悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

「さて、いくつか聞きたいことがある。あんたの名は何だ？」
　八神修は、切り裂きジャックの容疑者として知られている名前を挙げる。
「俺はもう、新聞社に『切り裂きジャック』と名乗ったぞ」
「……まあいい、それよりあんたにこんな力を与えたのはいったい誰だ？」
　修は、気になっていた黒幕の正体について問いただす。
「―――ふふ」
　ジャックの口から、唐突に笑い声が漏れる。
「……何だ？」
「ふふふ……はははは！」
　気味の悪い笑い声に、ジャックの捕縛に関わった全員が彼のほうを向く。ジャックは夜空を見上げ、虚空に向かって叫んだ。
「すまない、マダム！頼まれた仕事はやり損なった！」
　唖然とする一同をよそに、ジャックはさらに続けた。
「だが、約束は聞いてくれ―――もししくじって捕まったら、俺の体は処分してくれ、と。間抜けな警官に、指一本でも触れて欲しくねえんだ―――」
　誰かが驚きの声を上げた。
「ああっ！」
　切り裂きジャックの体が、少しずつ透けて見えなくなっていく。ジャック自身もそれを確認し、愉悦の表情を浮かべた。
「そうだ―――恩に着るぜ―――俺は謎に満ちた、神聖な存在でないといけねえんだ―――」
　ジャックの狂ったような哄笑が響き渡る。
「絞首台なんてごめんだ―――これこそ俺に相応しい最期だ―――俺こそは―――『切り裂きジャック』！」
　地獄の底から聞こえるような高笑いの余韻を残し、切り裂きジャックはロンドンの霧の中に消えた。残されたもれいびたちは、どうすることもできずに呆然と立ち尽くしていた―――

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