九夜山ミステリー・凍り付いた山荘の悲劇～犯人はフジコ～｜リアクション

九夜山ミステリー・凍り付いた山荘の悲劇～犯人はフジコ～

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「そこまでだ」
　触手少女にとどめを刺そうとしていた『じぇのさいだー☆フジコ』の動きが止まる。
『ナァニ？』
　そして首から上だけが駆動音とともに回転すると、背後の廊下にいるサキリ・デイジーカッターと御剣刀に笑いかけた。
「……どう考えてもあのフジコ先生は偽物だよね」
　予想外の挨拶にサキリもそう言うしかなかった。
「あんな先生のいる学園生活は嫌だ」
　刀も返して、一歩前に出る。
「お前とそっくりな先生がいてさ、呼び方もフジコちゃんって言うんだけど、言動はアレだが生徒思いのいい先生なんだよ。言動はアレだけど」
『シリーズ・タイプ０２ノコトカシラ』
「絶対違う。とにかく、間違ってもジェノサイダーとかじゃなくってさ。だから俺はお前を認められない――ここで俺が、俺達がお前をぶっ壊す！」
　言うと刀は、担いでいた細丸太を木刀のごとく構えた。サキリもまた、万能ナイフの刃を光らせる。
　いずれも、途中のボイラー室で見繕ったものだ。
　正直、武器としてはいま一つ物足りない。
　サキリは小声で刀に言った。
「今の装備じゃ心もとない。救助優先で立ち回ろう」
「分かった」
『来ナイノ？　ナラ、コチラカラ行クワヨォ！』
　じぇのさいだー☆フジコが手を向けてくる。駆動音とともに、そのゴツイ手は腕から分離して発射された。
　ロケットパンチだ！
「散るぞ！」
『サセナイワ』
　すかさずもう片方の手も発射するフジコ。
　元より廊下は広くない。高速で撃ちだされ、しかも逃げ場を消すように放たれたそれを、二人の人間が即座に回避するのは難しい。
　ただしサキリと刀にはろっこんがあった。
　轟ッ！
　空気を焦がし、突き当りの壁に二つの拳が突き刺さる。
　その時には加速した刀が壁を蹴って天井すれすれに跳躍しており、フジコの背後には瞬間移動したサキリの姿があった。
　短い呼気とともに繰り出したサキリのナイフは心臓に向かって侵入。一拍遅れて振り下ろされた刀の丸太はフジコの頭を強打する。
　手応えは――
「！！」
　ない。
　即座の判断で後退した二人。彼らを追って、フジコの背中から銃口がせり出して吠え、目からはビームが飛び出した。
「この狭さで飛び道具とか卑怯だろ！」
　加速中の刀もビームばかりは脅威だった。壁や床、慣性の法則も使って時に天井近くまで移動する彼を、光線はわずかな差で追ってくる。サキリも小刻みに瞬間移動して回避するが、うかつに接近できない。
『ウフフ……！？』
　笑っていたフジコが、不意に体勢を崩した。巻き付いた触手に転倒する。
「ナイスだ朝野」
　刀がその隙にフジコの頭部を再強打。サキリは未沙を抱えて走り出す。
「よし、一時撤退だ。しかしすごいオーラだな」
　変態オーラ（可視可能）を放っている彼女に戦慄を覚えるサキリ。
「来たぞ」
　刀が警告した。立ち上がったフジコがたーみねいたーよろしく追って来ていた。