１０１匹テオさん｜リアクション

１０１匹テオさん

【９】

　綾辻綾花は道端でたくさんのテオ似の子猫を見た。

「……あれって、テオの子供？」

　愛らしい子猫達の姿に、綾花は思わず「おいでおいで」をしてしまう。
　すると、子猫達はみんな素直に綾花にすり寄ってきた。

（‥‥か、可愛い）

　それは、思わず胸がキュンとしてしまうくらいの愛くるしさで、

「テオって子沢山だったんですね」

　と、すかさず猫メモに新情報を記入してしまうくらいテオ似な子猫達だった。

（でも、テオに子供がいるなんて話は聞いたことないし）

　だとすると、神魂の仕業だろうか？
　しかし、それだと世界が切り分けられていてもよさそうなのに、そういう気配もない。
　神魂現象は神魂現象でも、今回のそれは特に害のないものと考えていいのだろうか？
　考え込む綾花の足下に、子猫達は「にゃあ」とじゃれついてくる。
　子猫達はみなテオにそっくりだったが、性格はそれぞれ一匹ずつ違っているようだった。
　
　しかし、全ての子猫達に共通して言えることはみんなとても人懐っこいということだった。
　そして、彼らは揃いも揃って、綾花に何かをおねだりしているようにも見える。

（もしかしてポケットに常備してる猫用煮干しに気付いている？）

　綾花は、ポケットから煮干しを取り出し、子猫達にあげることした。
　すると、凄まじい勢いで子猫達は煮干しにかぶりついた。

「ふふっ。よっぽどお腹が空いていたんですね」

　綾花はくすくすと笑う。
　それから綾花は寮に戻るためにその場を離れたが、子猫達はその後をついてきた。

「まだお腹が空いているんですか。仕方がないですね……」

　綾花は苦笑いして、子猫をこっそりと寮の自室にあげる。

「こらこら。そんなに甘えた声出さないの。寮の人に気づかれちゃうでしょ？」

　綾花はしぃっと人差し指を立てて、子猫達を静かにさせる。

「少し待っててね」

　綾花が子猫達にそう言い聞かせて共用の台所に向かい、ササミを茹でて自室に戻る。

　部屋に戻るとカゴやら箱やらに入っていた猫が一斉に出迎えてくれる。
　茹でたササミを冷ましてから食べさせてやったり、可愛らしい姿に写真を撮ったりして和みつつ、綾花は猫達と夕刻まで過ごす。
　ふと気がつけば、どこか他の部屋からも「にゃあにゃあ」と猫の甘えたような鳴き声が聞こえてくる気がした。

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