【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

「今勝ってるんデス？負けてるんデス？」
　試合は中盤になったが、観客席のトワには、戦況がよくつかめないらしい。
「Silent……しずかーに聞くマス」
隣の人に聞いて、自チームがやや負けていることを教えてもらった。
「カエデもアキヒロもバンリも、トワよりすごいデスから、いい結果になる思うマス！」
　トワは友達を信じて、祈りながら試合を見守った。

「пирожки……」
　上の句が読まれてからの待ち時間に、エレノアが何事か呟いた。もとより、聞き取り辛い単語を適当に呟くことで、相手の集中を削ぐ狙いである。勝つために、歌全体の暗記はせず、上の句と下の句の何文字かの対応関係だけを効率的に覚えている。その甲斐あって、狂言回しチームの中で一番多くの札を着々と取っていた。
「暗号か……？」
　楓は気にかけながらも、冷静に相手に渡す札を選ぶ。相手に送った札は何か、どこに置いたかまできちんと覚えておけば、それも確実に取ることができる。だが、何が起きてもおかしくない相手なので、すり替えでもされないかじっと注視する。
「その一瞬に救われることもあるはずだ」

　わが庵は　都のたつみ　しかぞ住む　世をうぢ山と　人は言ふなり

　瓢は、「相手のお手つきを誘発する」ためにどこまでも趣向を凝らしている。詠まれたらとりあえず動いて、まず相手を焦らせる。相手がお手つきを警戒したなら、仲間がその隙をついて札をかっさらう。
　ねむるが、ボクシングで鍛えた腕の力を生かして豪快に札を弾き飛ばした。反応速度はもちろん、フックの技術は払いに応用できる。
「鳴猫館で悠々自適に暮らすあっしを、皆は奇人と呼ぶ……この歌には近いものがあると思わんかね」
　瓢の策はまだある。二枚札も、あえて離さず並べて置いてある―――

　筑波嶺の　みねより落つる　みなの川　恋ぞつもりて　淵となりぬる

　彰尋の手が、瓢の目の前の札を払った。
「あれ……」
「二枚しかない札を固めて置いとくと、はじめの“つ”を聞いただけで取れるよ」
　そう、この作戦はお手つきどころか、相手を助けてしまっている。
　荒れた試合は、簡単に流れが変わる。このプレーで、流れは『ねこのて』チームに傾いた。

　ちはやぶる　神代も聞かず　竜田川　からくれなゐに　水くくるとは

　今度の札は、万里の守備範囲にあった。
「この在原業平の歌、最近落語で聞いて覚えているの。調べたら、さっきの『立ち別れ……』の行平と兄弟なのね」
　万里は、自分の払った札を回収しながら、最近知った豆知識を披露した。

　かくとだに　えやはいぶきの　さしも草　さしも知らじな　燃ゆる思ひを

　自分のよく知っている歌が読まれ、彰尋は反応した。敵陣は担当ではないが、手を伸ばして確保する。なぜかは分からないが、気になる札は何となく、取れると満足する。