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「あれに出来るのは住人を滅することのみです」
巫女の声を遮って嗤うは、少女のかたちした『隠鬼』。
「あなたを殺めるんは、うち」
舞台を蹴り、『鬼』が巫女へと切迫する。巫女の喉を狙う正確な刃筋は、けれど空を切った。
「ああもう、また邪魔を」
歯噛みする『鬼』の視線の先に、カンナを引き寄せると同時にろっこんで身を加速させ『鬼』の刃を躱した刀の姿。
「俺の傍にいろ」
片腕にカンナを抱え、もう片手に刃引き刀を構え、刀は宣言する。
「鬼には指一本触れさせない」
視線は『鬼』に固めたまま、舞台奥の石段へと意識を向ける。日暮を連れて此方に来るはずの友人を思う。
(桜庭、まだか)
「ヒトバシラ無しでセカイを滅ばないようにはできないのですー?」
「うおっ?!」
抱き寄せたカンナの脇から幽霊のようにひょいと顔を出して『鬼』に問いかけるゼロに、刀は思わず気を削がれた。
「出来るならしとるんと違います?」
唐突に現れた銀色の少女からのいっそ無邪気な問いかけに、黒髪の少女のかたちした『隠鬼』は首を傾げる。逆にカンナへと問いかける。
「ねえ巫女、ほんまは出来るのにしてへんの?」
凶暴な感情さえ孕んだ『鬼』の声に、カンナは首を激しく横に振った。
「どうしてこんなことをするのですー?」
カンナに頷き、ゼロは今度は『鬼』に問う。
「あの人と離れて神木に繋がれて、己の命と記憶を糧にセカイを支えとってね、うち、思ったんです」
ふわり、『鬼』はあどけない笑みを浮かべ、小刀の切っ先を神木の巫女へと向けた。
「こんなセカイ、うちが滅ぼしてやろて」
「それならここは逃げ隠れするのですー」
ひらり、純白のスカートと銀の髪を翻し、ゼロはカンナの手を取る。柔らかく抱きしめ、己の身に宿ったろっこん『夢の中へ』を発動させようと白い瞼を閉ざしかけて、
「だめ」
カンナの両手に薄い胸を押しのけられた。一瞬のうちにまどろみ、己の夢の中へと己の身と衣服ごと入り込もうとしていたゼロは眠たげに瞬きを繰り返す。
「ありがとう、でも、……でも」
カンナはゼロを見る。刀を見、寝太郎と悠月を見、鳥居の向こうへ逃げ込もうとしている妖たちを見る。
己の思いを上手く言葉に出来ず眉を寄せるカンナの手を、紫鶴が掴んだ。正面に立つ『隠鬼』を見据えたまま、余裕のない声で囁く。
「僕はヒトバシラの彼を気に入っている。この世界も」
常ならばどこか退屈したような色に占められている薄墨の瞳に、今あるのは世界を、ヒトバシラを護ろうとする必死の色。
巫女を殺め、世界を滅ぼそうとしている先代ヒトバシラの女が乗り移った『鬼』を見つめる。悲しい決意を宿した女の瞳を見つめるうちに、悟った。彼女が望むのはこの世界の滅亡と、それから――
「共に行こう」
巫女を殺めようとする『鬼』に向け、紫鶴は手を差し伸ばす。
「君も、巫女も。彼の元へ」
掌の中、巫女の指がもがくのを感じ、紫鶴は静かな眼差しを巫女へと下ろす。
「行きたくないなら安全そうな場所に、……いや、ここが一番安全か」
周囲に集うもれいびたちを見遣り、瞳を細める。ここなら、彼女を護る手には事欠かない。
けれどただ守られることを巫女は望むのだろうか。
