子供達のイタズラ｜リアクション

子供達のイタズラ

　もこもこした青いコートに身を包んだロシィ・イシロが公園に駆け込んできた。白くて長い髪を振り乱して走る。無言で辺りを走り回って少し息が上がった。
　青い瞳を遊具に向ける。視線を彷徨わせた末にブランコへと走り出す。飛び乗って立ち漕ぎをした。膝を巧みに使って揺れ幅を大きくする。
　ロシィは全身に風を受けた。火照った頬は急速に冷やされ、元の光沢のある白さを取り戻していった。
　ブランコから降りた。ロシィは滑り台を選んだ。階段を上がって両足を投げ出した姿で滑り降りた。同じ行為を繰り返し、ほんのりと頬が赤らんできた。
　次の興味は砂場に移る。ロシィはしゃがんで砂に手を入れて、驚いたように引っ込めた。両手を摩るような動作で立ち上がり、ベンチへと走っていった。
　真ん中にちょこんと座ると大きく息を吐いた。少し足をぶらぶらさせる。腰にぶら下がっていた水筒を太腿に乗せた。見詰める青い瞳が優しくなる。
　――マーマの手作りのヨーグルトジュースを飲むぞ。
　足の揺れが大きくなった。ロシィは水筒の蓋を取ってゆっくりと中身を注ぐ。注意深く蓋を持ち上げて鼻に近づける。匂いを味わったあと、縁に口を付けた。
　その状態で少し傾ける。口をもぐもぐさせて満足そうに頷いた。今度は蓋を大きく傾ける。
　青い瞳がすっと横に動く。身体の大きな男の子が早足で現れた。ロシィの正面に立つと頬に両手を当てる。
「電車のドアに、挟まったおっさん」
　両手で思いっ切り顔を挟んだ。頬が盛り上がって唇が飛び出た。
　ロシィは蓋の中身を飲み干した。白くなった口の回りを袖口で擦る。表情にあまり変化はないが、少しは笑ったのかもしれない。
「あなたも飲むか」
　男の子に向かって蓋を押し出す。
「よくわかんねえけど、もらう」
「うまいぞ。マーマの作ったヨーグルトジュースだ」
　ロシィは男の子の蓋になみなみと注ぐ。
「うまそうだな」
「うまいぞ」
「じゃあ、飲むか」
　男の子は動きを止めた。蓋の縁に顔を近づける。
「おまえ、どこから飲んだ？」
「もちろん口だぞ」
　ロシィは男の子に顔を寄せて言った。
「そりゃ、そうだけど。もう、いい」
　男の子は適当に口を付けて飲んだ。おお、と声を出してごくごくと喉を鳴らす。
「うまいな、これ！」
「マーマの手作りだからな」
　ロシィの微かな笑みに男の子は少し顔を赤くして、そうだな、と小さな声で返した。