」
「ハム、ハフハフッ！！　ハムッ！！　紫苑ちゃんの爆裂ボディをオカズに、白飯何杯でもイケちゃうぜ！？」
「では、僕はサラダをいただきます。それにしても、審査員の数倍の量を食べているのはいかがなものでしょうか？　それは本末転倒というものではないかと僕は思うのですが、もぐもぐ。あ、美味しいですね。美味しいですが、ここは何らかのパフォーマンスを我々審査員に披露していただく場であって、料理をするというからには審査員が食するべき料理を作るというのが当然の流れであって、あ、美味しいですね。うん。これは美味しい。もぐもぐもぐもぐ」



【85% vs 15%】