九夜山ミステリー・凍り付いた山荘の悲劇～犯人はフジコ～｜リアクション

九夜山ミステリー・凍り付いた山荘の悲劇～犯人はフジコ～

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「クシュン！」
　キッチンにいた屋敷野梢を、不意のくしゃみが襲った。反動で前に飛び出した顔が運悪く冷蔵庫に直撃し、思わず顔を覆って後退れば、今度は後頭部を棚にぶつけてしまう。
「どうした、大丈夫か！？」
　棚から物が落ちる音に志波武道が慌てて来てみれば、地面にうずくまって無言でのたうつ梢の姿があった。
「えっと、無事か梢ちゃん？　怪我してない？」
　武道が助け起こすと、梢は涙目でうなずいた。
「大丈夫れす。たぶん如月君のせいです」
「なんで！？」
　本人がいればほぼ同様なことを言ったであろう。武道の疑問に梢は語り出す。
「いわゆるメタ的直感というヤツですよ。ついさっき、如月君は完全な希望的観測で『屋敷野なら悪辣な罠でも作ってるだろ』とか言ったに違いありません」
「す――すごい具体的じゃん☆」
「ですよねっ☆」
　途中から冗談と分かったのか、軽いノリで武道が合わせる。どうやら大丈夫らしい。
　ちなみに梢たちはキッチンにある武器やダイニングの調度品等を使って、罠やバリケードを作っているところだ。
「服、汚れちゃったな」
　棚から落ちてきた芳香剤で、梢の服は赤く汚れてしまっている。
「ええ。ちょっと部屋に行って着替えてきます」
「一人で大丈夫？」
「大丈夫でーす。というより誰かがここにいないと」
「それもそうか」
　梢がダイニングから出ていく。武道は作業の続きを行おうとして、静かな室内に手を止めた。
　――あれ？
「なんで俺、一人になってるんだ？」
　確か、一人になるとまずいから、みんなで協力する話ではなかったか？
　賛同も得られたのに、なぜ結果的に一人でここにいるのだろう。
「なんかこのパターン、まずいな」
　今からでも梢を追った方がいいか？
　武道がそう思った時、音とともに扉が開いた。