【ネコミケ冬】悪質カメコを撃退せよ！　戦う☆コスプレイヤー｜リアクション

【ネコミケ冬】悪質カメコを撃退せよ！　戦う☆コスプレイヤー

「イーリャ、何かあったらすぐ皆に頼るんだよ！　僕も協力するから！」

　ロベルトの心強い言葉にイリヤが——友人を守るための完全に使命を忘れて——顔を綻ばせていた時、タルトがテンションを上げた。
「わあっ、あのマホラク合わせ（＊同じ作品のキャラクターのコスプレで揃える事）かっこいい！」

「ぴあああああ！！」

　突然陽毬が発狂したような、人外の悲鳴を上げた。
　何事！？　と皆が彼女を見ると、陽毬は興奮極まって両手をバタバタさせている。この一瞬に一体何があったと言うのだろう。困惑する仲間を置き去りに、陽毬は叫んでいた。
「ベル・ダン！　本物さんっ！？　めっちゃクオリティ高いひいいうっそ待ってちょっと待って待って待って！　ヤバい写真あああスマホ楽屋っ！　もーなんで今日仕事！？」
　陽毬が見つめている一点を注視してみると、陽毬と同じような色の衣装を着たコスプレイヤーが立っていた。
　数日前に魔法軍学校の落第王子の既刊を読了したばかりのイリヤは、ははあと頷いている。
「あの人たち、マホラクのコスプレですね。
　青緑の短いジャケットの男の人が、陽毬さんが着ているミレーラ姫の血の繋がったお兄さんで、第二王子のベルナルド。
　隣のもっと色の濃い軍服は、僕の着ている主人公レイの親友で、男の方がダン、女の方がキャシー。
　それから向こうの赤い服に銀髪の女の人が、悪役の幹部の一人のブリジッタ——」
　イリヤが刀たちへ説明する間に陽毬は「滾る！」「死ぬ！」「萌え殺される！」と独特の叫びをぶっ続けで連呼している。おまけに普段の彼女のおっとりした喋り方から、すっかりかけ離れ上ずった早口だ。
「分かる、ベルナルドがカッコイイ」
　タルトが同意すると、陽毬は興奮したまま「でしょでしょでしょ！？　やばいベル兄様尊い、ふおおおなんなのっ！？　ダンもめっちゃイケメンさんだし、キャシーもブリジッタもかわいい！　　神！？　神々！？」と一気にまくし立てる。
　さてその神々が、オリュンポス山を下山して大地に降り立った。と言うかこちらへやってきた。マホラクの作中よろしく、主人公の衣装を纏ったイリヤの前で口を開いたのは眼鏡のダンだ。
「悪い待たせた。服が複雑で、着るのにちょっと手間取って」
　

　つるを押し上げて微笑む顔を注視して、陽毬はぴたりと動きを止める。
「…………え？　……誉くん！？」
「ああ、大道寺さんに衣装を借りたんだ。試作品がどうとかって——」
「ええ。コセティオさんにお願いして、お借りしてきましたの」
「コセティオって何？」双子が説明を求めて英二とタルトを見ると、キャシーの薄茶色のツインテールをゆらして振り返った檜扇舞華が、丁寧に説明してくれた。
「コスプレ衣装やグッズを、公式の許可を得て販売する店ですわ。発売予定のマホラクの衣装の試作品を、大道寺さんが今回のためにお借りしたのです。
　——状況は把握しております。どうぞ、私をお使いくださいませ」
　舞華が丁寧に頭を下げ終えると、紅緒が銀髪のブリジッタの前に立った。
「３組の斉田珠喪さんよ」
「え、え！？　待って、皆知り合い？　じゃあベル兄様は！？」
　陽毬が恐る恐る振り返ると、先にタルトが気づいたようだ。
「え、ぶ、ブドー先輩？！　すごいよ、これは妄想が止まらないよ！」
「嘘っ会長さん！？」
「はぁい☆」どうやら最後に残ったベルナルドは志波武道だったようだ。いつものように懐っこく破顔して、タルトと陽毬に手を振る。
「カッコイイキャラでも色モノでも悪役でもドントコイって感じで、紅緒ちゃんが似合うって思ったものをお願いしたらコレになったんだー」
「私、ベルナルドは『親しげだが奇妙に威圧感のある切れ長のつり目の男』と描写していますの。
　威圧感は兎も角、目元はあっているし、貴方は水泳をしているから均整が取れていて、この衣装が似合いそうだと——」
　紅緒の返事の途中で、陽毬の両手が武道の手を取り、そして熱い瞳で武道を見つめた。
「調教してください違った、結婚してください、
　『ダン君と』！！」

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