一瞬の逡巡を切り裂くように、『鬼』が小刀を宙に投げた。巫女へと一直線に走った刃は、けれど舞台の下から夕風を裂いて飛んだマイナスドライバーにぶつかり弾かれる。地面に落ちかけた小刀は、ドライバーと共に宙に浮き、舞台の下に立つ由貴奈のもとへと戻る。
広げた掌に小刀の柄を落として握り、由貴奈は静かな眼差しを少女の姿した『鬼』へと向けた。
「よくわかんないけどさ……ヒトバシラになったこと後悔してる?」
のんびりとした口調で問いかけられ、武器を奪われた『鬼』は憎々し気に瞳を細める。
「あの人に少しでも長う生きて欲しい思うて、先に神木に入ったんです。あの人の声を時々聞きながら、いつか気付いたんです。この人誰や、て」
『隠鬼』の身を奪った先代ヒトバシラの声がどうしようもない怒りに震えた。
「忘れたいないて思いながら忘れていく未練がわかるか。……愛しいはずの人の記憶が時間と共に斑に抜き出されていくのにどうしょもない、その悔恨の苦しさがあなたには分かるんか」
「……どうあれ、未練や悔恨を今生きる人にぶつけるの間違ってるよぉ」
「正論やね。全き、正論や」
少女のかたちした唇から出てくるとは思えぬ憎しみに満ちた嗄れた女の声で、『鬼』は嗤う。
「間違うとるんは百も承知です。せやけど、……それでも、うちはこのセカイが憎い。あの人を殺すセカイなら、うちが皆殺しにしたる」
世界に対する憎しみを正面から叩きつけられ、由貴奈は息の詰まる思いに駆られた。それでも、真っ直ぐに視線をあげる。
「今を生きる人だって『遺された未練』を背負い続けることがある」
両足を踏ん張って立ち続けながら、思うのは現ヒトバシラである男の背中だった。
神木に続く鳥居を躊躇なく、振り返らずに石段を登っていく、決意に満ちたあの背中。
「あの日暮って人は、それを全うするために、……きみに触れるために階段を登ってるんじゃないかな」
どこまでも真っ直ぐに、純粋に正しい思いを向けてくる由貴奈の揺るがぬ瞳に見つめられ、『鬼』は今にも爆発しそうな癇癪を抑えつけるように着物の胸を白い手で掴んだ。
「何で誰も彼も邪魔しよるんですか。巫女を殺したらええだけやのに」
苛立ったように吐き捨て、己が身の傷つくことすら厭わぬ突進をするべく構えようとして、ムッと唇を引き結んだ。舞台を蹴り、身軽な後退をする。
『鬼』が下がった、その途端。
「なんやもう、堪忍してやァ?!」
情けない悲鳴と共、突如として舞台に人影がふたつ落ちて来た。
急拵えの舞台の脆い板間をぶち抜いて地面に叩きつけられたふたつの人影のうちのひとつ、小柄な少女がもぞりと動く。もうひとつの人影である和装の男の頭を両腕と薄い胸に固く抱き、男に至る衝撃をほとんど全て受け止めて、けれど少女は痛がる素振りも見せずに舞台の上へと這い上った。破れた板間に腕を突っ込み、ぐったりと力を失った男の襟首を掴んで引きずりあげる。
「……」
どこか不貞腐れたような顔の少女は、――
後木 真央
は、襟首掴んだ日暮に遠慮会釈のない頭突きをかました。
「っうお?!」
「なんでグレちゃんは彼女の気持ちが分かんないのだ!?」
息を吹き返して目を白黒させる日暮の襟を両手に掴んだまま、真央は喚く。
「どうして簡単に世界なんか選んじゃうのだ!?」
