【終業式】始めようと思ったときが始まり｜リアクション

【終業式】始めようと思ったときが始まり

【生徒会主催クリスマスパーティー〔本編〕（１）】

　そうして、ついにパーティーは始まった。
「はいはーい、みんなジングルベール！　今日はみんな楽しんでいってＮＥ☆　お茶もお菓子もたくさん用意してあるＹＯ！」
　生徒会会長の志波武道が、サンタ服を身に纏い、とびきりのスマイルを振りまきながら、入口から入場してくる生徒達一人一人に歓迎の言葉をかける。
「テーブルには食べやすいように小分けしたお菓子が一杯並んであるから遠慮なく食べてねぃ。会長サンタが用意してくれたお土産の入った小袋もちゃんと全員分あるからねぃ」
　生徒会書記の呉井陽太もキツネサンタに扮装し、参加者達をもてなしていく。
「プレゼント交換の受付はあちらの海原先輩のところでお願いしまーす」
　生徒会副会長の屋敷野梢も、てきぱきと生徒達の誘導をこなしていた。
　パーティーというものは、盛大であれば盛大であるほどに、裏で地道に働いてくれるスタッフの能力と仕事への意識の高さが重要となる。
　その点、寝子高は生徒数の規模もさることながら、こういったお祭り騒ぎに対する熱意の高さは全国レベルで考えても目を瞠るほどのものがあった。
「ところで、小萩の『おはなしチケット』はいったい誰に当たったですか？」
　小萩がきょろきょろとあたりを見まわしたときだった。
「ふふ。教えてあげましょうか？」
「え……？」
　どこからともなく聞こえてきた声に、小萩はイヤーな予感を抱きながら声のした方を振り返る。
「本条さん。あなたからのクリスマスプレゼント『おはなしチケット』はこの剣崎エレナが確かに受け取ったわ！（ｷﾘｯ」
「……え、あ、ああ、やっぱりエレナさんでしたか」
　そこにいたのは、やはりあの剣崎エレナその人であった。
「このチケットがあれば、あなたに好きなおはなしを描いてもらえるのね。とっても素敵なプレゼントだわ！」
「……よ、喜んで貰えてなによりです」
　瞳をきらきら輝かせながら語るエレナに、小萩は苦笑気味に応じる。
（ぬー、すごい人に当たってしまいました……。いったいどんなリクエストをされるのでしょう？）
　小萩はおそるおそるエレナの顔を覗き見る。
「さて、どんなおはなしをお願いしようかしら。そうね。では、せっかくのクリスマスプレゼントなのですから、こうしましょう。私、『剣崎エレナに起きるクリスマスの奇跡』を描いてちょうだい！」
「え……？　クリスマスの奇跡、ですか？」
　意外とまともなリクエストに、小萩は少しびっくりしつつ、そう訊き返す。
「そう。私の、私による、私のためのステキな物語をお願いするわ！」
「……わ、わかりました！」
　自己主張激しめのリクエストに若干引きつつも、小萩はそのリクエストに応じることにした。
（私が描く時点で『エレナさんによる』ではない気がしますが、よーするに『エレナさん凄い！』というおはなしを描けばいいんですよね？）
　それだったら、なんとか描けそうだと小萩はホッとした。
　満足げに去っていったエレナの背中を見送ると、小萩は今度は自分に届いたプレゼントの中身を確かめた。
「ロボットのプラモデル、ですか。ぬー、いかにもハイテクな感じですね……」
　小萩はいわゆる『ハイテク』が苦手で、彼女が得意とする美術の分野においてもハイテク系は避けて通るぐらい機械類が苦手だった。
　だが、
「……でも、帰ったら組み立てに挑戦してみることにします。だって、せっかくのクリスマスプレゼントなんですからね！」
　と、ハイテク嫌いの小萩にしては珍しくやる気を見せていた。
　これも一つのクリスマスの奇跡なのかもしれない。
　本条小萩の身にもクリスマスの奇跡は起きた。
　そんな小萩だからこそ、きっと素晴らしい『剣崎エレナに起きるクリスマスの奇跡』のおはなしが紡ぎあげられることだろう。