期末テストだよ！中学生諸君、全員集合！！＜物語編＞｜リアクション

期末テストだよ！中学生諸君、全員集合！！＜物語編＞

●テスト当日【４日目】

＜数学＞
（ハア、快感……）
　得意の数学の問題に向き合いながら、２－４の三夜虹司は恍惚とした表情を浮かべていた。全ての事項が何の迷いもなくあるべき場所に当てはまるからなのだろうか。なぜか公式を解いていると落ち着き、頭がすっきりする。
　テスト時間中にも拘わらず、虹司はそのすっきりした頭でついつい数学とは全く関係ない事を考え始めた。最近いつもそうなのだ。何をしていてもひょんとした時にある人物が心に浮かんできてしまうのだ。
（今ごろ、ひまりさんもテスト受けてるんだろうな）
　そう。この前初めて喋る事が出来た、八葉ひまりである。
　虹司は横目でクラスメートでありひまりの双子の妹、八葉るちるの姿を捉える。ひまりには似ていないその妹の姿を通して虹司はそこにやはり彼女の姿を見てしまう。姉妹で勉強とかするのかな。どう勉強したか後でるちるに聞いてみようかな。勉強してるひまりさんも、きっと可愛いんだろうな……。
　そんな想像だけで幸福感に包まれる自分がいる。虹司は幸せな気持ちで数学のテストを終えた。

＜体育＞
　虹司は体育の問題用紙を見て、顔をしかめた。
　これ、範囲にあったっけか？　体育は苦手なんだよ。何か俺だけを狙い撃ちしてるような問題だな、これ。
　目を細めて睨みつけても、問題文は変わらず、頭のひらめきが増すこともない。それでもとりあえず用紙をずっと見つめていると、段々文字がぼやけてくる。
　……だー、駄目だ眠くなってきた。テストの文字が踊ってるぞ。夢か？　これ……。
　虹司の視界が徐々に暗転していく。

　そして虹司は確信した。これは明らかに、夢だ。
　なぜなら自分が突然野球部の格好をして試合に出て、尚且つチアリーディングに応援されてるからだ。
　そうか夢かとチアリーダーを見てみると。
　―――ブホッ！　ひまりさん？！？
　虹司は勢いよく鼻血を吹いた。なぜかひまりが元気よく虹司の応援をしている。うん、応援も嬉しいが、それより何より。
　ノースリーブが！　ヘソチラが！　ミニスカが！
　全部どストライクじゃないですかー！　やだー！　俺選手スリーアウト！
　虹司は鼻血をキラキラと振りまきながら、華麗に空振りをして倒れ込む。どくどくと止まらない鼻血に顔を浸しながらも、虹司は笑顔だった。
（死ぬ前に、いい物見れて良かった……）

　そして気付くと虹司は保健室にいた。
（そうか、生きながらえたか）
　まだ出る鼻血を押さえながら、目の前の保健の先生を見る。見る。しっかりと見る。そこには。
　―――また、ひまりさん？！　しかも白衣！
　ボタボタ垂れている虹司の鼻血を気にもせずに、白衣のひまりは笑みを浮かべ虹司に近付く。
　え？　一緒に保健体育を勉強？　ど、どの範囲でしょうか？　せ、生命の神秘？　待って下さい心の準備が……って、ち、近っ！　白衣の胸元が！　ああ、ひまり先生、足を組み直すとかぁっ！
　―――ブホォッ！！
　完全に致死量の鼻血を吹き上げ、虹司の世界はひまりの笑顔を最後の記憶に、ブラックアウトした。

　―――はっ。
　虹司は目覚めた。周囲を見回せば、クラスメイトが黙々とテストを受けている。
（そうか、やっぱ夢か……）
　もんの凄い夢を見てしまった。これで俺はあと１０年戦える……って、そういえば、俺、テスト受けてなかったか？　そんで、殆ど解いてなかったんじゃないか？
　虹司が慌てて問題用紙を手に取った時。
　―――キーンコーンカーンコーン。
　無情にもテスト終了のチャイムが鳴り響いた。
「ほい、終わりだぞー。……三夜、お前テストでなに興奮したんだ？」
　担任の指摘にへ？　と虹司が思った時。
　たらりと鼻血が１滴、問題用紙に垂れた。