ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～

【陸上部】

「みんなの心に積もってしまった塵はなんだーっ？！」

　年越しが見えてきた冬休みの寝子島高校第１グラウンドの砂場前。寒さのせいなのか己のテンションのせいなのか、頬を赤くしながら陸上部顧問浅井幸太は声を弾ませる。しかし爽やかに吐かれる幸太の白い息とは対照的に、彼の前に整列している陸上部員のそれは大変穏やかに凪いでいた。

「大掃除とは、１年間の塵や埃を払い、気持ちよく新年を迎えるためにあるんだ。この１年、君達にもたくさんの出来事があったと思う。そんな中自分が……」
「先生、先生」
　拳を握り熱が入り始めた幸太に、副部長の桐野正也がストップをかける。勿論全陸上部員の（先生の熱弁が長くなってきたぞなんとかしろやコラこちとら寒いんだよ）という視線に押されまくっての事だ。
「心の塵は各自で払いましょうよ。それより早く掃除を進めないと、日が暮れますって」
　正也の言葉に全部員がうんうんと大きく頷く。幸太は握っていた拳を残念そうに下げた。
「これからがいいとこなんだけどなぁ。……ま、確かにそうだな。寒いし、パッパと進めようか。じゃあ十文字、後頼む！」
「はい！」
　幸太に指名された部長の十文字若菜が正也と一緒に陸上部員の前に進み出た。

「本日の予定ですが、まずは校庭の草むしりと砂場の整備。これは全員で行います。その後用具入れと部室の掃除を行いますが……」
　若菜がちらりと正也を見る。正也が若菜の言葉を引き取り続けた。
「用具入れは大物も多いし人出が必要なんだけど、これが終わるまで待ってると部室が出来なくなっちまうから、少人数で部室も進めたいと思う。２人くらいでいいと思うから、俺と……」
　正也はそこで言葉を切り、部員の顔を見渡した。
「そうだな……後木ちゃん！　部室でいいか？」
　名前を呼ばれた後木真央はにゃっ！　と少しびっくりした顔をしたが、すぐに笑顔で言った。
「了解なのだー！　頑張るのだ！」
　真央の了承に正也は「さんきゅ」と軽く頷く。
「そんじゃ部室は俺と後木ちゃんで。用具入れが終わったらみんなは部室の方を手伝いを頼む。大物は流石に俺１人じゃ動かせないからな」
　はーい！　と部員達が元気に返事をする。若菜が白い息を吐きながら話を続けた。
「では、まずはみんなで草むしり。その後は各自別れて下さい。―――先生、開始の号令をお願いします！」

　若菜に笑顔で最後のバトンを渡された幸太は「俺か？」と戸惑いつつもまんざらでない顔だ。ニカッと笑って１歩前に進み出た。
「―――それでは、陸上部、今年最後の大掃除を始める！　みんな、気合い入れろよ！」
「「「「「「「オーッ！！」」」」」」」