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ＭＦＳ！ ～あるいは全ての表現者に捧ぐ、夜半過ぎのＴＶショウ
『輝け！ ミッドナイト・フリーキー・コンテスト！ 第一部』（４）
パフォーマンス……というその前に、彼のお名前こそがまずは、インパクト抜群というものでして。
烏頭嫺 霓。うずみやげい、ちょっとなかなか見ないような、難しい字面のフルネームです。
「おかげで、苗字も名前も読みにくいと揶揄され。げい、の響きにもう一段階揶揄されて……」
「……ははあ。分かります。分かりますとも！」
慰めるようなノイジー・パンジー、どこか複雑な色を含むその眼差しには、苦い笑いを返しつつ。
けれど霓は、自分が恵まれていることを、つぶさに自覚してもいるのです。赤い月の輝く天を仰いで、
（そう。生活は豊かで、不自由もなく……ひと回りも年下の、法律に触れたらアウト！ なお嫁さんまでもらえるなんて）
婚約者のからかいやあの含み笑いを思い出して、ついつい、ぽつり。
「ああ。なんて幸運で……不幸な生き方なんだ」
ぱちり！ 霓は、指をひとつ鳴らします。
「テーブルセットを用意していただけますか？ とびきりエレガントなものをお願いいたします」
もちろんのこと、彼はうじうじとして、自身の被るこんな状況を嘆くばかりではありません。そんなのが最も場を白けさせる行いであると、彼は理解しているのです。
趣味と言うか、副業とも言いましょうか。霓にはステージの上で披露するに足る、ちょっとした特技がありました。彼は審査員席へ目を向けると、
「お嬢様。少しの間、貴女のお時間を拝借してもよろしいでしょうか」
「……ヒック？ へっ、私？」
ぱちくりと目をしばたかせたのは、既に二本のワインボトルを空け、赤ら顔の桜栄 あずさ。
燕尾服を纏い、優雅な仕草で一礼とともに手を差し伸べた、彼の持つもうひとつの顔とは……そう。執事！ 大会社の御曹司として生まれつきながら、家業のたまものである高級食器の数々を目にするうち、彼がのめり込んだのは、アンティークな小物や食器類の蒐集でありました。そんな趣味が高じて、いつしかそれらを美しく配膳することに目覚めた彼は、自ら執事の恰好を身に着けて、瀟洒で心を尽くしたおもてなしの真似事など始めてしまったのです。
「えっとあの、私こういうのは合わないっていうか。その、ほら、酔っぱらっちゃってるし……」
「私にとっては、おもてなしすべき大切なお客様であることに変わりはありません。さあ、こちらへ」
盛大に酔っぱらっていたはずのあずさも、霓がそっと優しく手を取りエスコートすると、ぽわっ！ まるで少女のような恥じらいぶりです。金縁を施した白い椅子の背を引き、テーブルへ腰を落ち着けさせると、霓はぴんと立ち、片手を胸に、何とも様になる美しいお辞儀とともに、
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「お、お嬢様……だなんて……う、うへへぇ♪」
夢心地なあずさへ、滑らかな陶器のティーセットで、豊かな香り立つ紅茶を振舞います。
まるで別世界へ紛れ込んでしまったかのような、一見その場にはそぐわない光景ながら、視聴者たちもいつしか時を忘れて見入っているのか、ステージはしんと静まり返って。そこはもはや、お嬢様と執事だけが織りなす、極上セレブな空間なのでした。
霓はおもむろに、ぱんぱん、と小気味よく手を叩きます。
途端、彼の背後へずらりと並ぶのは、白いタキシードの楽団員たち！
♪『美しき青きドナウ』
ヨハン・シュトラウス２世 / 演奏 ユメギワ空想楽団
初老の指揮者がタクトを振り上げた、瞬間。定番のウィンナ・ワルツがステージのみならず観客席、果てはテレビの向こうにまで響き渡り、その豪奢かつ格調高い調べを背に、惚けたようなあずさへ、ひざまずいた霓は再び手を差し伸べます。
「お嬢様。よろしければ私めが、一曲、ダンスのお相手など務めさせていただきたく」
「へっ、あっ？ わ、私と？ ダンス？ マジで？ うわ～うわ～、足踏んじゃったらどうしよ……」
なんてわたわたするあずさを、霓は微笑みながら導きます。
いざ踊ってみると、足を踏むこともなく、あずさのステップもこれがなかなか。ゴージャスな音楽に彩られて、執事のエスコートで踊るワルツ。そんな光景はまさしく、中世ヨーロッパの社交界のごとし！
じゃん、じゃじゃん！ と曲は最後の盛り上がりを経てフィニッシュ、手を取り合ったふたりが観客席へとお辞儀をすると、あたりには上品かつ壮大な拍手が鳴り響き、彼らの踊りを称えました。
「素晴らしいお手前でございました、お嬢様」
「は、はひぃ。そちらこそ、けけけっこーなワザマエで……」
「何とも、夢のような一幕でございましたね！ 桜栄審査員にもご満足いただけたようで何よりです。さあさあ、お次の出演者は、一体どんなパフォーマンスで我々を魅了してくれるのでしょうか？」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年07月23日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年07月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2016年07月30日 11時00分
