「ん……ここは……?」
鈴野 海斗は、自分の周囲の景色が様変わりしているのに気がついた。地面は舗装されておらず、ひどく埃っぽい。寝子島は冬だったのに、うだるような暑さだ。
「また、『例の現象』だべか……?」
海斗には、この不思議な感覚に覚えがあった。周りに見えるのは、物々しい堀や木製の防護柵、丸太や石を忙しく運ぶ人足の姿。やはり、また過去に飛ばされてしまったのか―――
「毎度、迷惑をかけるね」
背後から、聞き覚えのある無機質な声が聞こえた。
「―――やっぱりあんたか、築地さん」
振り返ると、いつもどおり灰色のシャツをきた
築地 哲が立っていた。やはり、過去のある時点に飛ばされ、また戦わなければならないらしい。
「今度はいつの時代だべ?」
「今は天正13年、西暦1585年の8月。場所は信州の上田城だ」
「というと、時代は戦国時代だべか? 誰と戦うことになるだ?」
以前、織田信長に味方して今川義元と戦ったことがある。
「徳川の軍勢だ。公称7000名と伝え聞くが、もう少し多いと思われる。二日後、城への総攻撃が始まる見通しだ」
「なーるほど……それは腕が鳴るべ」
小柄でのんびりした印象からは程遠いが、海斗は戦闘なれしている。彼が状況を把握しつつあるちょうどその時だった。
「おや、そこにいるのは誰ぞ―――さては、築地殿の言うておった客人とやらが参ったか!」
だみ声を響かせながら、ひとりの壮年の男が会話に割って入った。一見すると豪快で気さくな印象を受けるが、その目は鋭く、相手を絶え間なく観察していた。
哲が男に向かって言う。
「はい、この者が信頼できることは僕が保証します」
「そうか、ならよい」
男は海斗の方に向き直る。
「お主、碁は嗜むか。張り合いのある相手がおらんで、つまらんのじゃ」
「昌幸殿、篭城中なのですから碁なんて打っている場合では―――」
呆れたように言う哲の言葉を聞いて、海斗は合点がいった。
「もしや……この方が、城の主ということだべか?」
「いかにも―――わしが信州真田家当主、真田昌幸である。いよいよ面白うなってきたわい」
男―――真田昌幸はそう言うと、からからと高笑いした。
皆様お久しぶりです、三城俊一です。
久しぶりに、日本史に戻ってまいりました。今回はちょっと流行を意識して、真田氏VS徳川氏の「第一次信州上田合戦」を取り上げます。
○背景
信濃(長野県)に本拠を置く真田昌幸は、武田・織田・北条・徳川と次々と主家を鞍替えしながら乱世を乗り切っていました。北条氏と徳川氏は領土争いをしていましたが和睦が成立。徳川家康は和睦の条件に従い、臣従していた昌幸に対して、昌幸の持っている沼田領を北条氏に引き渡すよう命令します。
真田昌幸はこの命令を拒否し、徳川氏から離反。真田氏は徳川軍の侵攻を受ける事態に陥りました。鳥居元忠・大久保忠世らが率いる徳川軍は7000以上、対する真田軍は2000。天正13年(1585年)8月のことでした。
○舞台
真田昌幸が篭城するのは上田城で、城下町の民も城内に避難しています。
上田城の立地は、北側に太郎山があり、西側~南側は急流の千曲川が流れる天然の要害です。しかし、東側は平地で防御が弱く、徳川軍は東側から攻めてきます。また、上田城の北東の山の麓に支城の戸石城があり、昌幸の長男信之が籠城しています。
著名な昌幸の次男、信繁(幸村)は人質として上杉家にいるため、この合戦には不参加―――というのが長年の通説でしたが、信繁も合戦に参加していたという説が最近になって出てきています。せっかくなので信繁とも戦えることにしました。当時19歳、昌幸に従って上田城にいます。
○装備
PCは上田城に現れます。身を守る甲冑と、戦国・安土桃山時代に存在する武器を一つ(日本刀・槍・弓矢・火縄銃など)貸してもらえます。
○PL情報
勝利条件は、「上田城を落城させることなく徳川軍を撃退し、真田氏の命脈を保つこと」です。
昌幸は、徳川軍に対して以下のような策を用意しています。
①上田城の東側に出て、徳川軍を迎え討つ。
②わざと退却して城内に入り、徳川軍を二の丸までおびき寄せる。
③隘路まで引き寄せたところで反撃を開始する。
④敵軍を押し戻すタイミングで戸石城から信之の軍勢が到着し、ともに徳川軍を追撃する。
というものです。
しかし、歴史の改変を望む人物が今回も介入し、条件を悪くしています。
A.徳川軍の兵士が強化され、筋力と素早さのいずれかが2割増くらいに増強されています。
これは築地も予測済みですが、下記のような罠も仕掛けられています。
B.戸石城の信之軍に援軍を求めるための狼煙に、火がつかないように細工されています。
細工は巧妙で、上の作戦の③と同時に狼煙を上げようとする段になって初めて気づくものとします。上田城と戸石城の直線距離は約5キロ、何らかの手段を使って、速やかに信之に突入の要請をしてください。
後の関ヶ原・大坂の陣で幸村が活躍できるよう、ご協力をお願いします!