悠久の時の彼方へ～信州に真田あり｜リアクション

悠久の時の彼方へ～信州に真田あり

「申し上げます！真田勢は上田城、並びに戸石城に籠城の構えとの由！」
「うむ、下がれ」
　徳川家康の命を受け、真田昌幸討伐のため進軍中の鳥居元忠は、伝令の報告にうなずいた。
「鳥居殿、油断はなされませぬよう。真田昌幸は、煮ても焼いても食えぬ男と聞いております」
　傍らにいた大久保忠世が釘を刺した。ともに、徳川家の重臣である。
「なに、わが軍の三分の一にも満たぬ兵をさらに分けるとは。構わず踏みつぶせい」
　兵の数と、三河武士の勇猛さを頼みに、徳川勢はさらに歩みを速めた。

　上田城の支城・戸石城には、真田家嫡男の信之が入城し、防備を固めている。
「―――迎撃の手筈は当初の策の通り。上田城に客人来たり、助力を仰ぐ……」
　信之は、上田城にいる昌幸から届けられた書状に目を通しながら、怪訝な顔をしていた。
「『客人』とは、一体誰のことか。父上の手の内は、実の子でも見えぬな―――」

「―――！！ ……もがもが……」
　クルジッカ・ヘルマゴルは慌てて胸をたたいた。お雑煮の餅を食べようとして、喉に詰まらせてしまったのだ。
　一瞬気が遠くなったのち、周囲の光景が一変してしまったのを見て彼女は驚愕する。と、同時に詰まった餅を飲み込むことに成功した。
「はぁ、はぁ……。日本のお餅とは、恐るべき食べ物ですね……」
　クルジッカは、肩で息をしながらあたりを見渡した。
「また、タイムスリップでしょうか……？」

「本当に、戦国時代なのか？」
　卯木衛は、築地哲の説明を聞いて目を丸くした。
「そうだ。危険だから、協力は可能な範囲で―――」
「しかも、真田なのか？」
　衛は、哲の台詞も聞き終わらずに言う。
「真田と言えば、知略で乱世を生きぬいた、すげー好きな一族だ！」
　驚きはしたが恐怖はなく、むしろ喜びらしい。
「そん中でも大事な戦いを改変しようなんて……絶対阻止してやる！」

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