どうして、の続きが続けられずに、真央はしゃっくりあげる。ひ、と息が零れ、大粒の涙が破れた板で傷ついた頬を伝い、ぼたぼたと舞台に落ちた。
「せやかて、……」
「世界よりたった一人が大事で何が悪いのだっ!」
「せやかて、真央」
「たった一人に犠牲を強いる世界なんてぶっ壊れていいのだ!」
苦し気に目を逸らそうとする日暮の頬を両手で挟む。もう一度、容赦のない頭突きをお見舞いする。
「気付かず享受してそこまで誰かを傷つけたなら、……」
己にも日暮にも目を逸らすことを赦さず、
「滅んで構わない、私も一緒に滅ぶっ」
まるで心中めいた決闘を申し込むかのように一気に宣言して、頬を挟んだ手はそのまま、真央は俯いた。疲れたような瞳を上げて、次にその眼に捕らえたのは、どこか呆然と立ち尽くす、先代ヒトバシラに乗り移られた『隠鬼』の姿。
日暮の恋人に向け、真央は涙に潤む瞳で緩く笑みかける。もう一度、日暮を睨む。
「大好きな人を一瞬でも長く見つめていたくて、少しでも長く生きてほしくて。世界じゃないのだ、生きてるグレちゃんを少しでも長く見つめて守りたいのだ、……消え去るまで、ずっと」
だから、と語気を強める。背筋を正し、ヒトバシラとなることで恋人までも殺めようとした男を叱責する。
「出てきた彼女さんに、なんでなんて言っちゃダメなのだ。グレちゃんまでそんなこと言って世界を選んだら、彼女の気持ちはどこに行くのだっ!」
日暮の頬を離す。身体が萎むような息を吐き尽くす。
「世界も彼女も救える会える……」
呪文のように何度か繰り返し、目や頬を濡らす涙を両の拳で乱暴に擦る。
階段を登る日暮の背に思った。この人はもう、恋人ではなく世界を選んでしまっているのだと。けれどそう悟ってこそ尚、もどかしかった。自身の本質が傲慢であると知っているからこそ、怒りが起爆剤だと知っているからこそ、
(私は、世界より人を選ぶ)
世界を選ぶ日暮が腹立たしかった。己の怒りが傲慢であると知っていても、怒りさえ捨てて諦めてしまう日暮が歯がゆかった。だって、
「それじゃあ狂おしいほどグレちゃんに会いたかった、それ以外全てなくしちゃった彼女さんの気持ちはどうなるのだっ!」
縋り付くように日暮の襟首をもう一度掴む。
「せめて知ってほしいのだ、彼女さんと話してほしいのだ……」
「彼女は君に死んでほしくないから、この世界を壊そうとしているんだ」
真央の言葉を継いで、紫鶴が静かに言葉を紡ぐ。
彼女と相対してみれば、その言葉を聞けば、彼女の真意がそこにあるのは明らかだった。
「君はどうしたい?」
「どうもこうも、……」
舞台にへたりこんだまま、日暮は紫鶴を見る。カンナを見、真央を見、『鬼』を見つめる。その顔がくしゃりと歪む。
「わし、お前の名も忘れてしもうた。ほんまの顔ももう思い出せへん」
誰よりも会いたくて、世界を壊そうと思い詰めるほどに会いたかった人から、名を、顔を忘れたと告げられ、『鬼』は儚く笑う。
「同じです。うちも、忘れてしまいました」
悲痛に笑むなり、舞台から飛び降りる。つかつかと由貴奈の前に歩み寄り、
「返してください」
由貴奈が手にしたままの小刀の刃先を躊躇なく掌に掴む。
「ッ、……」
少女のかたちした白い手から溢れる血に由貴奈は息を詰める。由貴奈の手から小刀を奪い取り、『鬼』は顔色ひとつ変えずに血まみれの手で柄を握り直す。着物の端を刃先に切り、手に柄を結いつける。
