ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～

　最後のきつい道を登って、登って。とうとう全員が山頂に到達した。
「うわあ……」
「山頂だー！」
　突然に開けた視界に美弥子とののこは今までの疲れを忘れ思わず叫んだ。
　圧倒的な青空。その接地部分には海と里山が広がり、人工物では味わえない３６０度の突き抜ける様な景色がそこにあった。
「すごい……」
　瞬きも忘れ呟くののこの肩を、ぽんと豪が後ろから叩いた。
「野々、串田。高い所は好きか？」
　彼女達と同じ目線で景色を見ながら豪が言う。２人は無言で頷いた。
「そうか。……凄い景色だろう。登山の醍醐味だ」
　豪の言葉にまた２人はしっかりと頷いた。
　登頂の余韻に浸る彼女達からそっと離れ、豪は小さく呟く。
「……野々はもっと高い所の景色を見てるはずだけどな」
（空から落ちてきたことは覚えてねえか……）
　ののこの横顔を見ながら豪は軽く首を振り、自分の荷物の場所に戻った。

「よーし、お楽しみの時間だ！」
　楽しげに豪は言うと、踏み固められた雪氷の上にブルーシートを敷き、手早くストーブにゴトクを設置する。そしてクッカーに何やら入れ、火を点けた。
「用意してきましたよ、部長」
「お、サンキュー！」
　豪は上機嫌で士からビニール袋を受け取る。そこには何やら白くて四角い物が入っていた。
「先輩、それ何ですか？」
　不思議に思った美弥子が尋ねる。待ってましたとばかりに豪はニカリと笑った。
「山頂で餅を食おうと思ってな。正月のが余ってるだろ？　それを持って来てもらったんだ」
　そして美弥子とののこの前でクッカーの蓋を開けて見せた。
「真っ黒！　何これ？」
「汁粉だよ。これに入れて食う山の餅は格別だぜ♪」
　わー！　とののこ達は顔を見合わせる。豪は別のストーブに網を設置しながらきょろきょろと辺りを見回した。
「八神はどこ行った？」
　士は無言で横を指さす。「八神、餅！」と豪が声をかけると修が慌てて振り返った。しかし持っているのは餅ではない。
「雪ウサギ、か？」
「可愛いー！　八神君作ったの？」
「こ……これは、その、ゆ、雪質を見るために……」
　皆の視線が集中し、思わず修が赤くなってしまう。ののこがはいはーいと手を挙げた。
「それかわいい！　作り方教えて！」
　豪がくすくす笑いながら言った。
「まあ取りあえず、八神。……餅！」

　修や士の餅は無事汁粉に変身し、皆に振る舞われた。
　はふはふと美味しそうに食べる彼らを見ながら豪はほっとする。
（誰も怪我をしなくて良かった）
　登山計画から冬山装備まで、初心者がいることを念頭に入念に準備をしてきたつもりだった。特に今回はののこがいるから万が一にもろっこんは使えない。
　しかしどれだけ準備しても何が起こるか分からないのが登山だ。豪は登っている間中も、特に２人には目配りを忘れなかった。
　こうして無事山頂で部員達と楽しそうにしている姿を見られて本当に嬉しい。そして少しでも登山の、雪山の魅力を知ってもらえたのならもっと嬉しい。
（でも、まだ下山があるんだから、気は抜かない）
　彼女達が、部員達が無事に山を下りてこそ、今回の雪山登山が成功したと言えるのだから。
「……長、部長」
　豪の思考は中断された。慌てて声のする方を振り向くと、士が目の前に立っていた。
「どうした邪衣？」
「野々が」
「はーい！　お汁粉おかわり欲しいでーす！」
　元気にののこが手を挙げる。「あ、私もー」「俺も」と美弥子と修も空になった器を上げる。それを見ながら士が頷き言った。
「―――で、俺もおかわり下さい」
　……ポカン。
　一瞬彼らの勢いに呆けてしまう豪だったが、おもむろにプーッと吹き出した。
「どうだ、山で食う汁粉は美味いだろう！　残したってしょうがねえからどんどん食え！」
　やったー！　とおかわりを始めた彼らを見ながら、豪も自分の汁粉を掻き込んだ。
　―――ああ、探検部で食う汁粉は美味いなあ！

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あとがき

担当マスター：ＫＡＮ
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ＫＡＮです。
ご参加の皆様、ありがとうございました！

どの部活動も仲が良く、とても楽しくリアクションを書かせて頂きました。
学生時代の部活動っていいですよね。損得なしに本当に熱くて。
自分の学生時代の部活動を思い出しました。バドミントンと剣道だったんですけど。
あの頃は若かった……。

そして今回、野々ののこは水泳部に入部する事になりました。
ののこは泳げこそはしますが、まだまだへたっぴです。
水泳部の皆さん、ののこが１人前のスイマーになれるようによろしくお願いしますね！

このシナリオが皆様の思い出の１ページになれば幸いです。
また素敵な仲間達と楽しく学生生活を過ごして下さいね。

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