【お正月】カルタ！　～つくってあそぼう～｜リアクション

【お正月】カルタ！　～つくってあそぼう～

　仲間達の笑い声が大きいのに乗じて、ロベルトはこっそりと、紅緒に潜めた声をかけた。
「そういえば最近、ロシアの三兄弟が出てくる本を読んだけど……」
「上中巻を読破したのね。余程下巻の美少年が読みたかったと見える」
　紅緒は呆れ混じりに笑うが、ロベルトはそんな事よりと、もう一歩近づいた。
「あれの上から二人もＤから始まる名前と、イヴァンだね。そこから取ったのかい？」
　視線が示す主語は、エリセイとレナートを言っている。紅緒は双子を一瞥して、昔を思い起こすように一瞬睫毛を伏せた。
「まだイリヤが居なかった頃、彼等は何度か私の前で弟の話しをしましたわ。
　言葉は取っ替え引っ替え、エピソードも幾つかあったのだけれど、纏めると。弟は純真で、美しい、天使のような少年だと。
　肉親には使わない賞賛の数々はあの頃の私には胡散臭く思えて、辟易ながら言いましたの。
　『貴方達の弟は、まるでアレクセイ・カラマーゾフね』」
　ロベルトが挙げた小説の主人公の名前を出した紅緒——彼女がそのキャラクターを余りよく思っていないのは、表情から明らかだ——は、これについて付け足した。
「……実際。
　イリヤはイリヤでしたわ。二人の兄どころか、全てを見ていて、何も見ていないような。真っさらで透明な人」
「なるほど……、てっきり僕は、エリセイとレナートがドミトリーとイワンに似ているからつけたのかと思ってた」
「そこが！」紅緒は語気を荒げ、これが秘密の話しだと思い出して声を落とした。
「そこが問題ですのよ。
　彼等はあの時、弟については何の反応もしなかった。推察するに、弟と長く離れすぎて、今の彼が分からなかったからでしょうね。
　けれども彼等は、自分たちの事については答えたんですの」
　ロベルトは瞳を大きくして紅緒をじっと見つめた。答えを待つ読者を前に、紅緒は重要なページを捲るような丁寧な間を置いて言った。
「『君はどっちが親殺しだと思うの？』」
　ぎょっとするロベルトに、紅緒は間合いを更に詰め、怪談噺をするような緩急をつけたテンションになる。
「あの時二人は、私が調子に乗っていたのに気づいていたのでしょうね。だからドミトリーとイワンのエピソードに合わせてワザと怖い話しをした。
　彼等はよくそうして他人と距離を取りたがる。エリセイは態度で、レナートは言葉で相手を近寄らせまいとするのね。
　実際ホラーでしたわよ。同じ顔で微笑いながら脅されると言うのは。でも私、脅しに屈するタイプじゃありませんの！　だから彼等をああ呼んでやるんですわ！」
　高笑いをして話しを締めくくったが、ロベルトが彼女につられて笑う気になったかどうかは、既に背を向けてしまった紅緒には分からない事だった。

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あとがき

担当マスター：東安曇
ファンレターはマスターページから！

シナリオにご参加いただき有難うございました。

勝敗決定のアミダですが、一度完成させたところ、偶然にも同点のチームが３つ出てしまいまして、急遽試合に参加させていなかったＮＰＣを二人追加してやり直した。というエピソードがございます。
因みにＮＰＣのサイコロの目は、ＮＰＣが過去登場した掲示板からランダムで選択致しました。

今回は楽しいカルタを作って頂き有難うございました！　また次のシナリオでお会い出来たら幸いです。

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