「おおきに」
静かに、ひどく静かに、『鬼』は由貴奈へと微笑んだ。
夕風に笑みを捨て、狂気にも似た黒い怒りを孕んだ無表情で『鬼』は舞台に戻る。着物の裾を翻し、カンナへと飛びかかる。
「待っ……」
「待って!」
由貴奈の声に、もうひとつ、少女の声が重なる。
同じ刹那、舞台袖の地面が粉々に爆ぜた。音もなく分解された土塊が、風に流される霧の如く動き、カンナと『鬼』の間で土壁となる。
『鬼』が力任せに振るった刃が土壁を抉る。
「待ってください!」
石段の最後の鳥居の柱に手をつき、息を切らせ、
宮祀 智瑜
は声の限りに叫んだ。全力疾走と緊張とでその場にへたりこみそうになる膝を必死に支える智瑜の脇を、
「お待たせ!」
桜庭 円
が駆け抜ける。
「桜庭!」
円と共に階段を駆け下りて来た
八神 修
が息を継ぐように円を呼ぶ。途端、カンナと『鬼』を隔てていた土壁が崩れた。
刃持つ『鬼』と眼が合うよりも早く、円は『鬼』へと踏み込む。振るわれる刃をかいくぐり、
「恋人さん」
己よりも幼い姿した『鬼』の細い手首を掴む。
「正気なんでしょ?」
刃持つ手を抑えつけ、『鬼』の瞳を覗き込む。
「お兄さんは、この街の人を、カンナちゃんを恨んでるわけじゃない」
緋色の瞳に見据えられ囁きかけられ、『鬼』は黒い眸を細めた。ふわり、どこか愛おしむような表情をする。
「……そう、ですね」
「貴女の想いを、神木の中で感じたことをお兄さんに伝えて」
「セカイに溶けると、セカイを支える神木の根として心が広がるんです。セカイに足つけとる者の気持ちは大方読み取れるんです」
だから、と『鬼』は一瞬眼を伏せる。伏せて上げた、次の瞬間、円の小柄な身体は宙に浮いた。
「桜庭!」
人ならぬ怪力に跳ね飛ばされ、地面に叩きつけられようとした円の身を、ろっこんで『加速』した刀が間一髪で受け止める。
「話し合ってほしい!」
跳ね飛ばされた衝撃に息を詰まらせながら、円は叫び空に手を伸ばす。かつてこの世界の『鬼』には己が大切にする記憶を奪われた。彼女が『鬼』に憑いているのならば、彼女も触れた者の記憶を奪うことが、記憶を見ることが出来るはず。
「ボクの、このセカイでの記憶、お兄さんとの記憶を吸い取って見ればいい!」
そうして、神木に溶けていた頃に感じた日暮の心をもう一度確かめて欲しかった。黙々と『お勤め』を果たし続けていた彼は、けれど決してこの世界を恨んでいない。日暮との記憶を『鬼』に捧げても、それは間違いないと言い切れる。
「カンナを殺せば全て消える、日暮の選択も無駄になる」
カンナと『鬼』の間に立ちはだかり、修は根気強く『鬼』に語り掛ける。見たところ、対話は叶う。
動機と想いを読み取りたかった。
「それこそがうちの望みです」
小刀が空を切る。ろっこんを発動させ、大地を分解し再構築して守護壁とするためには息を止めねばならず、間に合わずに咄嗟に掲げた鞄を刃が裂く。
(日暮の意志さえ無視して、それでも生かしたいか)
間違った連鎖を終わらせようというよりも、彼女の願いはそこにあるのかもしれない。
(好きなのに、……)
「話そう」
「話すことなどあらしまへん」
裂かれた鞄を躊躇なく捨てる。己を敵と見定める『鬼』を見つめ返す。
(いや、好きだから?)
