- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【大晦日】旧市街の夜と朝
【エヴァ、神社でアルバイトする】
ねんがんの みこふくを てにいれたぞ！
もしこれがひと昔のRPGだったら、エヴァ・ブランシェの頭の上にはこんな文字が浮かんでいただろう。
アルバイト用の巫女装束に身を包んで、エヴァはふふふと内心の笑いを外に出してしまうほど、喜びを隠せない。
「一度着てみたかったのよねー！」
嬉しすぎて緋袴の裾を子供のように蹴って歩くと、コホンと後ろから咳払いが聞こえてきた。
「歩き方には気をつけてね」
先輩巫女の神楽 舞が苦笑して去っていく。まさか誰かに見られるとは——、虚をつかれたエヴァは、真っ赤になった頰を両手でぱちんと挟んだ。
（いけないわ。普段通りクールでビューティなあたしにならないと……！）
さて。『巫女』という冠がつくと特別感が漂うものの、エヴァに与えられた仕事はごく普通のアルバイトだった。
今日は舞が甘酒の無料配布に携わっている為、エヴァたち臨時アルバイト巫女が、お札やおみくじの販売にあたるのだ。
（基本的には接客業とやる事は同じなのよね）
エヴァはそう分析したものの、普通のアルバイトにはない特別な部分もこの仕事に感じている。
「ようこそお参り下さいました」
丁寧に頭を下げると、何人かの参拝客は神に仕える女性へ敬虔な眼差しでエヴァを見るのだ。彼らの気持ちを裏切らないよう、エヴァは愛想よく笑顔で対応した。
こうして頑張っていたから、夕方を過ぎてくる頃には、大分こなれてきたと自分でも思える。
「ふふっ。どう？ サマになってるでしょ？」
同じアルバイトの神野 美野梨に向かって首を回し、腰に両手を当てていると、またもこほん、と咳払いが聞こえてきた。
「後で甘酒の紙コップを蔵から運んでおいてくれるかしら」
舞は用件だけ伝えて去っていった。
「また見られてしまったわ……」トホホと肩を落とすエヴァに、美野梨は申し訳なさそうにクスクス笑いを零した。
販売所は比較的空いていたから、エヴァは舞に与えられた仕事に直ぐに取り掛かった。
「ええと、紙コップ、紙コップ——、これね」
蔵にあった二つの紙袋を両手で持って、エヴァは甘酒の配布場所へ向かおうとつま先を反転させた時だ。
「きゃ！」
思わず小さな悲鳴を上げてしまった。エヴァの目の前に、小さな女の子が立っていたのだ。
驚きで頭に浮かんだ言葉は全て飲み込み、エヴァは辺りを見回してみる。女の子はどう見ても夜に一人で出歩かない年齢なのに、付き添いが見当たら無かったからだ。
（迷子ね……）
表の混み具合はトラブルが起きそうで、警備ボランティア以外にも見回りが必要かもしれないと感じていたが、案の定だ。
（アナウンスで呼び出し……って、そんな便利な設備は無かったわね）
八方ふさがりの状況に、エヴァは仕方ないと腹を括った。この際巫女らしいとからしくないとかは、言っていられない。
「ほら、お姉さんの上に乗りなさい」
「…………うんっ！」
女の子が戸惑ったのはほんの少しで、いつも親にされ慣れているのだろう手際の良さでエヴァの背中に飛びついた。
幼児の離すまいとする力は意外に強く、エヴァの顔は青、赤と色を変える。
「ぐ……、の、喉締まる！ もうちょっと下の方に手を回しなさい」
「あははお父さんもそーゆうんだよ！」
エヴァは親の苦労を思ったが、女の子はお陰でとても楽しげだったし、迷子の不安を吹き飛ばしてやれたらしい。
＊ ＊ ＊
参拝客の多い方へ戻って少し探すと、女の子の親は直ぐに見つかった。
向こうも必死に探していたようで、何度も頭を下げられた。
「見つかってよかったわね。今度はお父さんとお母さんの手を離さないのよ」
「うんっ、有難うお姉ちゃん！ ばいばーい！」
言われた通り両親と両手を繋いだ女の子を、エヴァは達成感を滲ませた笑顔で見送った。
女の子が見えなくなった時、ふと背中に気配を感じて振り返る。また舞が背後に立っていたのだ。
「あ、あの……」
エヴァは狼狽しながら自分の姿を確認した。
紙袋が下げられた白衣の袖は捲り上げられ、女の子が必死にしがみついていた襟元は、無残なくらいによれてしまっている。
「今のあたし、巫女らしくないわ……」
きっとはしたないと怒られる。自分でも自分の姿に反省したエヴァがしゅんとしていると、舞の白い腕がこちらへ伸びてきた。
彼女はエヴァの崩れた襟元を細い指先で器用に正していく。
「——ほら、出来た」
舞は笑顔だった。驚いているエヴァの片方の腕から紙袋を抜き取って、「いきましょう」と促す。
「あなたはとても巫女らしいわ」
その時エヴァの顔に浮かんだ笑顔は、クールビューティーにはほど遠かったが、いい表せない美しさを持っていた。先輩巫女にはそれがとても愛おしく思えたのだった。
