年賀状準備中！｜リアクション

年賀状準備中！

〒　旧市街　宮祀青果店
　
　旧市街、宮祀青果店の２階。
　寝子高１年生の宮祀智瑜は自分の部屋で悩んでいた。
「今年の年賀状はどうしようかな……」
　その時、ひょいとお祖父ちゃんが顔を出した。
「どうした、智瑜。年賀状ができんのか」
「うん、毎年同じじゃつまらないから、今年は何か違うことをしたいと思ったんだけど……何かいい案ないかなあ」
「それなら、芋版はどうじゃ」
「芋版！　サツマイモを彫って作るのね」
「そうじゃ、店のを一つ使っていいぞ。ケガしないようにな」
　お祖父ちゃんは可愛くてたまらないという笑顔を孫娘に向けた。
「ありがとうおじいちゃん！」
　智瑜も笑顔でお礼を言うと、ボブカットを揺らしながら階下に降りていった。
「おばあちゃん、芋版に使うお芋一つもらうね」　

「猿の顔の絵を紙に下書きして……」
　芋を選んだ智瑜は必要なものを準備してさっそく絵を描いてみた。
　半紙を裏返して芋に写し、線に沿って彫る。
「彫り過ぎない様に注意しなきゃ」
　試しにスタンプ台のインクを付けてペタリと押してみる。
「うん、猿に見えるから大丈夫」
　でも他の人の感想も聞いておきたくて、はんこを押した紙を持って智瑜は再び階下へ降りていく。
　一階の居間ではお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが寛いでいた。
「見て、これ何に見える？」
　紙を見せると二人は微笑んだ。
「お猿さんだね。上手にできたね」
「おう、さすがわしの孫じゃ、センスがいい」　
「良かった」　
　褒められて嬉しくなりながら、智瑜は自分の部屋に戻って行った。

　ぽんぽんとハンコを押していってメッセージを添える。
「住所の間違いがないかちゃんと確認しなきゃ」
　せっかく書いた年賀状だもの、間違えて届かなかったりしたら大変だ。
　そして一枚のハガキを前に考え込む。
「ちよちゃんは入院中だから病院宛かな？」
　９歳の女の子、新島ちよちゃん（とお友達のぬいぐるみのくまちゃん）が入院している病院の住所を調べ、に、智瑜は年賀状を書いた。
「ちよちゃんとくまちゃんにメッセージを書いて……あっ、くまさんシールがあったっけ。貼っておこう」
　元気になってほしいと思いをこめ、智瑜は年賀状を書いた。

「義弘先生にもハンコを押してっと」
　それから智瑜は何を書こうか悩んだ。
　失礼のないようにしたいけど、他の生徒からの年賀状に埋もれてしまわないようインパクトも欲しいと思いつつ。
（でもやっぱり恥ずかしいし……）
　結局無難な言葉に落ち着いてしまったが、せめて色んなペンでカラフルに可愛く周りを彩る。
（気持ち、伝わりますように）

　書けた年賀状を輪ゴムで止め、智瑜はポストへ向かった。
（これで一日に届く筈）
　帰ったら芋版の残りのお芋をふかして美味しく頂こうと思う智瑜だった。

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