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FEAR THE FORCE:前哨
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さゆると同様、ローズマリーの芳の中に藤堂静はいる。
――ローズマリーを使ったカクテルといえば……ジントニックにステアするというのがあるな。オレンジリキュールとレモンピールで作るのも、上品なテイストで好まれる。
ぼんやりとそんなことを考えてしまうのも、ある種の職業病だろうか。
いつの間にか静はバーカウンターに立っていた。
バーカウンターがこんな場所にあるとはとても思えないのだが……。
――そうか、俺はアムリタのカクテルを作りに来たんだったか。
やがて彼の意識は混濁していく。
病院の廊下は、酷く冷たい感じがする。
沼みたいな色をしたリノリウムの床のせいだろうか。
しじゅう漂う消毒液の匂いのせいだろうか。
それとも、死を見慣れすぎた医師や看護師たちの、無感動な目の色のせいだろうか。
学ランのポケットに乱暴に手を突っ込み、いくらか背を丸めて静は廊下を歩いていた。
踵を潰して履いた運動靴が、パカパカと不平の声を上げている。
事務員らしき男が咎めるような眼をしてきたが、「文句があるか」と視線で返す。男は慌てて目を逸らせた。
そうだ、文句があるか。でかい声で言ってやりたかった。
――母は父の妻ではなく愛人で、自分はいわゆる私生児という奴だ。
と。
私生児に厳しい差別のあるこの国、誕生のその瞬間に、『生まれるべきではなかった人間』と見えない烙印を押してくる美しいこの日本で、それでも静が道を大きく外れることなく育つことができたのは、気丈な母親が彼を護っていてくれたからだ。
――少なくとも、ガキの時分まではな。
父が母に会おうとしなくなってから……ちょうど、静が中学に上がる頃から状況は変わった。
母の『世界』は、現実からずれはじめていた。
静のことを父と取り違えること数度、最初は単なる呼び間違いで済んでいたが、やがて静が「母さん」と呼ぶと取り乱し、ひたすら泣くまでに母親の『世界』は現実から隔絶した。それが狂気だと誰がいえよう。彼の母は、自分なりの幸せを見出しただけなのだ。
静の容貌も、声も、父親によく似ていたのである。それこそ、喜劇的なまでに。
やがて静は、母の泣き顔を見たくなくて父親を演じるようになった。
それも、病に倒れた母が亡くなったその日まで。
――笑顔で父親の名前を呟いて逝ったあのときまで。
今日がその日であることを静は知っている。
いま彼は、当時の静であって同時に、現在の静でもある。だから知っているのだ。
いつも通りの見舞いのはずが、打ち切り漫画のように唐突な幕切れとなったあの日が……今日だと。
病室の入口をくぐると、一番奥のベッドに母親がいた。半身を起こして窓の外を眺めている。
彼女は気がついたようだ。こちらを見て、
「来てくれた」
と、童女のように無邪気に微笑んだ。そうして、静ではなく、静の(遺伝子上の)父親の名を呼んだのだった。
だけど静は、冷たい廊下を歩く短い時間で心を決めていた。
ありったけの愛情を込めて、笑って、こう呼んだ。
「母さん」
それはあの日あのとき、言えなかった言葉だった。
まさかこれが最後になると思わず、あの日静は、内心面倒に思いながら父親を演じた。しかしその晩、母親は容態が急変し、翌朝を迎えることができなかったのである。
だが今回は違う。笑みを作りながらも、静は唇の端を噛みしめている。言ってしまった。
――覚悟はしている。
死ぬ間際に母を悲しませるかもしれない。泣かせるかもしれない。
それでも、だ。
――それでも、俺は母さんの寂しさや悲しさを受け止めてやらなきゃいけない。偽りの父親……恋人ではなく、息子として。
かつて、母は救われないまま逝った。
それが事実だ。変えられないことくらい知っている。
けれどもう一度、あの場に立ったのなら、逃げちゃいけない。
――母さんの中で俺が消えてしまっていても、母さんは俺の母さんだったと口に出して伝えたかったんだ。
「母さん……お休み」
握りしめた両の拳が震えている。肩にまでその振動が伝わっている。
静は必死で堪えていた。笑顔が乱れ、目尻から涙がこぼれ落ちないように。
崩壊を覚悟した静だが、意に反してそれは訪れなかった。
母親は静の笑顔を見て、ふっと、つられたように笑みを浮かべたのだった。
「おや、もうそんな時間なんだね。……もう眠らないとね」
甘えるような言葉使いではない。続けて彼女は、
「お休み、静」
と言った。
そして枕に頭を乗せ、シーツを引き上げたのである。
――咽せる。
静は咳き込んだ。硫黄臭よりは随分マシだが、あまり長く、ローズマリーの香に包まれているのも楽じゃない。在米時代の友人に、やたらお香を焚きしめたがるやつがいたが、そいつの部屋に入ったときの気分に似ている。
換気しようと窓を探して、ようやく静は、ここが洞窟であることを思い出していた。
「夢か……?」
言ってしまってから、それが三文芝居の登場人物みたいな台詞であると気づいて、静は口元にしわをよせてしまった。
「どうかしたの?」
途上で知りあった、髪のように白い顔色をした女子高生……さゆるがこちらを見ている。 彼女は、濡れた服を脱ぎ、かわりに静の与えたジャケットとコートを羽織っていた。静は必然的にワイシャツ一枚だが、幸いそれほど寒さは感じない。
「夢でも見てた?」
と言うさゆるの顔を見て、静は落ち着きを取り戻した。
「そっちも、見ていたようだな」
さゆるの返事を待たず、
「煙草、いいか?」
シャツの胸ポケットから紙巻きを取り出し、彼女がうなずくのを見てからマッチで火をつける。
深く吸い込んでから細く煙を吐いた。おかげで頭の中の切り替えは完了したと思う。
腕時計で確認したところ、数分ほどしか経っていない。長くて短い夢だったわけだ。
「過去も今も何一つ変わっちゃいねぇ」
と告げると、さゆるが顔を上げた。彼女は何も言わないが、うっすら浮かんだ表情を見ると、彼女が近い気持ちであるのは察しがついた。
――だが、ケジメはつけた、俺ん中でな。
「変わることがあるとすれば、それはこれからさ」
こう呼びかけたが、高校生とは思えないほど落ち着いた少女は、かすかに目を細めただけだった。だが、いちいち騒がないところになんだか自分と似たものを感じて、静はそう悪い気はしないのだった。
この洞窟、どこまで行けるのかはわからない。さゆるの身の安全を確保すべきとも思い、静は帰還を提案した。
さゆるは、ええ、と言葉少なに応じた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
バトル
神話・伝説
定員
20人
参加キャラクター数
21人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年07月18日
参加申し込みの期限
2016年07月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年07月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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