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FEAR THE FORCE:前哨
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「両方は無理かあ……」
南戸河蔵人は腕組みしてつぶやいた。
万年青年を自称する彼だが、このときは本当に青年だった。いやむしろ少年と呼ぶ方が近い。今だって若いけれど、このときはもっともっと若くて、未熟だった。
未熟だったから、可能性に満ちていた。
真夏、クーラーのない部屋、窓は全開にしているが風はぴくりとも吹いておらず、座っているだけで汗がにじむほど強烈に蒸し暑い。すぐ近くには高速道路があり、ひっきりなしにトラックが往き来しており、これに分厚い蝉の声が混じり合ってすさまじいばかりの不協和音オーケストラを奏でている。けれど当時、蔵人の創造欲求は、この程度の艱難などものともせぬほど強靱だった。暑さもうるささも感じない。
若い蔵人は同時に、二重写しのように現在の蔵人の目を持っている。『現在』の声が告げた。
――今の自分からすれば、羨ましいほどのタフネスだよねえ。
若い蔵人の頭の中にはひとつの物語があった。ぼやっとしたものではなく、しっかりと骨格と血肉を持った物語だ。だがまだ、物語は蔵人の頭の中にとどまっている。これを外に出す……つまり、書く作業が必要であった。
このとき、蔵人は机に向かい、いよいよ物語の最初の一行を書き始めようとしていた。
書き始めたらもう止まらないという自信がある。一段落書くたびに文章に詰まって、腕組みして途方に暮れるようになるのはもっと後年のことだ。まだ荒削りながら、当時の蔵人には勢いがあった。
だからこそ悩んでいるのだ。
蔵人の前に二つの道がある。
いずれも公募の小説賞である。
ひとつは、いわゆるジュブナイル小説の公募。ハイティーンから大学生くらいの読者を想定したものだ。だが最近は大人の読者も多い。今後の展開が望めるジャンルといえよう。
もうひとつは、もっと読者層が幼いもの、具体的にいうと絵本の原作だ。
蔵人の頭の中にある物語、仮に『闇の時代』とタイトルを付けたものはどちらにも応用できるものであった。小説にしても、絵本にしても、入賞するという自信が彼にはあった。若さゆえの根拠のない自信ではある。けれど若いからこそ、その自信にかけられる情熱もあるる。
残念ながら蔵人には、両方の作品を仕上げている時間はなさそうだった。
どちらか選ばなければならない。
小説か、絵本か。
なんとなく、この選択が将来の道筋を決めるような気がしていた。
――実際、そうだったかもね。処女作が作家の方向性を決めるとはよく言ったものだ。
今の『作家・南戸河蔵人』は、絵本原作で入賞を取ったことからはじまっている。小説家としてスタートを切っていたら、どんな運命が待ち受けていただろうか。
――闇の時代……結局、そのメインテーマを絵本にしたんだよね。残った部分は設定を変えて別のお話にしたけど……小説としてきちんと完成させてやりたかったなぁ……。
若い蔵人が小説を選べば、その無念は果たせるのだ。『闇の時代』という作品の、世の中に出ずじまいだった姿が全貌をあらわすことになるのだ。
心は決まった。
蔵人はついに執筆をはじめている。
だがこのときも蔵人は……絵本を選んだのだった。
――成功も失敗も、喜びも悲しみも、挑戦も諦めもすべてが私。
そのすべてを背負って、今の蔵人がいる。
「……ッ」
唐突に夢から醒めた。蔵人はもう、自信家で夢想家で荒削りだった頃の彼ではなかった。
寂しくは思うが、なにか失ったようには思わなかった。むしろ得たもののほうが大きい、そんな気がした。
――バラの香だろうか、いや、ローズマリー……?
