【大晦日】シーサイドタウンでカウントダウン☆｜リアクション

【大晦日】シーサイドタウンでカウントダウン☆

　桃川圭花は、大晦日の日桜花寮の自室でネットサーフィンをしながらぽつりとつぶやいた。
「へぇ……」
　この島は、なかなかメジャーな初日の出スポットが多いらしい。旅情報のページをみると、あちらこちらにベストスポット＝寝子島の……と紹介されている。
　……となると、折角住んでいるのだから見ておこうか、なんて気持ちにもなるもので。早速圭花は初日の出を見に行く準備を始めた。
（……って言っても私、高校入学してこっちに来るまでは海のないところに住んでたのもあって、海からの初日の出を見るのってそもそも初めてだったりするけど）
　海から太陽が上がってくる感じってどんな感じなのかな。
　楽しみな気持ちが膨れていく。
　身支度を整え、暖かいコートを羽織って階下に降りると食堂であおいに声をかけられた。
「あ、圭花ちゃんでかけるの？」
「うん、初日の出を見に行こうと思って」
　ぷるる、とあおいが震えた。
「外、寒いよ～、気を付けて行ってきてね」
「ん、ありがと」

　それじゃあ行ってきます、とトシコ達に軽く手を振り、圭花はシーサイドアウトレット方面に向けて出発する。
（さすがに寒いわね……）
　ふる、と軽く身震いをして、人もまばらになった屋台をきょろきょろと見回した。
　閉店しているところもあるが、何件かはまだ営業しているようだ。
（よかった）
　温かい物がほしい。自販機で熱いコーヒーを買って、屋台でサッとつまめる揚げパスタを注文する。
　――しばらく歩いて時間をつぶし、日の出の時刻が近くなると圭花は遊歩道の方へ向かうことした。
　真っ暗だった空が藍色に変わり、少しずつ少しずつ透き通る水色へと移行していく。
　まだ太陽は、登ってこない。じっと、ただそこに居て日の出を待ち続ける。
　――そう言えば、『海からの初日の出を見るのが初めて』とかいうより、これまではこういうことに興味を持つことがなかったのだ。
　そんなものは、正直『意味がない』『くだらない』と思っていた。日の出がなんなんだ。正月に朝日が昇るのを見て、何になるんだ？　
　そんな思いがぬぐえなかったのだ。それをしたところで、何の意味を持つの？　その気持ちが、どんどん払しょくされていく。
　――今日は、今までと、違う。
（実際、歩いてれば何か……いいことかもだしトラブルかもだけど……があるこの島だから）
　すぅっと、金色の光が地平線から伸びてくるのが解った。――綺麗。
（意味がなさそうだから、くだらなそうだからって、だからなんだって思うのよね）
　意味が『なさそう』くだらな『そう』それは全て思い込みだったのかもしれない。仮に、これは意味が無い事かもしれない。朝日を見たからって、何かが変わるわけでも無し。
　それはそれでいい。
　――今日はいい日だったって思えたら。
（もっとたくさんそう思いたい）
　全体が金色に輝く海を見つめながら、圭花はまばゆく光る今年初めの太陽に心の中でそっと呟く。
　――今年もよろしくね。