それでは追試を始めます　～それぞれの喜怒哀楽～｜リアクション

それでは追試を始めます　～それぞれの喜怒哀楽～

●御剣刀の追試を始めます

　二教科、か。と、刀はそっと溜息を吐く。今回はテスト勉強として先生や友人に色々と教えてもらったりと、かなり対策をしてきていたのだ。なのに、二教科だけ０点を取ってしまった。これには勉強を教えてくれた友人にも悲しい顔をされてしまったのが痛い。
　だから、なんとしてもこの追試で補習を免れ、クリスマスを友人である女の子達と過ごす！　いささか不純な動機ではあったが、刀は配られたテスト用紙を受け取った。
　追試の説明を受けつつ、これにも慣れてきたなと刀は思う。奇妙な既視感のようにも感じたけれど、かれこれ追試も四回目なのだ。慣れていいことではないのだけれど、慣れもするというものだ。
　まあ、前回よりも０点の数は減っているし、全体的に見れば点数も段々良くなってきている。次は追試を受けずに済むように頑張ろう、そう前向きに考えながら国語のテスト用紙に向かった。
　漢字の読み書きなど、まずは点数稼ぎ用のありがたい問題に続き、文章問題へと解き進めていく。
　期末テストの答案を見返し、繰り返し覚えた部分などが出てきてくれて刀は心の中で軽いガッツポーズを決めると同時に、何故か問題が面白くて仕方ないという感情に襲われた。

「ぶ、ふふ……ッ」

　肩を震わせ、必死で笑いを堪える姿は随分と面白い百面相のようになっていたが、追試中ということで皆テストに集中しているせいか、幸いにして誰かに訝しげな目で見られることがなかったのが唯一の救いだろうか。
　何故こんなにも面白い問題を入れてくるのか、追試を作った先生は誰だよと刀は心の中で突っ込みを入れ続ける。
　もちろん、これも普通の問題文なのだが神魂の影響とは恐ろしいもので、一度笑いの渦に飲み込まれるともうダメだった。
　けれど、追試中に声を上げて笑ってしまっては他の生徒の迷惑になってしまうし、何より問題を読んで笑っている暇があるなら答えを考えるべきだと刀はその精神でなんとか踏み止まる。
　なんとか国語を終わらせて、音楽のテスト用紙を捲る。そこでも、発作のような笑いに襲われて、ようやく刀は何かがおかしいと気が付いた。

「音楽の問題まで面白いなんて、さすがにおかしいし笑いすぎだろ俺！　これ、もしかして神魂か……？」

　勘弁してくれよと、刀は机に突っ伏しそうになるのをギリギリで持ち堪える。
　笑いに耐え切れなくなるのが先か、問題を解き終わるのが先か……ある意味極限状態だなと刀は思う。もし負けてしまったら問題を解かずに笑い転げ続けることになってしまうだろう。

　「でもヤバい、すげー楽しい」

　軽い躁状態とでもいうのだろうか。

「耐えろ、俺はこいつを乗り越えてクリスマスを……大晦日を……正月を楽しく過ごすんだ……！」

　そう、友人である女の子達と！！
　もうここまでくると、彼を支えているのはその思いだけだったのかもしれない。問題を読む度に襲ってくる笑いを押し殺し、解答欄を必死と書いて必ず殺す状態になりながら、埋めていくのであった。

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