【終業式】始めようと思ったときが始まり｜リアクション

【終業式】始めようと思ったときが始まり

【生徒会主催クリスマスパーティー〔準備編〕（２）】

　三宅葉月は生徒会役員ではなかったが、そのアクセサリーデザインのセンスを買われて会場設営の準備に狩り出されていた。
「このオーナメントをツリーに。それからそっちの窓ガラスにはこのシールを」
　葉月は眠たげな瞳で、ありもののオーナメントや飾りを物色しながら、それらが最大限に実力を発揮できる場所へと飾りつけていく。
（色々と生徒会で飾りは用意してくれているみたいだけれど……やはりちょっと物足りないわね）
　そう思った葉月は、自分でデザインした飾りやオーナメントや、以前『Joulupukki』で購入した精緻な小物なども利用して、ときにファンタスティックに、ときに可愛らしい装飾を心掛けていく。
　と、そのとき、葉月は小さな飾りを手にして自分を見つめてくる野々ののこの存在に気づく。
「ねぇねぇ、三宅先輩。この飾りはどうすればいいと思う？」
　無邪気な笑顔で訊ねてくるののこに、葉月は少し考えてから、自分の考えを伝える。
「……そうね。それは大きなツリーの中段あたりに括りつけるといいんじゃないかしら？」
「わかった！　ばっびゅーん♪」
　ののこはビシッと『了解』のポーズを取ると、両手を飛行機の翼のように広げてツリーへ走っていく。
「わ、わわっ！？　の、ののこちゃん走ったら危ないよっ！」
「あっ、ごっめーん。てへぺろ☆」
　飾りつけをしていた他の生徒にたしなめられて、コツンと頭を小突く野々ののこ。
「……」
　正直、危なっかしくて葉月はおちおち見ていられない。
「……野々さん。こっちに来て、私の飾りつけを手伝ってくれる？」
「え？　あ、うん！」
　葉月が呼びかけると、ののこは素直に頷いてこちらに戻ってくる。
（「邪魔だからどいていて」というのも可哀想だし、私がそばでフォローしてあげましょう……）
　葉月とて、せっかく自分が飾りつけを担当したパーテイーで無粋な真似はしたくなかった。
　かくして、講堂は彩り豊かなクリスマスの装いへと飾りづけをされていく。