「他の方法を試してダメなら殺せば良いだろ」
暴論にさえ取れる言葉を口にしながら、カンナへの『鬼』の攻撃を大地の守護壁で受け止めながら、『鬼』への攻撃は一切せずに修は考え続ける。
「少なくとも、双方、話し合うべきだ」
「話し合えて言うんですか?」
少女の姿した『鬼』の攻撃は止まない。
「誰があの人をヒトバシラにする奴なんかと……!」
激しい怒りと苛立ちを修がろっこんで作り出す土壁にぶつけているように見える『鬼』に掛けるべき言葉に迷い、智瑜は唇を噛む。黒髪を震わせて首を巡らし、呆然自失の態な日暮を見遣る。
(役に、立ちたい)
日暮と『鬼』のふたり、それぞれが求める願いを、想いを読み取ろうとろっこんを発動させる。
(日暮さん……)
日暮の心にあるのは、いつか迷い込んだ駅で見たのと同じ、神木ではない涼やかな巨木のもとに佇む一人の女性。あの時は分からなかったけれど、今なら分かる。彼女は、今はその肉体を喪い、『隠鬼』の姿でしか日暮の前に立たざるを得ない、日暮の恋人。
(先代ヒトバシラの……日暮さんの、想い人さん)
『鬼』の姿をその黒い瞳に映して後、智瑜は思わず瞼を伏せる。
――同じ景色が、見えた。
澄んだ青空も、色とりどりの百花も、青々とした巨木も。全て同じ景色の中に佇むは、今の日暮の姿の面影を宿した男。ただ、人形じみて無気力な今の日暮とは違い、彼女の想う日暮は、どこまでも柔らかく優しく笑んでいた。
神木に記憶をどれだけ奪われようと、ふたりは確かに互いを想っている。
彼女は、日暮に生きて欲しいと願っている。
(……神木を乗っ取っても)
例え、己と共に在らずとも。
彼女は、彼を生かすために彼より先にヒトバシラとなり、彼を生かすためにセカイを滅ぼそうとしている。
(日暮さんまでヒトバシラになったら、何の為に先にヒトバシラになったのか分からないですよね)
でも、と思う。
(神様は大切な人を奪ったりしないんです)
困っている人の背中を押して前に進む手助けをしてくれたり、優しく見守ってくれる存在なのだと、智瑜は信じる。
(この世界の神社でお願いしたら両親に会わせてくれたし)
神木の巫女が、カンナがその力を使って、今は亡き両親との邂逅を果たさせてくれた。神木の巫女の本質が優しいものであると、智瑜は知っている。知っているからこそ、止めたかった。
(もしもの時は私がヒトバシラになってでも……)
それで日暮が幸せになれるなら、構わない。
顔をあげる。『鬼』と、『鬼』の殺意を受けるカンナを瞳に捕らえる。
「もう止めてください! 私が――」
「――『ゆう』!」
智瑜の叫びを、修と『鬼』の土壁を挟んでの睨み合いを遮り、ひとりの女性を指す名が割って入る。
呼ばわれたその名に、『鬼』が凍り付いたように動きを止めた。
「夕暮れの、夕」
確固とした声で、寝太郎が進み出る。『鬼』を見、日暮を見る。
「日暮と似た名だと、一つ目のお爺さんが言ってたんだ。あなたの、恋人の名前」
冷たい夕風に薄墨の髪を乱しながら、寝太郎はもう一度繰り返す。
「夕さん」
「……夕」
寝太郎の言葉に誘われ、日暮が唇を開いた。
もう二度と日暮から呼ばれまいと思っていた名を呼ばれ、夕は『鬼』の身を震わせた。悲しみと憎しみばかりが宿っていた黒い瞳に、それ以外の感情が溢れる。抑えきれず、力尽きるように膝をつく夕の傍ら、由貴奈が駆け寄り跪いた。手を伸ばし、傷ついた掌に布切れで固定した小刀に触れる。目を瞠る夕にそっと笑みかけ、血糊のついた布切れを解く。小さな掌から小刀を取り上げる。
息を吐いたのは、夕と、修。
修のろっこんが解除され、『鬼』とカンナとを隔て守っていた土の壁が崩れ去る。
「お兄さん達は、沢山の人の為に我慢してきた」
静まり返る場に、円が声をあげる。
「もう我慢する必要はないと思う」
ヒトバシラを立てることでセカイを支える、それもまた勇気には違いないだろうけれど、この不幸を生む連鎖を断ち切るのも、勇気だ。
「ヒトバシラになりたくないならならなくてもいいと思う」
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担当ゲームマスター
阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年05月11日
参加申し込みの期限
2016年05月18日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年05月18日 11時00分
参加キャラクター一覧
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