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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
FEAR THE FORCE：前哨
尾鎌蛇那伊は、肩で石の扉を押した。
重い。びくともしない。
「尾鎌君……この扉、動かないんじゃ……？」
蛇那伊の隣で佐藤英二は歯を食いしばっている。壁を押している気分だ。まったく開く気配がない。
二人は、蟲と戦ったり滝をくぐったりして道を急いだ。いつしか迷路のようなこの神殿に入り、やがて両開きの扉に行き着いたのである。
「そうかしら……？ アタシは、この向こうに強力なものがいるような気がするのよね……？」
言いながら蛇那伊が足に力を込めると、ずず、と扉が奥へ動いた。
「やった！ 動いたよ！ いけるかもしれない」
英二の顔が輝いた。土埃をかぶり、戦いをくぐり抜けて汚れた顔だったが、とても爽やかなものに蛇那伊の目には映っている。
「そうね、もう少し……！」
もう少し人数がいれば、もっと楽に開いたかもしれない。だが道を戻って、協力してくれる人を探している時間が惜しかった。
「よし、一気に開けるわよ！ 佐藤ちゃん、いい？」
「うん！」
ギリシャ彫刻のような蛇那伊の肩、その筋肉がパンパンに盛り上がる。
同じく英二も歯を食いしばり、首筋に血管が浮かぶほど力を込めた。
扉が開いた。
だがそれは英二たちが意図していたのとは違っていた。内側から、引っ張られるようにしてあっさりと開いたのだ。
当然、二人はもんどり打って部屋の中に転がりこむ結果となる。
だが蛇那伊は受身をとり、豹のようにすっくと立ち上がった。英二に手を貸しながら彼は、彼を見つめている双眸から目を動かさなかった。
「あんたが黒幕……かしらね？」
英二も立ち上がって、眼前に立つ姿を見た。
大きい。背は、二メートルに迫るのではないか。それは、体格のいい蛇那伊より身長があることからも明らかだ。
そしてしなやかな筋肉をしている。惚れ惚れするほど均整の取れた肉体だ。腕も脚も太い。そして、首も。だが無駄に太っているわけではなく、すべてがしっかりと絞り込まれていた。触ってはいないが、きっと腹筋も鉄のように固いことだろう。
他に判ることは、その人物が女性だということくらいだ。
それ以外の情報は極端に少ない。彼女が、黒いラバースーツをぴったりと着込んでいるからだ。顔にもラバーマスクをつけており唇と、氷のような青い瞳以外は覆われている。髪も、後頭部からわずかに、プラチナに近い色素の薄いブロンドをのぞかせているばかりだ。
相手の異様な外見に身をすくませながらも、彼女の目が蛇那伊に向けられていることを幸いとし、英二は部屋の中を見回す。
「野々さん……！」
大女の背後十メートルほどの位置に、ベッドのような石の壇が設けてあり、そこに野々ののこが寝かされているではないか。
制服の上にキャメル色のコートを羽織っただけの姿。眠っているのか、目を閉じたまま動かさない。寝姿は乱れていて、右膝を立てている。
そのとき唐突に、女が言った。
「蟻だね」
外国語訛りの強い口調だ。どこの訛なのかは、英二にははかりかねたが。
「この扉は一人や二人の力では開かない。それを無理に押し入ってくるようなのは、蛮勇と言うのさ。龍の髭を狙う蟻……」
蛇那伊はぴくりと反応した。
引き戸と押し戸では力の入れ方は違うかもしれないが、二人がかりでやっと動く程度の扉を、あの女は一人で易々と開いたというわけだ。怪力の持ち主であるのは疑いがないだろう。
しかし蛇那伊は恐れを見せない。相手も人間、こちらも人間、何を恐れる必要がある？
「蟻の意地、見たい？」
と、紅い唇を歪めて笑った。
「待って」
ところがここで、英二が手を伸ばして蛇那伊を制していた。
「これは僕の、根拠のない予想なんだけど……」
女の、突き刺さるような視線を感じ、英二は膝を震わせていた。蛇を前にしたカエルの心境だ。けれども、恐れを口調に出さずに彼女を見上げる。
「何が目的か知らないけど……野々さんを無事に返してくれるなら、手伝う、或いは手伝える人を説得するよ。それじゃ駄目かな？」
すっと音もなく女が手を伸ばした。
握手するのかと思って英二は手を伸ばしかける。
次の瞬間、女は英二の襟をつかみ、片手で軽く投げ飛ばしたのである。まるで子どもが、縫いぐるみを投げるように無造作に。英二は背中から、部屋の壁に叩きつけられていた。石壁に激突したのだからたまらない。後頭部こそ打たなかったがたちまち息が詰まった。
「交渉の余地なし、ってわけね。いいわ、アタシが相手をしようかしら」
蛇那伊は再び戦闘モードに入る。
「アタシ、尾鎌蛇那伊って言うの。アンタ名前は？」
「……ナターシャ」
お人形さんみたいな名前して――蛇那伊は思う――やってることは、ヒバゴンね！
