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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
R&R Agency：File02：コピーする女
● プロローグ
街は年末年始の喧騒で華やいでいる。
夕日を覆い隠して、ビルの上を黒く覆う雲からは、今にも白いものが落ちてきそうだ。
いつもと変わらぬ足取りで雑踏を抜けてきた夜海霧 楓は、シーサイドタウンのある古い雑居ビルをちょっと見上げた。いかめしい石造りの建物。その脇の路地に、自転車や白いスクーターが止まっている。自分と同じように招集されたメンバーが既に集まっているようだ。
正面口はアーチ状に組まれていて、入ると薄暗いエレベーターホールがある。
この世とは縁が切れたかのように静かだ、と楓は思う。
瞬く蛍光灯の下、薄いブルーのつなぎを着た清掃員が、エレベーターの前に『清掃中』という黄色の札を出して掃除をしている。それで、連絡を受けて駆け付けたエージェントたちはみな、冷蔵庫のように冷えた内階段を上らなければならなかった。
階段を上った先に、ブルーのドア。
はめ込まれた四角い曇り硝子には、金で小さく『R&R Agency』の文字。
中から話し声がする。
◇
事務所には、Ｒ＆Ｒの実質的なボスである坂内 梨香のほかに、楓にとっても顔なじみの御剣 刀、八神 修、サキリ・デイジーカッターの姿があった。それから奥に、仮面を付けた小柄な女がひとり。
入ってすぐの来客ソファには寝子島高校ミステリ研究会のメンバーでもある神野 美野梨とブリジット・アーチャーが座っている。ちくわを咥え、ソファの後ろを行ったり来たりしながら話をしているのは、同じくミス研部員で【ちくわをくわえたホームズ】を自称する新井 すばるだ。
「変身能力とか無敵だよね。話に出てきたアツヒロ、ナナコにトモミ、中刑事……全員怪しいといっても過言じゃない。確認するけど、今回の目的は犯人を見つける、アツヒロ氏を守る、の２点でいいのかな？」
いや、１点の可能性もあるか……とぶつぶつ言ってから、すばるは、
「とりあえず連絡は密に。ニャインのグループチャットでいいね。画像も送れる」
と提案する。
「そうだな。情報規制と連絡先の一本化を徹底する方が良さそうだ」
腕組みをして聞いていた刀が言うと、奥にいた仮面の女が顔を上げた。
「情報戦なら任せて」
無表情な白い仮面。銀の髪と相俟って、底知れぬ雰囲気がある。本名ではなくコードネームで呼んで貰う事、また、素性を把握されない為に仮面をつけたままで、という条件つきでエージェントになった少女である。
「私はリサ。情報アルケミー、それが私の異名よ。今回は、事務所で待機させて貰うわ。情報の整理、配信なら任せて欲しい。言っておくけど、私は『目的の為ならば手段は選ばない』わよ」
リサはスカートの裾を摘まんでお辞儀をすると、パソコンの前に座り素早くキーボードを叩く。
「私が配信する情報には合言葉を入れておくわ」
リサは画面を見つめたまま言った。
「【лиса】。これが入っていない情報は偽情報よ。こちらに上げる情報にも合言葉を入れて。それと、送受信した情報は直ぐに消す様に。情報は漏れたら大変だもの」
リサの的確で手早い指示。
今回は、エージェントおよび協力者に調査用の携帯が支給されることになった。
それぞれ受け取った携帯のセッティングをする。
それを終えると、刀が言った。
「皆に提案があるんだが、今この時点から、篠田の居場所を話題に出さないようにしないか」
「いいけど……どういう意図で？」
サキリが尋ねると、刀はずっと考えていたであろうことを口にする。
「変身能力を持った奴が相手なんだ、あの刑事やここのメンバーに変身されたら見分けがつかない。なら今から決して篠田の居場所を口に出さないようにして、口に出した奴は変身した殺人犯だと判断する……というルールを敷いた方が安全だろう？ どうしても確認したい事があれば各自リサに直接連絡すればいい。その連絡先も今ここで確認して、それ以降は決して口に出さない。この状態で犯人が篠田の居場所を知ろうと探りを入れて来たら、皆が都合のいい場所に誘導するようにすればいい。犯人を見つける事、篠田を守る事がＲ&Ｒへの依頼だ。これなら両方こなせるだろう？」
「なるほど。犯人を釣る、というわけだな」
修は少し考え、それから梨香に言った。
「坂内、篠田のホテル近辺にダミーのホテルを手配できるか？」
「できるわ。ちなみに、彼が宿泊している隣の部屋は、サキリ君の依頼ですでに押さえてあるわよ」
犯人をおびき寄せる。
修とサキリは似たようなことを考えていたらしい。
「ダミーホテルの方は第二の事務所としたい。途中までは御剣の言う様に篠田の居場所についての情報を絞って、準備ができ次第、偽の居場所情報を流そう。リサ、出来るな？」
もちろんよ、とリサが答える。
「では俺も準備に掛かる。上手く行けば犯人と篠田との接触を防ぎ、逮捕に繋げることが出来るだろう」
「決まりね。私と美野梨は、寝子島のナナコの方を調べてみるわ」とブリジットが言った。
「関内のトモミの方も手配済みよ。メンバーが直接現場に向かう手筈になってるわ」と梨香。
「了解」とすばるも言った。
「ボクは他のメンバーとアツヒロの方に行くよ。……ところで横浜と言えばシュウマイだよね」
すばるは天眼鏡を覗き込むようにしてウィンクする。
「事件解決Q.E.D.となったら、シュウマイパーティもいいよね」
