年賀状準備中！｜リアクション

年賀状準備中！

〒　オレンジ動物病院

　星が丘にある、花いっぱいの庭に隣接するオレンジ動物病院。
「年賀状？　ああ、年末に書くものなのか」
　赤い髪の爽やかな青年、院長のジェレミア・ベルトーニは病院のスタッフたちと話していた。
「ええ、お世話になっている人達へ出すものなんですよ」
「来年の干支は申ですね。あ、干支っていうのは……」
　干支について説明を聞いたジェレミアは首を傾げる。
「どうして猫が入っていないんだい。犬はあるのに」　
「ああ、それは昔、神様が……」
　ネズミが猫を騙したせいで、猫が一日遅れてしまったのだという昔話をスタッフが教えてくれた。
「それはひどい話だね、猫が気の毒だ」
　苦笑交じりにジェレミアは言う。
「実は、猫写真なら島に暮らす野良にゃん達の姿がそれこそ沢山あるんだよ。せっかくだからこれを使いたいな」
　ジェレミアは、寝子島が猫天国と知ってここにやってきたほどの猫好きだ。
「家族写真を使うという人も居るようだし、きっと皆にも馴染みのある猫が写っている島の猫達を色々と撮った写真は喜ばれるんじゃないかな」
「猫写真ですか」
　意外な展開にスタッフは顔を見合わせたが、生き生きと語るジェレミアの姿に、
「動物病院らしいかもしれませんね」
　と皆頷いてくれた。
「うん、自分で作るのは大変だから、印刷所に発注するよ」
　
　数日後、広場にわらわらと集まっている猫集会の写真を何枚かと、オレンジの木が目印である病院の表玄関の写真を使った年賀状が印刷されてきた。
「文字は『謹賀新年』と！　やっぱり漢字４文字はカッコイイねぇ」
　ジェレミアは満足げに頷く。
「宛先は患畜リストから印刷すればいいね」
　とつぶやくジェレミアに、
「手書きで添書きがあると嬉しいですよ」
　とスタッフさんが言った。
「なるほど、そうだね。そうだ、ペット達の名前を入れて一言添書きをしよう」
　診察の合間の休み時間に皆総出で添書きをすることになった。
　外国人には新鮮な体験だ。
「八神くんのところはたくさんいるから小さめの文字で書かなくてはね」
　大変だが、名前を書いているとペットの顔や診察時の様子が思い浮かぶ。
忙しい中にも楽しい作業になった。
「色々あったなぁ、来年も皆が健やかに過ごせると良いねぇ」
　そう思うジェレミアだったが。
「先生、午後の患者さん達がお待ちです」
　感慨に耽る暇もなく、午後の診察となった。

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