【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

　お手つきをすると、相手から札を一枚送られる。どの札を選ぶかは相手チームが決めるのだが―――
「どの札がいいですか？これ？それとも……」
　エレノアはわざとゆっくりと札を示し、わざわざ相手に訪ねた。
「どれでも同じだろ。今のでいい」
　楓の返答を聞いて、エレノアはわざと別のものを差し出した。
「違うじゃねえか。あんまりふざけてると―――」
　楓の言葉を、彰尋は肘でつついて遮った。挑発に乗せられて、リズムを崩すな。楓と万里はすぐ、彰尋の言いたいことを察した。
（挑発には乗らない。賢い判断です―――でも、重要なのは盤外戦術の効果そのものではなく、相手に『盤外戦術を仕掛けられた』と感じさせることなんです。なにくそ負けるか―――その思考がさらに集中力を削ぐのですから）
　盤外戦術を意識した時点で術中にはまっている。エレノアは、自分の思惑通りに進んでいることにほくそ笑んだ。

　おほけなく　うき世の民に　おほふかな　わがたつ杣に　墨染の袖

　瓢の役割は、遠慮なく相手の陣を攻めることだ。自陣の自分の近くには、辛うじて覚えた数枚の札しか置いていない。三字決まりだが構うものか。お手つき覚悟で身を乗り出し、三字目まで確認せず敵陣ど真ん中を思い切り払った。
「お、ありやしたねぃ」
　瓢は、飛んでいった札の中から目的の札を見つけ出す。民衆を救うことを願った高僧・慈円の歌である。
「あっしがこの札を持つ、それだけで中々の皮肉だろうさ」
　派手に散らかされたおかげで、相手の陣はまた並べ直しだ。せっかく覚えた配置も狂ってしまう。
「せっかく並べて覚えたものを、また一から探すがいいさ」

　荒れ気味な試合展開に、万里は一計を案じた。
「向こうがそのつもりなら、こっちだって……」
　自分の役目は、相手に自陣を取られないよう守りに徹すること。自陣の札の位置は大体覚えているので、視線で札のありかを読まれないようにするのだ。視線を外す分、お手つきには充分に注意する。

　立ち別れ　いなばの山の　峰に生ふる　まつとし聞かば　今かへり来む

　自陣にあった札だ。万里は視線を全く関係ない方向にやりつつ、右手を出して素早く目的の札を抑える。
　今度は策にのせられたことになる狂言回しチームに、万里は余裕のある表情を見せる。
「これは私たちのものだから。ふふ、ごめんなさいね！」