【お正月】カルタ！　～つくってあそぼう～｜リアクション

【お正月】カルタ！　～つくってあそぼう～

　ホールのソファ席を簡易の観覧席に、中央のテーブルで試合が行われる。
　ポンチクが興味深そうに首を伸ばしているのに微笑んで、イリヤがソファ席のテーブルで空になっているカップに紅茶を注いでいた。
「——チームが余っちゃうから、最初は３チームなんですね」
「イリヤ君は最後だから、見てて覚えてね」と陽毬。
「初めてのカルタ、楽しめるといいね！」
　ロベルト・エメリヤノフが隣に座るように促すと、イリヤは席につきながら軽く首を傾げた。
「難しいでしょうか」
「うーん。単純なルールだから、そうでもないと思うな」
「ああ」
　旅鴉月詠がロベルトに同意して、この試合の読み手の紅緒が混ぜている札をさした。
「私の札は二枚で一枚絵にしてみた。是非、私の描いた札二枚を揃えてほしいね」
「ロベルト先輩が言った通り、楽しめればいいんだよ。僕は楽しむ為に真剣に取り組むよ！」
　佐藤英二に微笑みかけられて、イリヤはもう一度テーブルに注目した。

　１チーム目は、市橋誉と御剣刀のチームだ。
「頑張ろう！」
　誉が眉をきゅっと上げながら言うと、刀は「ふっふっふ」と不敵に笑いだす。
「遊びとはいえ勝負事で負けるつもりはないからちょっと頑張るよ。
　遊びだからムキにならないよう気を付けるけど」
「なら……そうだな、右と左で分担を決めたらいいかもしれない」
　二人の真剣な様子を眺めながら、未だ椅子に座ったままのエリセイは、同じチームの武道を見上げた。
「イーリャもそうだけど、俺もあんまやったことないよ？　日本に来た頃におばさんが面白半分で買ってきてさ、一回……、二回……くらい？
　武道は？」
「弟と仲良くやって泣かせたあの頃が懐かしい！　よーし、おにーちゃん遊びでも本気出しちゃうゾ★」
　武道は腕組みしながら目を瞑って、子供の頃の記憶に想いを馳せている。彼の口角が上がっているのに気づいたエリセイは息を吐き出した。
「君さ、弟に嫌われてない？」
「リーセもよく泣かしてたじゃん。外に遊び行く時に、イーリャが僕も行くって言ってたのに走って出てったり、雪玉すんげー勢いで投げて顔面ヒットさせて泣かせたよな。
　これ何これ何？　ってしつこく聞かれて、キレて殴った事もあった」
　レナートが皆の前でエリセイのやんちゃな頃の話を得意げに披露すると、すかさずイリヤが口を挟んだ。
「レーナは学校で『イーリャはマーシェンカ（＊マリアちゃん）がお気に入りだ』って揶揄ったよね！　お陰で翌日友達皆に噂されて……、僕はあの時が一番辛かったな！」
　一喝されてしょぼくれたレナートと同じチームのタルトは、これから始まる自分の試合よりも、兄弟のじゃれ合いが気になっているようだ。
「まあ僕は今回自分の勝ちより、美少年たちの勝負を堪能したいんだよね」
「争え……、もっと争えイケメン共……」
　低い声を出す陽毬に、紅緒が「貴女方は一体何なんですの？」と眉を顰めると、英二が「そこは突っ込んじゃダメだよ、闇が深いから」と首を横に振った。
「わ、分かりましたわ」
　紅緒は気を取り直す為に姿勢を正すと、第一試合を開始させた。
　月詠が裏面に色和紙を貼ってくれたお陰でワンランクアップした雰囲気のある読札を一枚手に取り、皆に合図する為の空咳をした。
　さあ注目の一枚目だ。

「うすい本があつくなるよ！」

　テーブルに散らばった札を中央に顔を突き合わせて居た男たちが一斉にズルッと滑ると、タルトが「はい！」と声を上げながら絵札を取り上げる。
「自分の札くらいは取りたかったんだよね〜」
　彼女がうれしそうに見せている絵札は、どこかで見たような美少年たちが描かれていた。
　——ほら、言わんこっちゃない。英二が紅緒にそんな視線を送った。

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