期末テストだよ！中学生諸君、全員集合！！＜物語編＞｜リアクション

期末テストだよ！中学生諸君、全員集合！！＜物語編＞

●テスト当日【１日目】

＜英語＞
　テストの始まる直前の教室というのは不思議な物だ。いつもあれだけ騒がしいのに、この時ばかりは本当に同じクラスメイト達なのかと疑いたくなるほど、教室内は真剣な顔と静けさに包まれる。そしてそれがまた否が応でも学生の本分は勉学であり、自分達はそれから逃れられないのだと実感させられるのだ。

　１－３の教室にも担任がテストを持って入ってきて、教室内は静まりかえった。そんな中十朱此方は小さく小さく溜息をついた。小学校ではけっして味わう事のなかったこの雰囲気には、どうしても緊張してしまう。ましてや、苦手とする英語が最初のテスト科目なのだ。
　列の先頭から問題用紙が回ってくる。１部を取り静かに後ろに回す。この用紙で、自分が２学期どう勉強したのかが試されてしまうのだ。復習した所が出題されるだろうか。漏れはないだろうか。ドキドキしながら色々な心配が頭を駆け巡る。此方は目をつぶって自分に言い聞かせる。大丈夫。苦手だからこそ、あたしはちゃんと勉強したもの。だから、大丈夫。後は頑張るだけよ。
　先生は幾つか簡単な注意事項を生徒に伝え、一呼吸置くと凜と言った。
「では、始め！」
　クラスメイト全員が、戦士の表情で一斉に用紙を表に返した。

　まず、名前。
　中学生が自分の名前と真正面から向き合うなんて、テストか習字くらいではないだろうか。此方は自分を落ち着かせるように、丁寧に解答用紙に氏名を記入する。
　１問目。初っ端からこけると気持ちが折れてしまう気がする。祈るように問題を見ると、単語を記入するものだった。
（よかった、これならなんとか大丈夫）
　ほっとして解答用紙に記入していく。
　リズム良く１問目を終え、２問目を見て思わずうっとなる。接続詞。こういうのは苦手なのよね。うーんと唸りつつとりあえず書けるものだけ埋めていく。わからない問題は後。手を止めない。時間は有限、Time is moneyよ。
　次の問題を見て此方はついにきたと心の中で呟いた。長文翻訳だ。このセンテンスの黒い固まりを見るだけで憂鬱になるが、わかる単語を手掛かりに全体文を翻訳していく。焦っちゃダメ。敵は強大に見えるけど、バラしちゃえば小物の集まりなんだから。
　恐らく今回の英語ではここが自分にとって山場であろう。此方は今までの知識を総動員して、この山を登っていく。エベレストだって一歩がなくては進まない。
　こ、これでなんとかと此方は翻訳を終える。それでも難所を越えたに過ぎない。頂きを目指し、此方はその後の問題も解いていった。
　一通り解き終えると、わからず保留にしていた解答欄にも空白よりましだとそれらしい答えを記入していく。
　そして登頂終了を知らせるチャイムが教室に鳴り響いた。

　解答用紙が集められ１時間目のテストが終わった。
　教室が溜息とざわめきに包まれる中、此方は深く息をついた。
　頑張った。頑張りはした。―――けれど結果は返ってくるまでわからない。
　心に薄い不安の膜が覆い、此方は周囲を見回してみた。スッキリした表情の人、疲れたような表情の人、同じクラスメイトでもその反応は様々だ。
　何だか、此方はほっとした気持ちになる。みんな、同じなのだ。目に見えない高さの山に怯え、挑み、進んでいく。その景色は様々であろう。けれど、越えた先には必ず何かが見えるはずだ。
（そう、やるだけはやった。テストは次もその次も待ってるんだから）
　此方は英語の問題用紙をカバンにしまうと、次の教科に気持ちを切り替えた。