浅井幸太の受難～挑め！年末大セール！～｜リアクション

浅井幸太の受難～挑め！年末大セール！～

　八神修がフードコートから帰還した時には、浅井幸太先生のためのコーディネートは随分と整っていた。
「どうだ、八神。結構いい感じだろ？」
　風雲児轟ににっと笑い掛けられて、修は「ああ」と素直に応じて頷いてみせる。
「先生らしさを生かした爽やかで自然体なコーデだし、その中に大人っぽさもある」
　それは、修が目指す方向性にもぴったりと合っていた。
　高野先生の好みは明確なものではなかったが、これなら印象はきっといいはず。
「ただ、ベストが中々決まらないのよね」
　唇を尖らせるのは尾鎌蛇那伊だ。
　３人であれこれと試してみたが、「これだ！」という物はまだ見つからずにいて。
「そうだな……なら、こういうのはどうだろう？」
　修がチョイスしたのは、明るいグレーのベスト。
「これなら、カジュアルだけど上品さもある」
　Ｙシャツとジーンズに修が選んだベストを合わせてみせて、青物といきは顔を輝かせた。
「うん、私もいいと思うにゃ！　浅井センセに絶対似合うにゃ！」
「で、次はどうするんだ？」
　首を傾げる轟の問いに、浅井先生を除く残りの３人の声が見事に揃う。
「靴だな」「靴にゃ」「靴よね」
　意見の一致に頷き一つ、指を立てるといき。
「革靴とかいいと思う！　とにかく、やっぱり靴も服装に合わせるべきにゃ！」
「うんうん、靴が間に合わせじゃ興醒めだものね。そういうパッと見で目が行かない所をビシッと決めていると、意外と全体がビシッと決まるものなのよね～」
「折角細身のボトムだし、色を合わせたら脚がスラリと長く見えるよな」
　という次第で、靴は黒の革靴に決定だ。
「おお、いい感じだな！　だけど何か足りないなぁ……コートとか、アクセサリーとかか？」
　轟の発言に異論がある者はなく、皆で最後の仕上げに掛かる。
　アクセントにと蛇那伊が選んだのは、しっかりとした作りの無骨な黒のネックレス。
　コートは相談の結果、修が推したモノトーンのビジネスカジュアルコートに決まった。
「なあ、これって結構完璧なんじゃないか？」
「うん、決まってるにゃ！」
　轟とといきも満足げに笑みを零す。
　そしてといきは、浅井先生にこう持ち掛けた。
「浅井センセ、私を年上のお姉さんだと思って一緒に着合わせしてみないかにゃ？」
「一緒に試着してみるってことか？」
「そうそう！　なんかといき、お嬢様なワンピースとか着たい気分だし！」
　高野先生に会う前の予行練習って事で！　とちくりと胸を痛ませながらも付け足して、といきは浅井先生を試着室へと押し込むと、自分も少し離れた女性用の試着室へと入る。
　やがて現れた２人の姿に、誰からともなく「おお」と声が漏れた。
「ど、どうだ？」
「似合ってますよ、先生。ばっちりです」
「苦心した甲斐があったわ～」
「カッコいいぜ、浅井先生！」
　称賛の言葉を受けて、「ありがとう」とはにかむ浅井先生。
　可愛いワンピースを身に纏って彼の隣に立ったまま、といきは無理矢理に笑った。
「……デート、成功するといいにゃ」
　ぽつり、零された言葉に浅井先生が目を見開く。
「あ、青物。何か思いっ切り誤解があるみたいだが……」
　顔を真っ赤にして慌て、浅井先生は改めて事情をまるっと説明した。
（そっか、高野先生が好きだから買い物に行くんじゃないんだ……）
　真相を知って、といきは胸をほっこりとあたためる。
「重ねてになるが、皆本当にありがとうな」
　４人へと、浅井先生は晴れた顔で笑い掛けた。そして、
「そうだ。折角だし、もう少し買い物を……」
「って、他の服はまた今度だ！　予算大事にっ！」
　まだ神魂の影響を受けている様子の浅井先生を、轟は全力で引き留めたのだった。

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あとがき

担当マスター：巴めろ
ファンレターはマスターページから！

お世話になっております、ゲームマスターの巴めろです。
まずは、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました！

ちょっと変わった年末セールな時間、お楽しみいただけましたでしょうか。
ＰＣ様方にとっても皆様にとっても、心に残る時間となっておりましたら幸いでございます。

重ねてになりますが、ご参加くださった皆様に心からの感謝を。
この度も本当にありがとうございました！

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