その頃。少し離れた場所では先に来ていた舞華（既にマスクとジャケットはキャストオフしている）と合流していそいそと準備をしている旅鴉 月詠の姿があった。因みに、あのおどろおどろしい格好のデザインのデザイン協力者は、彼女である。そして衣装製作は舞華の姉である。

　――なんという才能の無駄遣い！　コワイ！



（効果は覿面だったようだね）
　月詠は、ねこったーに『【速報】徹夜絶対殺すマン現る』という文字を見てくすり、と笑う。後ほど寝子高の友達がテンション高めに「これマジ見たかったのだ！」と叫ぶのだが、まぁ、気にしないで置こう。
　そんな彼女が今回用意したのは、もこもことしたぬいぐるみ。その顔は、ちょっとふてぶてしい雰囲気を宿しているような気がする。愛らしい作画の割に結構ハードな作風で有名な『魔法少女ナツメ★マギカ』に登場する妖精っぽい生き物（その正体が案外物語のえげつなさに拍車をかけている）、くまべぇである。

（ココでネコネコ動画をイメージしてください）

冬のネコミケ：『ウィッチクラフト』お品書き

『くまべぇぬいぐるみ』（もちろん手縫い）
基本の立ちから、うつぶせ、仰向けゴロゴロ、寝そべり頬杖した（見た目には）可愛いやつと数種類ご用意しております。
そのままディスプレイに使うなり、クッションなりに使ってください
うつぶせタイプは平べったくしてるから頬杖に最適です。

『くまべぇ寝そべりクッション』
ぬいぐるみより大きく平べったい作りになっており、こちらは敷物にでもしてください。因みに、押すと『ブー！』と鳴るタイプもあります。

『抱きまくら（？）カバー』
残念！ボクだよ！　（ｂｙくまべぇ）
抱きまくらサイズとかなり大きいサイズがあります。
スリーパーホールドなり、ジャイアントスイングなり、サンドバッグなりしてください。

『キーホルダー』
こっちはなつめやミマ先輩もあります。
くまべぇはネコのサンドバッグにでもしてください。

『イラスト集』
ぬいぐるみやカバーを買うとおまけでついてきます。
水着とかパジャマとかで萌えを狙ってます。
おまけです、おまけ（抱き合わせ販売）

以上数点となります。当日会場でお会いしましょう！

（画面をネコミケ会場に戻してください）

　舞華がネコネコ動画に上げた動画で既に色々と宣伝していたが、その時点での書き込みがとても面白い事になっていた。主にくまべぇぬいぐるみ関連に関してだ。「容赦ねぇ」だの『ナツメ★マギカ』本編で出た台詞だのでとても賑やかになっている。
（反応は上々。とても楽しみだね）
　月詠はくすっ、と笑うと陳列したくまべぇのぬいぐるみを指で突付く。もふっとした感触に頷きながら一般参加者が来る時間を楽しみにしていた。

（さぁ、がんばるよー♪）
　ポニーテールを揺らして気合を入れているのは響 タルト。彼女は今回、サークルに製作した本を数種委託し、自身も売り子として参加する。その為準備に追われていたがとても生き生きしていた。



　因みに新作は『クリスマスの猫たち』という三冊組みでBL、GL、NLに対応していると言う親切設計である。何気にＲ－１８の眼鏡さんコピー誌も準備しているが気にしてはいけない。
「それにしても今の時点でも熱気があるねっ。確かに朝は寒いけど、がちがち～って震えるほどじゃないかも」
　タルトは目を輝かせてそう言うと、ちらり、と時計を見た。会場時間まではまだ１時間以上もある。一般参加として並んでいる人の方が寒いだろうな、と気になったのは、その中に友達もいるのではないか、と思ったからだった。

＊　＊　＊　＊　＊　＊

（思ったよりも、寒くありませんねぇ）
　そんな事を思っていたのは、丁度朝から並んでいた椿 美咲紀である。彼女は今回、新聞部の取材としてネコミケにやってきている……らしいが、本当にそれだけかと問いたい。



（イベントある所、寝子高新聞部ありなのですっ！　決して薄い本を色々と買い漁りたいとか、そーいう事だけではないのです！　決して！）
　ポニーテールを揺らして気合を入れる美咲紀は、許可をもらってから周辺の様子や並んでいる様子などを撮影している。
（前回は神魂のせいで買い物どころじゃなかったよね。本当に……。でも、今回は思いっきり遊んじゃおう！）
　そう意気込んでいた北原 みゆきは防寒具を着込み、カイロも持って開場を待っていた。美咲紀とは偶然にも隣になっていたので２人はどんな物があるのか、寝子高の友達が出している所は外せない、などという話で盛り上がってもいたのだ。因みに、美咲紀はみゆきにも取材済みである。
「取材するのはどんなところですか？」
「寝子高の人達が出している同人ブースを中心に取材します。もちろん、許可をもらいますけどねっ！　開場になったらまずは運営さんのいる所に行って取材許可をもらうのですっ！」
　張り切っている様子にみゆきも「おお～」と感嘆の息を漏らす。美咲紀はぐっ、と手を握り締めて高らかに宣言した。
「もちろん、チェック済みの新刊もげっとするのですよっ」
「うふふ、たのしみだね」
　みゆきはくすくす笑いながらも準備した差し入れの事を思い出す。彼女は寒さに負けじと並ぶ人々を見、僅かに頷いた。
（……夏は暑く冬は極寒というネコミケの現実……。そう、聖戦士たちの戦いは常に危険と隣り合わせなのであると……）
　どこか真面目な顔で時計を見ると、開場時間まで後わずかである。２人はその時間をも待ち遠しく思いつつも、わくわくしていた。

　そして、いよいよ開場の時間になり、一般参加の人々が、喜び勇んで入ってくる。さぁ、ここからがネコミケ冬の陣の本番だ。果たして、彼らはお目当ての物を購入する事が出来るだろうか……？