【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

「や」で始まる歌を覚えてきただけでは心もとないので、結梨亜は敵陣に目を凝らして、並べてある札を確認した。なるべく敵陣を中心に、できるだけ覚えておくのだ。
「油断する時間はありません……。た、確かに頭がいいわけではありませんけれど！その分だけ時間をかければいいんです！」
　そして、結梨亜は運良く相手の陣に、分かりやすい札を見つける。川に紅葉が散っているという情景がイメージしやすい歌だ。

　山川に　風のかけたる　しがらみは　流れもあへぬ　紅葉なりけり

　見つけた直後に歌が読み上げられ、結梨亜はちゃっかりと札を確保した。

　夜をこめて　鳥の空音は　はかるとも　よに逢坂の　関は許さじ

　ブリジットと葵の反応は鋭かった。ほぼ同時に、非公式新聞部チームの陣の札が散る。
「触れたのが同時の場合は、その札があった陣のチームの取り札になるよ。この場合は、非公式新聞部チームの取り札」
　主審の永田先生が、競技かるたのルールを説明した。ブリジットが悔しがる。
「取りたかったなー、清少納言の歌……男の不誠実を許さないなんて、気の強い性格が分かるじゃない？」
「へー、百人一首も奥深いんだねー」
　歌の意味を考えつつ、葵は感心した。

　白露に　風の吹きしく　秋の野は　つらぬきとめぬ　玉ぞ散りける

　続いて札を飛ばしたのはすばるだった。
「これは取りたかった―――あの本で、ダイイングメッセージとして使われてたからね」
「どんまいー、気にしないことだよー！」
　自陣の札を取られた非公式新聞部チームだったが、葵が励ました。

　竸った展開の試合も、中盤から終盤にさしかかろうとしている。

　君がため―――　

　歌のはじめの方を聞いて、文はピンときた。取りたい札だが、これは六字決まり。「君がため　惜しからざりし……」の歌と「君がため　春の野に出でて……」の歌は間違えやすいので、注意して聞かないと―――
「犯人はあなたよ！」
　六文字目が読まれないうちに、ブリジットが鮮やかな手つきで自陣を払う。

　―――春の野に出でて　若菜つむ　わが衣手に　雪はふりつつ

「……当たりね」
　きょとんとする相手チームを尻目に、ブリジットは会心の笑みを浮かべた。
「五文字合ってれば、誤差の範囲でしょ」
　その横では、美野梨とすばるが顔を見合わせていた。
「五文字合ってても、当たる確率は50％だと思うけど……」
「ボクもそう思うが……いや、ボクは信じてたよ」