妙な香りがする。落ち着く香だが、こんなところでアロマキャンドルでも点けている人間がいるとは思えなかった。
何があったのか、まだ頭の中の整理がつかない。洞窟に入って、気味の悪い昆虫たちを追い払ったり退治したりして進んでいるうち、あまりにも意外なことに泰葉と出会って、行動を共に……。
「そうだ! 泰葉さん!」
なんということだ。蔵人は臍をかんだ。夢の世界に惑って、泰葉のことを失念していた。
振り返って彼は、泰葉が地べたに座り込んでいることを確認した。悄然と、作って数日経つ折り紙細工のようになっているものの、怪我をしている様子はない。
安堵するもつかの間、彼女が口元に手を当てていることに蔵人は気がつく。
泰葉は泣いていた。声を洩らすまいとしているのだが、嗚咽を隠すことができていない
――まさか。
直感的にだが蔵人は、泰葉も自分と同様、過去のある場面に迷い込んでいたのだと考えた。なるほどメールにあった
『過去と向かい合う』
とはこのことか。泰葉にとっては、辛い過去だったのだろうか……?
「泰葉さん、大丈夫……?」
彼は手をさしのべるも、泰葉は「やめて!」と強い口調とともにこれを払いのけている。
「私なんか、生きている価値がない……」
そんなことまで言っているではないか。何を見たのだろう。
ライトの光が、蔵人と泰葉を照らし出した。
「そこに誰かいるのか」
声がする。
蔵人は振り向いて目を細めた。
「悪いが少々、まぶしいな」
おっと、と言う声とともに、灯りの焦点が外れた。
「失礼しました」
そこにいたのは高校生くらいの少年だ。なかなか礼儀正しいようで、すっくと足を揃えてぺこりと頭を下げている。
「何度か襲われた『敵』かと思ったもので」
少年には連れがあった。彼よりは年長のようだが若い女性だ。
「あれっ、あの人……」
少年の連れが声を上げた。
「泰葉さん……だよね!?」
と豊田華露蘿は目を丸くして、「大丈夫、知り合いだよ」と優木遥斗に告げた。
「先日のキャバ……」
までに言いかけて、華露蘿はげふんげふんと空咳する。
「……いや、業務研修で会った人」
泰葉さんとはそれ以前にも――と言いかけて、えっ、と華露蘿は口ごもった。
それ以前?
どうしてそんなことを言いたくなったのだろう? キャバクラ『プロムナード』で挨拶したのが初対面ではなかったか。
このとき遥斗は華露蘿に目を向けていたが、だしぬけに竹刀の鍔に手を伸ばし、やや腰を落として振り返った。目つきが鋭い。
「どうしたの?」
「下がっていて下さい」
背後の暗闇を遥斗は睨む。
殺気、というより正しくは、剣の気配――自分と似たものを感じる。それも手練れだ。敵でなければいいのだが――。
闇を割るようにして、ぬっと金属の光沢が姿を見せた。
剣の鍔に、ライトの光が反射した輝きだ。
「友人を探しているだけだ。敵意はない」
御剣刀は、その背に宮杜ほのかをかばいつつ呼びかける。腰には刃引き刀を提げていた。
「友人?」
遥斗はまだ警戒を解かない。華露蘿の、そして、その奥にいるふたりの大人の安全に対し、責任を負わなければという使命感がある。
――俺一人で三人を護るには……『風の籠手』を使うほかないだろうな。
できれば、この能力はあまり人前で使いたくないのだが。
とはいえ相手も剣士だと遥斗は判断した。だがどうやら竹刀ではなく、本当の剣を佩いているようである。仮にそれが模造刀であったとしても、戦力として不利は否めない。
無茶はしないのが遥斗の方針だが、相手の出方次第では、躊躇するまい。
刀は、鯉口を切って間合いを詰めた。そして彼は、張りのある声でこう告げたのである。
「名前は、野々ののこと言う」
「野々ののこ……」
ふう、と遥斗は息を吐いた。
「とすると、同じ目的らしいな」
刀も、剣から手を離した。信頼していい相手と判断したのだ。
「大丈夫……なのかな?」
ほのかが小声で問うてくるので、刀は軽くうなずいた。
「そうらしい。ところで」
おや、と言うように一秒ほど黙って、
「妙な香がしないか……?」
と告げたとき、刀は自分が、見知らぬ場所にいることに気がついた。
いや、見知らぬ場所ではない。
――知っている。
この場所、この時間を刀は一度体験している。そしてまた、同じ瞬間にいる。
陰惨なる歌劇は今、狂気のクライマックスに達しようとしていた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
バトル
神話・伝説
定員
20人
参加キャラクター数
21人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年07月18日
参加申し込みの期限
2016年07月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年07月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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