ブラームスはお好き？｜リアクション

ブラームスはお好き？

「ワタシ、最近は『動物の謝肉祭』より『白鳥』を練習していたのヨ。もしよかったら、皆に聴いてもらいたいワ！」
　色々な演奏を聴いて、御薗井Ｅセレッソは自分もチェロを弾いてみたくなった。
「とってもキレイな曲だけど、ちゃんと弾けるカシラ……？指摘や感想があったら教えてネ！」
　そう言って、セレッソはエンドピンの位置を調整し、チェロを構えた。
　サン・サーンス『動物の謝肉祭』より『白鳥』。サン・サーンスの代表作であり、世界中のチェロ奏者の最も大事なレパートリーの一つだ。優雅で上品なメロディーは、誰もが聴いたことがある。
　セレッソの音は、とても伸びやかで大らかだった。技術的にはアマチュアの域を出なくとも、型にはまることなく、彼女の個性をよく表していた。
　演奏後の拍手に愛想笑いを返しながら、セレッソは楽しそうに言った。
「ワタシ、技術は全然なんだけど……演奏を聞いているときは、奏者がどう思っているのか、何を描いているのかを考えたり、話したり、想うのが大好きナノ！えへへ―――音楽はとても楽しいワ！」
　そうして笑っているだけで、周囲も自然と楽しくなってくる。
（ちょっと、演奏したくなってきました）
　津島直治も、つられて手を挙げた。
「マレットは持参してるから、可能なら一曲、弾いていきたいな」
　もちろん皆大歓迎だ。直治が音楽会館の備品のグロッケンシュピールを出しに行ったタイミングで、誰かのお腹がぐぅ、と鳴った。セレッソが舌を出して照れ笑いした。
「頑張ったらお腹すいちゃったワ……えへへ。ねえねえこのお菓子、ワタシも食べていいカシラ？」
「どうぞ、遠慮しないで」
　花厳望春が手製の音符型クッキーを差し出した。
「俺のクッキーは皆に喜んでもらえたかな？」
　美味しそうにクッキーを頬張るセレッソたちを見て、望春は思う。
「お菓子作りもオーボエの演奏も、どっちも上手になれるようもっともっと練習しようっと！」