【終業式】始めようと思ったときが始まり｜リアクション

【終業式】始めようと思ったときが始まり

【生徒会主催クリスマスパーティー〔本編〕（３）】

　骨削瓢は、恋人である天馬ひびきと一緒にパーティー会場にやってきていた。
「にしし。さすがのあっしも今日ばかりは大人しくパーティーを楽しむとしましょうかねぇ」
「あ、瓢さん。見て見て、大きなクリスマスツリー！　とってもキレイだね☆」
　ひびきは腕を組んで歩く瓢に、幸せそうな笑顔を浮かべながら言う。
「ああ、そうだねぇ。まぁひびき嬢の美しさには到底敵いっこありませんけどねぃ」
「え～、ちょっとやだ瓢さんたらっ。そんなこと――ちょっとだけあるかなっ☆（ｷﾗｯ」
　最愛にして唯一無二の恋人と腕組みしつつ、瓢は現在進行形でラブラブっぷりを周囲に見せつけていた。
　彼らのほかにも会場にはリア充がいるにはいたが、このときの瓢にとっては会場に集まるその他大勢のリア充などもはや認識の対象外らしく、彼のろっこん悋気の独楽はまるで発動する様子を見せなかった。
「ところで、ひびき嬢。さっきから気になっていたんですが、その可愛らしい小袋はいったい何が入ってるんですかねぇ？」
「んん？　あ、これはねぇ。瓢さんへのクリスマスプレゼントだよ！」
　ひびきは、そう訊ねられるのを待っていましたと言わんばかりに、満面の笑みで袋を瓢に差し出す。
「おお、嬉しいねぇ。開けてもいいかい？」
「もちろん」
　瓢はひびきから許可を得ると、愛おしそうに袋を開けて中身を取り出す。
「これは……」
「ふふふ。じゃんじゃじゃーん！　ひびき特製――手編みのマフラーだよっ！」
　それは落ち着いた色合いの、瓢がよく身につけている和服や甚平などにもよく合いそうな、そんな愛情たっぷりの手編みのマフラーだった。
「……もしかしてあっしのために夜なべして編んでくれたんですかぃ？」
　それにいつもふざけた表情しかしない瓢が、驚いたように目を見開いて言う。
「え？　うーんと、別に、夜なべはしてないけど……。でも、愛情はたっぷりこめて編んだよ☆　ていうか、夜にお鍋なんて食べたら太っちゃうよっ」
「……嬉しいねぇ。大切にするよぃ」
　ひびきの若干アレな発言はスルーして、瓢はそのマフラーを大切そうに首に巻いた。
「うん、温かいねぇ。それじゃあ、あっしからもプレゼントさぁ」
「え、ほんとに？　あ、このぬいぐるみカワイイ！」
　どこからともなく取り出した瓢のプレゼントは、ひびきのお気に入りの白いペガサスのぬいぐるみ『はやぶさ』と対になるような黒い馬のぬいぐるみだった。
「名前はひびき嬢がつけておやり」
「うんっ！　ありがとう瓢さん。大事にするねっ！」
　それから二人はテーブルに並ぶ食事に手をつけながら取りとめのない、だけど、とても大事な話をした。
　たとえば、年末に行く旅行の予定のこと。たとえば、それから先の未来こと――等々だ。
「はい、瓢さん。あ～んして？」
　ひびきがフォークを手に、瓢の口元に料理を運ぶ。
　瓢は言われるがままに口を開けて、ひびきに料理を食べさせてもらっている。
　いつもは狂気の人とでも呼ぶべき骨削瓢も、ひびきの前ではごく普通の彼女にデレデレの少年だった。
「ほら、ひびき嬢もお食べ」
「うんっ」
　今度は瓢の差し出したフォークに、ひびきがあーんと口を開ける。
　どこかで『リア充は爆発しろっ』という声が聞こえた気がしたが、ひびきにはその言葉の意味するところなどまったくわかっていなかった。
「年末年始も、その先も、ずっと一緒にいようねぇ……」
　そう言った瓢も、それに頷くひびきも、それはもう本当に、とてもとても幸せそうな表情をしていたのだった。

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