悠久の時の彼方へ～信州に真田あり｜リアクション

悠久の時の彼方へ～信州に真田あり

「今日は、戦国時代の夢かぁ」
　篠原翠響は、忙しく戦の準備に動き回る武士や足軽たちを、興味津々で眺めていた。
「真田って言ってたわよね。あの人が昌幸で、あの人が信繁？真田家の面々を間近で見られるなんて、夢みたい！ ……夢だけど」
　幸村の名で広く知られる信繁は思ったより背が小さいし、昌幸も一見普通のおじさんだ。
「さすがに、ゲームみたいなイケメンでもないか」
　それでも、彼らには現代人とは違う風格があった。乱世を生きる男の凄味や、覚悟のようなものがにじみ出ている。
「築地殿！客人に使わせる武具は、いかほど用意すればいい？」
「それぞれ希望を出させます。少々お待ちを―――」
　昌幸が哲とやりとりしているのを聞いて、翠響はすかさず出てきて手を挙げた。
「はいはーい！あたし、一度日本刀持ってみたかったの。それと甲冑も！」

「命のやりとりだから軽く考えるわけにはいかないが、できるだけ協力しよう」
　八神修の言葉を聞いて、哲は礼を言った。
「ありがたい。毎回助かっているよ」
「だけど、城を守るなら全体の構造を把握したい」
　修に続いて、鈴野海斗も口を挟んだ。
「城に加えて、作戦を確実にするためにも城下町全体の俯瞰図を見たいべ」
「……わかった。昌幸殿に頼んでみるよ」

　本丸の奥に呼び出された海斗と修は、眼前に広げられた見取り図の前に座る。
「築地殿の取次でもなければ、見ることもかなわぬものじゃが―――」
　昌幸の前置きに、二人はかしこまって城の構造を頭に入れた。
「この辺りは隘路になってるから、敵を誘い込むといいね」
「なるほど……鉄砲隊と、長槍武装の農民兵一隊があれば敵のつり出しは可能だべ」
　修と海斗のやりとりを聞いて、昌幸が興味を示した。
「ほう―――お主の策とは？」
「城下町に詳しい農民兵一人と、刀を一振オラに貸してもらえれば、ひと暴れできるべ」

このページにイラストを設定する