街は年末年始の喧騒で華やいでいる。
夕日を覆い隠して、ビルの上を黒く覆う雲からは、今にも白いものが落ちてきそうだ。
いつもと変わらぬ足取りで雑踏を抜けてきた夜海霧 楓は、シーサイドタウンのある古い雑居ビルをちょっと見上げた。いかめしい石造りの建物。その脇の路地に、自転車や白いスクーターが止まっている。自分と同じように招集されたメンバーが既に集まっているようだ。
正面口はアーチ状に組まれていて、入ると薄暗いエレベーターホールがある。
この世とは縁が切れたかのように静かだ、と楓は思う。
瞬く蛍光灯の下、薄いブルーのつなぎを着た清掃員が、エレベーターの前に『清掃中』という黄色の札を出して掃除をしている。それで、連絡を受けて駆け付けたエージェントたちはみな、冷蔵庫のように冷えた内階段を上らなければならなかった。
階段を上った先に、ブルーのドア。
はめ込まれた四角い曇り硝子には、金で小さく『R&R Agency』の文字。
中から話し声がする。
◇
事務所には、Ｒ＆Ｒの実質的なボスである坂内 梨香のほかに、楓にとっても顔なじみの御剣 刀、八神 修、サキリ・デイジーカッターの姿があった。それから奥に、仮面を付けた小柄な女がひとり。
入ってすぐの来客ソファには寝子島高校ミステリ研究会のメンバーでもある神野 美野梨とブリジット・アーチャーが座っている。ちくわを咥え、ソファの後ろを行ったり来たりしながら話をしているのは、同じくミス研部員で【ちくわをくわえたホームズ】を自称する新井 すばるだ。
「変身能力とか無敵だよね。話に出てきたアツヒロ、ナナコにトモミ、中刑事……全員怪しいといっても過言じゃない。確認するけど、今回の目的は犯人を見つける、アツヒロ氏を守る、の２点でいいのかな？」
いや、１点の可能性もあるか……とぶつぶつ言ってから、すばるは、
「とりあえず連絡は密に。ニャインのグループチャットでいいね。画像も送れる」
と提案する。
「そうだな。情報規制と連絡先の一本化を徹底する方が良さそうだ」
腕組みをして聞いていた刀が言うと、奥にいた仮面の女が顔を上げた。
「情報戦なら任せて」
無表情な白い仮面。銀の髪と相俟って、底知れぬ雰囲気がある。本名ではなくコードネームで呼んで貰う事、また、素性を把握されない為に仮面をつけたままで、という条件つきでエージェントになった少女である。
「私はリサ。情報アルケミー、それが私の異名よ。今回は、事務所で待機させて貰うわ。情報の整理、配信なら任せて欲しい。言っておくけど、私は『目的の為ならば手段は選ばない』わよ」
リサはスカートの裾を摘まんでお辞儀をすると、パソコンの前に座り素早くキーボードを叩く。
「私が配信する情報には合言葉を入れておくわ」
リサは画面を見つめたまま言った。
「【лиса】。これが入っていない情報は偽情報よ。こちらに上げる情報にも合言葉を入れて。それと、送受信した情報は直ぐに消す様に。情報は漏れたら大変だもの」
リサの的確で手早い指示。
今回は、エージェントおよび協力者に調査用の携帯が支給されることになった。
それぞれ受け取った携帯のセッティングをする。
それを終えると、刀が言った。
「皆に提案があるんだが、今この時点から、篠田の居場所を話題に出さないようにしないか」
「いいけど……どういう意図で？」
サキリが尋ねると、刀はずっと考えていたであろうことを口にする。
「変身能力を持った奴が相手なんだ、あの刑事やここのメンバーに変身されたら見分けがつかない。なら今から決して篠田の居場所を口に出さないようにして、口に出した奴は変身した殺人犯だと判断する……というルールを敷いた方が安全だろう？ どうしても確認したい事があれば各自リサに直接連絡すればいい。その連絡先も今ここで確認して、それ以降は決して口に出さない。この状態で犯人が篠田の居場所を知ろうと探りを入れて来たら、皆が都合のいい場所に誘導するようにすればいい。犯人を見つける事、篠田を守る事がＲ&Ｒへの依頼だ。これなら両方こなせるだろう？」
「なるほど。犯人を釣る、というわけだな」
修は少し考え、それから梨香に言った。
「坂内、篠田のホテル近辺にダミーのホテルを手配できるか？」
「できるわ。ちなみに、彼が宿泊している隣の部屋は、サキリ君の依頼ですでに押さえてあるわよ」
犯人をおびき寄せる。
修とサキリは似たようなことを考えていたらしい。
「ダミーホテルの方は第二の事務所としたい。途中までは御剣の言う様に篠田の居場所についての情報を絞って、準備ができ次第、偽の居場所情報を流そう。リサ、出来るな？」
もちろんよ、とリサが答える。
「では俺も準備に掛かる。上手く行けば犯人と篠田との接触を防ぎ、逮捕に繋げることが出来るだろう」
「決まりね。私と美野梨は、寝子島のナナコの方を調べてみるわ」とブリジットが言った。
「関内のトモミの方も手配済みよ。メンバーが直接現場に向かう手筈になってるわ」と梨香。
「了解」とすばるも言った。
「ボクは他のメンバーとアツヒロの方に行くよ。……ところで横浜と言えばシュウマイだよね」
すばるは天眼鏡を覗き込むようにしてウィンクする。
「事件解決Q.E.D.となったら、シュウマイパーティもいいよね」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年03月24日
- 参加申し込みの期限
-
- 2016年03月31日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年03月31日 11時00分
