【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

「形勢逆転か……」
　ねむるは、さらに目を鋭くして相手の視線を観察した。下の句が読まれ、次の歌への集中を増す間も、瞬きの数や視線の移動から、相手の心理や狙い目を予測する。相手陣がの札が減り、味方陣がやや多め。つまり劣勢だ。
ねむるは終盤の作戦に切り替えた。札の密集したところにのみ意識を集中するのだ。

　一方の『ねこのて』チームでは、最も望ましい形で楓の出番がやってきた。札が減って覚えやすくなる後半戦は、スピードに自信のある楓に有利になる。しかも相手陣の札が多い状態で、心置きなく攻められる。

　あしびきの　山鳥の尾の　しだり尾の　ながながし夜を　一人かも寝む

　敵陣の最も奥にあった札も、楓は迷わず弾いた。
「構わない、そこの札は無視だよ！」
　ねむるはすでに、札の少ない場所には見切りをつけている。しかし、最終盤では劣勢は覆らない。

　めぐり逢ひて　見しやそれとも　わかぬ間に　雲隠れにし　夜半の月かな

　自陣から送って、場所を覚えていた札だ。楓が相手陣の左側を抜き去り、『ねこのて』チームの陣の札はゼロとなった。
　波乱の第７試合は、結局“『ねこのて』の猫の手”チームが、狂言回しチームを８枚差で下し、幕を閉じた。

「勝ったデス！みんなすごいデス！『ねこのて』で一休みするといいデス！」
　試合後、トワは仲間を大はしゃぎで迎えに行った。
「Maidのおーもーてーなーし、するデスヨ！」
「今日は楽しかったわ。楓君、彰尋君、それにトワさんも。お店で美味しい紅茶を用意するわ」
　万里も、満足そうにチームメイトの方を振り返った。
「Then, カエデ！最後の歌はどういう意味デス？」
「あの歌の意味か……」
　トワに質問され、楓は少し考えて答える。
「方向音痴の誰かさんは、ちょっと目を離した隙に、すぐいなくなっちまうもんだって意味だよ」