【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

「作戦……らしい作戦はありません！正々堂々ドーンと行きますよー！」
　非公式新聞部チームの結梨亜・カールシュテインは、堂々と構えている。
「かるたなら、おとーさんが日本大好きなお陰で何度もやったことがあります！ ……いろはがるたばかりでしたけど」
　
　八重葎　しげれる宿の　さびしきに　人こそ見えね　秋は来にけり

「これです！」
　知っている歌に素早く反応して、結梨亜は札を押さえた。彼女は「や」で始まる歌を重点的に覚えてきた。
「４つくらいなら何とかなるかな、と思いまして！ちゃんと覚えておけば、逆にお手つきになることもないかと！」
　三ヶ島葵も、試合中は静かに集中している。
「国語の成績は大丈夫だけど、面白そうだから参加したんだよー」
　こちらも、スタイルはあくまで正々堂々と。
「ある程度は覚えてきたけどー。覚えてきた札は出るかなー？」

　嘆けとて　月やは物を　思はする　かこち顔なる　わが涙かな

　葵は、鮮やかに相手の陣を払った。主に敵陣の札を狙っていく「攻めがるた」の戦法だ。もちろん、自陣の札が読まれた場合もちゃんと取りに行く。

「なかなかやるね……」
　手前にあった三字決まりの札を取られてしまったすばるが言う。
「まだ大丈夫よ、二人とも百人一首に詳しいみたいだから、期待しているわ」
　ブリジット・アーチャーがチームメイトを励ました。

　めぐり逢ひて　見しやそれとも　わかぬ間に　雲がくれにし　夜半の月かな

　続いては、紫式部による一字決まりの歌。狙いをつけていたブリジットが、華麗な払い手で札を取った。
「せっかくだから、紫式部と清少納言の歌は取りたいのよ」
　どのあたりが「せっかく」なのかは不明であるが……

「前にテレビで少し見たことがありますが、あんな風に綺麗に“スパーン！”って取れたらカッコイイですよね！」
　チームでの真剣勝負に、音無文のテンションは上がってきている。
「私は皆さんより身長が低い分リーチが短いですからね。その分早く反応しなくては」
　
　春すぎて　夏来にけらし　白妙の　衣ほすてふ　天の香具山

　文はその言葉どおり、チームで一番のスピードで自陣を払った。どの札を狙うかは、自分の中で大体決めている。
「わからない人が多いマイナーな札を狙うより、皆が取れそうな有名な札を確保してしまう作戦です！」