重い。びくともしない。
「尾鎌君……この扉、動かないんじゃ……？」
蛇那伊の隣で佐藤英二は歯を食いしばっている。壁を押している気分だ。まったく開く気配がない。
二人は、蟲と戦ったり滝をくぐったりして道を急いだ。いつしか迷路のようなこの神殿に入り、やがて両開きの扉に行き着いたのである。
「そうかしら……？ アタシは、この向こうに強力なものがいるような気がするのよね……？」
言いながら蛇那伊が足に力を込めると、ずず、と扉が奥へ動いた。
「やった！ 動いたよ！ いけるかもしれない」
英二の顔が輝いた。土埃をかぶり、戦いをくぐり抜けて汚れた顔だったが、とても爽やかなものに蛇那伊の目には映っている。
「そうね、もう少し……！」
もう少し人数がいれば、もっと楽に開いたかもしれない。だが道を戻って、協力してくれる人を探している時間が惜しかった。
「よし、一気に開けるわよ！ 佐藤ちゃん、いい？」
「うん！」
ギリシャ彫刻のような蛇那伊の肩、その筋肉がパンパンに盛り上がる。
同じく英二も歯を食いしばり、首筋に血管が浮かぶほど力を込めた。
扉が開いた。
だがそれは英二たちが意図していたのとは違っていた。内側から、引っ張られるようにしてあっさりと開いたのだ。
当然、二人はもんどり打って部屋の中に転がりこむ結果となる。
だが蛇那伊は受身をとり、豹のようにすっくと立ち上がった。英二に手を貸しながら彼は、彼を見つめている双眸から目を動かさなかった。
「あんたが黒幕……かしらね？」
英二も立ち上がって、眼前に立つ姿を見た。
大きい。背は、二メートルに迫るのではないか。それは、体格のいい蛇那伊より身長があることからも明らかだ。
そしてしなやかな筋肉をしている。惚れ惚れするほど均整の取れた肉体だ。腕も脚も太い。そして、首も。だが無駄に太っているわけではなく、すべてがしっかりと絞り込まれていた。触ってはいないが、きっと腹筋も鉄のように固いことだろう。
他に判ることは、その人物が女性だということくらいだ。
それ以外の情報は極端に少ない。彼女が、黒いラバースーツをぴったりと着込んでいるからだ。顔にもラバーマスクをつけており唇と、氷のような青い瞳以外は覆われている。髪も、後頭部からわずかに、プラチナに近い色素の薄いブロンドをのぞかせているばかりだ。
相手の異様な外見に身をすくませながらも、彼女の目が蛇那伊に向けられていることを幸いとし、英二は部屋の中を見回す。
「野々さん……！」
大女の背後十メートルほどの位置に、ベッドのような石の壇が設けてあり、そこに野々ののこが寝かされているではないか。
制服の上にキャメル色のコートを羽織っただけの姿。眠っているのか、目を閉じたまま動かさない。寝姿は乱れていて、右膝を立てている。
そのとき唐突に、女が言った。
「蟻だね」
外国語訛りの強い口調だ。どこの訛なのかは、英二にははかりかねたが。
「この扉は一人や二人の力では開かない。それを無理に押し入ってくるようなのは、蛮勇と言うのさ。龍の髭を狙う蟻……」
蛇那伊はぴくりと反応した。
引き戸と押し戸では力の入れ方は違うかもしれないが、二人がかりでやっと動く程度の扉を、あの女は一人で易々と開いたというわけだ。怪力の持ち主であるのは疑いがないだろう。
しかし蛇那伊は恐れを見せない。相手も人間、こちらも人間、何を恐れる必要がある？
「蟻の意地、見たい？」
と、紅い唇を歪めて笑った。
「待って」
ところがここで、英二が手を伸ばして蛇那伊を制していた。
「これは僕の、根拠のない予想なんだけど……」
女の、突き刺さるような視線を感じ、英二は膝を震わせていた。蛇を前にしたカエルの心境だ。けれども、恐れを口調に出さずに彼女を見上げる。
「何が目的か知らないけど……野々さんを無事に返してくれるなら、手伝う、或いは手伝える人を説得するよ。それじゃ駄目かな？」
すっと音もなく女が手を伸ばした。
握手するのかと思って英二は手を伸ばしかける。
次の瞬間、女は英二の襟をつかみ、片手で軽く投げ飛ばしたのである。まるで子どもが、縫いぐるみを投げるように無造作に。英二は背中から、部屋の壁に叩きつけられていた。石壁に激突したのだからたまらない。後頭部こそ打たなかったがたちまち息が詰まった。
「交渉の余地なし、ってわけね。いいわ、アタシが相手をしようかしら」
蛇那伊は再び戦闘モードに入る。
「アタシ、尾鎌蛇那伊って言うの。アンタ名前は？」
「……ナターシャ」
お人形さんみたいな名前して――蛇那伊は思う――やってることは、ヒバゴンね！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年07月18日
- 参加申し込みの期限
-
- 2016年07月25日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年07月25日 11時00分
