夜が近づいている。
先ほどまで、吹雪は厚い雲のせいで灰色がかっていた。それがいまや薄暗くなり、徐々に黒みを帯びていく。
今日もここで足止めか。
彼女はため息をついた。吹雪は今日もやまないらしい。先ほどよりも風はいっそう強くなったように思えて、首筋をなでる冷気に彼女は身体を震わせた。
「アマリ深刻ナ顔ヲシテハだめヨ」
横から伸びた手がカーテンを閉めた。
機械的な声の主は
富士山 権蔵。
またの名を『じぇのさいだー☆フジコ』。
未来の科学技術が生み出した、フジコシリーズの最新型サイボーグだ。
「貴女ノ素敵ナ笑顔ガ台無シニナルジャナイ」
「『でも先生……サンマさんが』」
彼女の脳裏には、昨日惨殺された
寝子 サンマの姿が焼き付いて離れない。
文字通り三枚におろされていた。
「『サンマさんは……外部の人に殺されたんじゃありません』」
「滅多ナコト言ワナイデ」
しっ、と唇に指を立てるじぇのさいだー☆フジコ。
だが、誰に聞こえようが同じことだった。
みんな知っているのだ。
サンマ氏をさばいた犯人は、窓を開けて出ていったように見えるが――実際は雪原にひとつの足跡も残していなかったことを。
つまり犯人は、山荘から出ていないことになる。
警察に知らせようにも直後、突如として吹雪が九夜山を覆い、電話線が切れてしまった。
携帯電話も圏外。この吹雪の中を突っ切ろうにも、道に迷って凍死するのがオチだろう。
ここは現在、陸の孤島と化していた。
この状況を、殺人犯が利用しないはずがない!
確実に、次の犯行が行われるはずだ。
「サァ皆! 夕食ヲ作リマショウ!」
じぇのさいだー☆フジコが手を鳴らし、彼女へとウインクした。
「貴女モ手伝ッテネ。身体ヲ動カシテイレバ、不安モ和ラグワ」
「『あ、ありがとうございます……!』」
心遣いに笑みを浮かべて、彼女は山荘のキッチンへと向かった。
――その途中で、手にしていた台本を一度読み直す。
「ふむふむ。どうやらこのあと、夜パートで私が狙われる可能性がありますねー」
彼女は自らが死ぬかもしれない状況を前に、冷静に思考する。
選択肢は四つ。
・おとなしく殺される。
・なんとかして死なないよう逃げ切る。
・殺人鬼から逃れながら、別の人を身代わりにする。
・殺人鬼を返り討ちにする。
・むしろ自分が殺人鬼になる。
「あ、五つになっちゃいましたねー」
屋敷野 梢は暗い笑みを浮かべてみせ、言ってみたかった台詞を放つ。
「犯人は、この中に――っていうか、あなたです!」
こんにちは。叶エイジャと申します。
既に犯人は分かっています。
リアクションは夕食終了後から始まります。
今回も神魂の影響か、みなさんはミステリー風の世界に来てしまったようです。
ところがこれはミステリーではありません。
夕食を食べ終わった後、一時間に一人は殺害しないと気が済まない『じぇのさいだー☆フジコ』の魔の手をかいくぐり、生き延びるシナリオです。
バトル良し。ホラー映画のように命からがら逃げ回るも良し。相手を陥れるのも良し。
……夜が明けた時、結果的にミステリーになっているのではないでしょうか。
●山荘のイメージ
山荘は二階建て+屋根裏(ある意味三階部分)です。
一階:
ダイニングを中心に廊下がぐるりと囲い、東にボイラー室、西に書斎(図書室)、南にエントランス(二階への階段あり)、北に「フジコのプライベートルーム」の四部屋がある。
二階:
中央にフジコのレッスンルームがあり、その周りを廊下が取り囲み、ベランダのある南以外の三方に皆さんの部屋があります。
エントランスから続く階段は南にあり、そこからさらに屋根裏部屋へ続く階段があります。
屋根裏部屋:
暗くて、色々なものが置いてあって、しかしただの広い部屋。出入口は階段しかありません。
窓から屋根に出ることもできますが、この吹雪の中で外に出るのは自殺行為でしょう。
●できること
みなさんは九夜山のとある山荘に、故あって滞在しています。
山荘には、『じぇのさいだー☆フジコ』と名乗る人物が管理していて、訪れる人を歓待してくれました。
各人には部屋があてがわれ、快適な衣食住を享受しています。
ところが『じぇのさいだー☆フジコ』は殺人サイボーグです。
夕食が過ぎるとジェノサイドモードになり、目にした人物を殺害すべく襲いかかってきます。
夕食後、一人になった人を優先的に襲います(状況によっては二人以上でも襲います)。
部屋でじっとしていてても、ノックして入ってきて、襲いかかってきます。
上手く隠れたり、あるいは他の人をターゲットになるよう仕向ける(!)ことで、襲撃を回避することができます。
武器や道具、ろっこん次第ではフジコを迎撃することも可能です。
彼女を完全に破壊することはできません。
しかし一定量のダメージを与えることで、ジェノサイドモードから修復モードに入ります。
この状況の時は、普通の人のように会話したり、接することができます。
会話してる間に修復が完了したら、襲撃を再開するので注意してください。
部屋の鍵は各人が持っていて、外から掛けることができます。
部屋の中にいる間は、中から掛ける事も出来ます。
他人の鍵を手にすれば、他の部屋への出入りや鍵かけも自由にできます。
もちろん、鍵をかけずにいればだれでも自由に出入りできます。
フジコは鍵がかかっていても入ってきます(鍵は壊れないが、開いた状態になる)。
ですが時間稼ぎにはなるでしょう。
一階、二階、屋根裏に関わらず、部屋には「隠れる場所」と「武器になりそうなもの」が
必ずあります。
上手く駆使してみてください。
なお、フジコとは別に殺人鬼プレイをしたいという方も歓迎いたします。
●おまけアイテム「台本」について
ガイドで登場した台本ですが、これは自室にいる時か、確実に安全な時に確認することができます。
見ると、あなたの死ぬ時の状況が幻視できます(その後の行動で変更可)。
おまけ程度ですが、死んだ場合の状況は下記の要領で「こんな死に方してられるか!」という、生き残る動機づけに使えるかもしれません。
・コメントページ、右上のダイス二個で判断(死亡理由)
左 右
1: 突然 高熱を発して
2: 徐々に 冷たくなって
3:やっぱり 眠くなって
4:着替え中に 心停止
5:おもむろに フジコホールド
6:とてつもなく 変態オーラを放ちつつ
他、自作理由可。
使えそうなときにご利用ください。
以上です。
皆様の参加とアクション、お待ちしております。