もしこれがひと昔のRPGだったら、エヴァ・ブランシェの頭の上にはこんな文字が浮かんでいただろう。
アルバイト用の巫女装束に身を包んで、エヴァはふふふと内心の笑いを外に出してしまうほど、喜びを隠せない。
「一度着てみたかったのよねー！」
嬉しすぎて緋袴の裾を子供のように蹴って歩くと、コホンと後ろから咳払いが聞こえてきた。
「歩き方には気をつけてね」
先輩巫女の神楽 舞が苦笑して去っていく。まさか誰かに見られるとは——、虚をつかれたエヴァは、真っ赤になった頰を両手でぱちんと挟んだ。
（いけないわ。普段通りクールでビューティなあたしにならないと……！）
さて。『巫女』という冠がつくと特別感が漂うものの、エヴァに与えられた仕事はごく普通のアルバイトだった。
今日は舞が甘酒の無料配布に携わっている為、エヴァたち臨時アルバイト巫女が、お札やおみくじの販売にあたるのだ。
（基本的には接客業とやる事は同じなのよね）
エヴァはそう分析したものの、普通のアルバイトにはない特別な部分もこの仕事に感じている。
「ようこそお参り下さいました」
丁寧に頭を下げると、何人かの参拝客は神に仕える女性へ敬虔な眼差しでエヴァを見るのだ。彼らの気持ちを裏切らないよう、エヴァは愛想よく笑顔で対応した。
こうして頑張っていたから、夕方を過ぎてくる頃には、大分こなれてきたと自分でも思える。
「ふふっ。どう？ サマになってるでしょ？」
同じアルバイトの神野 美野梨に向かって首を回し、腰に両手を当てていると、またもこほん、と咳払いが聞こえてきた。
「後で甘酒の紙コップを蔵から運んでおいてくれるかしら」
舞は用件だけ伝えて去っていった。
「また見られてしまったわ……」トホホと肩を落とすエヴァに、美野梨は申し訳なさそうにクスクス笑いを零した。
販売所は比較的空いていたから、エヴァは舞に与えられた仕事に直ぐに取り掛かった。
「ええと、紙コップ、紙コップ——、これね」
蔵にあった二つの紙袋を両手で持って、エヴァは甘酒の配布場所へ向かおうとつま先を反転させた時だ。
「きゃ！」
思わず小さな悲鳴を上げてしまった。エヴァの目の前に、小さな女の子が立っていたのだ。
驚きで頭に浮かんだ言葉は全て飲み込み、エヴァは辺りを見回してみる。女の子はどう見ても夜に一人で出歩かない年齢なのに、付き添いが見当たら無かったからだ。
（迷子ね……）
表の混み具合はトラブルが起きそうで、警備ボランティア以外にも見回りが必要かもしれないと感じていたが、案の定だ。
（アナウンスで呼び出し……って、そんな便利な設備は無かったわね）
八方ふさがりの状況に、エヴァは仕方ないと腹を括った。この際巫女らしいとからしくないとかは、言っていられない。
「ほら、お姉さんの上に乗りなさい」
「…………うんっ！」
女の子が戸惑ったのはほんの少しで、いつも親にされ慣れているのだろう手際の良さでエヴァの背中に飛びついた。
幼児の離すまいとする力は意外に強く、エヴァの顔は青、赤と色を変える。
「ぐ……、の、喉締まる！ もうちょっと下の方に手を回しなさい」
「あははお父さんもそーゆうんだよ！」
エヴァは親の苦労を思ったが、女の子はお陰でとても楽しげだったし、迷子の不安を吹き飛ばしてやれたらしい。
参拝客の多い方へ戻って少し探すと、女の子の親は直ぐに見つかった。
向こうも必死に探していたようで、何度も頭を下げられた。
「見つかってよかったわね。今度はお父さんとお母さんの手を離さないのよ」
「うんっ、有難うお姉ちゃん！ ばいばーい！」
言われた通り両親と両手を繋いだ女の子を、エヴァは達成感を滲ませた笑顔で見送った。
女の子が見えなくなった時、ふと背中に気配を感じて振り返る。また舞が背後に立っていたのだ。
「あ、あの……」
エヴァは狼狽しながら自分の姿を確認した。
紙袋が下げられた白衣の袖は捲り上げられ、女の子が必死にしがみついていた襟元は、無残なくらいによれてしまっている。
「今のあたし、巫女らしくないわ……」
きっとはしたないと怒られる。自分でも自分の姿に反省したエヴァがしゅんとしていると、舞の白い腕がこちらへ伸びてきた。
彼女はエヴァの崩れた襟元を細い指先で器用に正していく。
「——ほら、出来た」
舞は笑顔だった。驚いているエヴァの片方の腕から紙袋を抜き取って、「いきましょう」と促す。
「あなたはとても巫女らしいわ」
その時エヴァの顔に浮かんだ笑顔は、クールビューティーにはほど遠かったが、いい表せない美しさを持っていた。先輩巫女にはそれがとても愛おしく思えたのだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年03月11日
- 参加申し込みの期限
-
- 2016年03月18日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年03月18日 11時00分
