九夜山ミステリー・凍り付いた山荘の悲劇～犯人はフジコ～｜リアクション

九夜山ミステリー・凍り付いた山荘の悲劇～犯人はフジコ～

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「やけに寒いと思ったら」
　三宅葉月はガラスが割れ、壁の破壊された部屋を見ると、扉を閉めて廊下を進んだ。
「ここと、次の二部屋は使えないわね」
　何があったか想像するまでもない。じぇのさいだー☆フジコなる殺人サイボーグが暴れているのだ。
　葉月が自室にいると戦闘音が聞こえたので、静まってから様子を窺い、出てきたのだ。フジコがまだ調べていない部屋よりも、出ていった直後の部屋の方が隠れるのに都合がいいと思ったからだった。葉月はそうして何部屋かの空き室をまわり、安全を確保していた。
（でも、今の部屋はダメね）
　葉月は台本で、「とてつもなく冷たくなって」死ぬ、と出ている。わざわざその危険に近づく必要はない。
「次の部屋は――」
　葉月が空き部屋を探していると、先ほどの破壊された部屋から大きな音が聞こえてきた。
「？」
　だれか隠れていたのだろうか？
　振り返った葉月の耳に、声が聞こえてきた。
『修復モード終了。サァ、殺シニ行クワヨ～☆』
「！」
　フジコだ！
　葉月は手近な部屋を調べるが、どの扉も開いていない。
「走るしかない」
　決断は早い。
　だが、フジコの動きはそれ以上に早かった。
『見・ツ・ケ・タ・ワヨ～』
　フジコが部屋から勢いよく飛び出し、角を曲がりかけていた葉月を捉えたのである。
　フジコの足音に追われながら、葉月は隠れる部屋を探した。
　ガチャ。
「！」
　目前のドアノブに手をかけようとした時、もう一つ奥の扉が開き、月が顔を出した。
　彼女に助けてもらう……？
　手をかけたドアノブは、開いている。
　判断は一瞬。葉月は素早くその部屋に駆け込むと、静かに扉を閉めた。
「確か……」
　すぐさま気配を可能な限り消して、トイレへと入る。見上げると天井に正方形のふたがあった。
　自室を調べた時に知った、気付かれにくい隠れ場所だ。
　ガチャガチャガチャ。
　フジコと扉の格闘音にも慌てず、開いた空間に身体を持ち上げる。人形めいた外見とは裏腹に、あっという間の軽業である。
『……イナイワネェ』
　天井板をはめなおしてしばらくすると、そんな声が聞こえてくる。やがて遠ざかる足音に、葉月は胸をなでおろした。
　――少ししてから、月の部屋から発砲音が聞こえ、葉月は表情を曇らせる。
「……」
　もし自分が見つからなかったら、彼女は生きていたかもしれない。
　そう思うと少々、心が痛んだが、葉月としても生き延びねばならない。
「恨まれてもかまわないわ」
『別ニ恨マナイワァ。貴方モ死ヌモノ』
　ハッとして見ると、隠れている天井裏の壁に、小さなマイクとカメラが取り付けてあった。
「！！」
『ソコハ、隣ノ天井裏カシラネェ？』
　まずい。気付かれている。
　葉月はすぐさま天井裏から出た。隠れようにも隣の部屋から音が近づいてくる。今出ても鉢合わせするだけだ。
　葉月は歯噛みし――視線を部屋の窓へと投げた。