悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

　苦悶の声が、霧の立ち込める街に響いた。ジャックの足がふらつき、血液が足元にぼたぼたと流れ落ちている。初めて、切り裂きジャックに深手を負わせることに成功したのだ。

　鈴野海斗が、間髪を入れず再びジャックの前に飛び出していく。
「殺人鬼を倒すために殺人鬼になる必要はねえべ―――」
　とどめは両肩を砕く程度でいい。だが、逃げられても面倒だから、片足もつぶしておくか。海斗は最後の一撃を加えるため、スコップを振り上げた。
「―――地獄より現世の苦しみを知れ、外道」

　身体を驚異的に強化されたとは言え、手足をやられては切り裂きジャックも抵抗できない。ジャックは、とうとう借り物の洗濯ロープによって捕縛された。

　戦いを終えて仮面を外した灯斗南の顔を見て、神野美野梨は驚いて言った。
「いけない、怪我してるわ。応急処置をしないと」
「大丈夫さ、かすり傷だから」
　斗南はそう言ったが、椿美咲紀が花を持って進み出た。
「いいえ、平気です。私のろっこんで回復しましょう」

「そうか、あんただったのか……」
　新井すばるは、拘束され地べたに座っている切り裂きジャックの素顔を見つめた。暗闇でよく見えないが、三十代くらいの筋肉質の男だ。
「あんたの犯行についての文献は穴が開くほど見てきたけど、実際に会えると震えるよ」
「ふん、それは光栄だな」
　すばるの感想にも、ジャックの答えは素っ気無かった。

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