【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

「何が悲しゅうてかるた大会なんぞに出てるのか……」
“『ねこのて』の猫の手”チームの夜海霧楓は思わずぼやいた。全ては、今観客席にいる我儘主人のせいである。そんな楓をよそに、観客席からは鳴り物付きで声援が聞こえてきた。
「Cheeringするマス！ねーこーのーてー、fight！」
「トワ！もう試合始まるから静かにしろ！」
「Oh, game中は静かにデス？ Be quiet,　静かにするマス……」
　楓にどやされて、トワ・E・ライトフェロゥは大人しく引っ込んだ。喫茶『ねこのて』制服のメイド服に、猫耳猫尻尾までつけたトワの服装には訳がある。

　数日前、喫茶『ねこのて』での出来事だ。
「『ねこのて』をもっと流行らすには？ ―――かるた大会に出るいいデス！」
チームが結成されたのは、トワの思いつきがきっかけだった。
「メイド喫茶って初めて連れてこられたけど、まあ、子供たちだけで行けるところじゃないな……」
　トワに頼まれてやってきた鴻上彰尋は、店内を物珍しげに眺めている。
「うちのチビたちもお世話になってるようだし、万里さんのためにも協力して頑張るよ」
　彰尋は、弟と妹のことを思いやりながら言う。
「彰尋君、付き合ってくれてありがとうね。お店の宣伝になれば、もちろんそれは嬉しいけど……」
　店長代理の桧垣万里だ。今はメイド服を着ているので、仕事ができるモードである。
「みんなと遊べるのも嬉しいわ」
「あとはカエデ！お願いしマス！」
　トワは矛先を楓に向けた。
「何で俺が？チームは3人だろ」
「トワはJapanese,にっぽんごーくわしくないデスから、カエデに出てもらうデース！」
「俺は嫌だ」
　楓はすげなく断るが、トワは諦めない。
「カエデ、ひどい……」
　トワの両目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「大変、トワお嬢様が……」
「楓、こんな小さな子を泣かすなんて……」
　実際は嘘泣きなのだが、万里と彰尋が味方し、楓は退路を絶たれる。
「泣き落しとは卑怯な……。しゃーねぇ、契約条項としてやってやる！」

　こうして、店の宣伝のために『ねこのて』チームは寝子高にやってきたのだった。
「相手の人はどうも手ごわそうだね……」
　彰尋が対戦相手の様子をうかがうと、楓も同意した。
「確かに、一癖も二癖もありそうだ。急造チームだっつーのに、何か意図を理解できるのも不思議だな」
「とにかく、正々堂々と頑張ろう」
　一方の万里も張り切っている様子だ。
「チームメイトも、相手の子たちも私より年下なのね……だからといって手加減はしないわ！今日はいっぱい楽しみましょ」
　今はメイドモードではないので、少々大人気ない素の性格が出ている。