お注射のお時間です！｜リアクション

お注射のお時間です！

【その男、ナイス●イ】

　同じ頃、ピンクの看護師（♂）――ミッシェル・ナイスゲイが看護師を担当する第五診察室では――

「失礼しまーす。ひっ……！？　……す、すみません。間違えました。帰りま――」
「あら？　可愛いボウヤ、照れなくてもい・い・の・よ？（はあと　そんなに青い顔をして、熱があるのね……。さ、お尻にお注射（意味深）しましょうね♪」
「ひぃっ……！？　いや、やめて、助けて、ママ……アーーーッ！」

　さながら阿鼻叫喚の地獄絵図のようなヒドい光景が広がっていた。
　ボイスチェンジャーによって可愛いアニメ声に変換されたミッシェルの声に騙された数多の変態達が、ピンクの看護師（♂）のお注射によって『お見せできない状態』に変貌させられていた。
「あらあら。今日の外来患者さんはもうおしまいかしら？　それじゃあ今度は病室の方へ回診に行きましょう♪」
　巨大な注射器を背負い、細マッチョの肉体をくねくねとしなやかに躍らせながら、ミッシェルは入院患者が集められている「らっ倫」病棟へ向かう。
　道すがら、多くの患者や看護師、医師とすれ違う。
　誰もがみんなミッシェルの美しさに「ひっ……！？」とか「ぎゃあああああっ！？」とか「ぶひぃいいいい！」などと言って平伏していく。悪い気はしない。
「ふふふ。ここの先生や看護師、それに患者さん達は素直だから好きよ」
　欲望に忠実な子猫ちゃんは嫌いじゃない、とご満悦の様子のミッシェル。
　彼らが忠実だったのは欲望ではなく恐怖であったが、そのようなことはミッシェルにとっては些細な問題に過ぎない。
　と、そこでミッシェルは一人の細身のイケメン医者と正面からぶつかる。
「きゃあんっ……！？」
　と、ミッシェルは野太い悲鳴をあげたが、その鍛え抜かれた肉体はびくともしておらず、むしろぶつかって転んだのは医者の方だった。
「……え？」
　医者は何故自分が悲鳴をあげられているのか一瞬わからないような顔をした。
　が、持ち前の頭脳を駆使して、とりあえず謝っておくのが正解と判断して、
「あ、いや、そのすまない」
　と、頭を下げた。
　だが、それがいけなかった。彼はそのまま何も見なかったことにして逃げておくべきだったのだ。
（ウホッ……！　イ・イ・オ・ト・コ☆）
　ミッシェル・ナイスゲイがターゲットをロックオンした瞬間である。
「うふ。こっちこそごめんなさい。お怪我はありませんでした？」
「いや、大丈夫――」
「まあ、それは大変。今すぐに服を脱いで、隅から隅まで検査しないと！」
「……いや、だから、なんともないと……」
　イケメンは青い顔をして、そう言うが、もはやミッシェルは聞いてはいなかった。
「はぁい。それじゃあ、おパンツ脱ぎ脱ぎしましょうね～」
「ちょ、おま……や、やめろっ……」
　言うが早いか、ミッシェルはイケメン医者の白衣もズボンもその他諸々も全部剥ぎ取っていく。
　ほとんど犯罪だったが、悲しきかな、ここは「らっ倫」病棟。ここでは「らっ倫」こそが正義。「らっ倫」以外の法など（以下略
「……あら？　熱があるみたいね。これはお尻にぶっといお注射をしないとね」

「ひぃ……！？　や、やめろ、金なら払う！！　だから、そ、それだけは……アーーーーーーーーー！！！」

　かくして、「らっ倫」病棟には今日もイケメン達の悲鳴が響き渡る。
　そんなナイチンゲールばりのミッシェルの仕事ぶりに、多くの者は彼をこう称えたという。

　――ミッシェル・ナイスゲイ、ナイス●イ！

　めでたしめでたし？