嫉妬暴走！　リア充爆発しろ！｜リアクション

嫉妬暴走！　リア充爆発しろ！

●大人を怒らせると怖いです

「まいったな……急にバイトが休むなんて」
　檜山立樹が働いている「カフェ&BARエルデスト」のバイトが休んだので、彼が買い出しすることに。
（こういうのって、続くから堪らないな……）
　シーサイドタウンは、家族連れや友人、恋人同士で賑わっている。
　ああいうふうに過ごしたいと思いながら周囲を見ると、買い物帰りの氷華・クルバトフに出会った。
（神魂の事件があってから、なんとなく檜山さんと顔が合わせづらい……）
　立樹は何も覚えていないはず。だから、気にすることは無い。そう自分に言い聞かせ、立樹に挨拶を。
「やあ、檜山さん、あなたも買い物帰り？」
「ええ。バイトが休んだので、俺が代わりに買い出しすることになりまして」
　店に来てコーヒーを飲みませんか？　という立樹の誘いに、お言葉に甘えて、と氷華は誘いに応じた。

　しばらく歩きながら話をしていたが、立樹の様子がおかしいと氷華は感じ取る。
（檜山さん、なんだか機嫌が悪そうだ）
　誘いを断って別れようとした瞬間、変な集団に絡まれた。
　覆面で顔を隠し、カラーボールや何かが入っている袋をたくさん持ったREDCの面々だ。
「リア充爆ぜろ！」
　REDCが氷華めがけ、カラーボールを投げつけた。どうやら、ふたりはカップルと思われているようで。
（氷華さんに手を出すなんて……！）
　服を汚され、恥ずかしそうな表情の氷華をを見た瞬間、立樹の頭の中で何かが切れた音がした。

　氷華を辱めたREDCメンバーに、鬼気迫る表情で立樹はジリジリと近寄る。
　ただならぬ雰囲気を察したのか、REDCメンバーは何故か誰一人として一歩も動けず、ガクガク震えている。
「君、何をしたかわかってる？」
「何って……俺はリア充を爆破しただけだ！」
　返ってきた言葉に、立樹は「はぁ？」と素で声が出た。
「それ、八つ当たりだよね？」
「ひ、檜山さん！　私は大丈夫ですから！」
　氷華がそう言うが、お怒りモードの立樹には聞こえていない。
「八つ当たりもいいとこだよね？　よくもまぁ、そんなくだらないこと全力でできるね」
　馬鹿じゃない？　と氷のように冷たい視線が訴える。
「そうやって、他人を妬むしかないからモテないんだよ、卑屈野郎」
　貌はいつもと変わらない笑顔だが、怒りのオーラを放ち、早口で相手をまくし立てる立樹。
　それに気負いされた氷華だが、これ以上は……と止めに入る。
「檜山さん、もういいです」
「氷華さんがそう言うなら。これ以上、彼女に手を出したら、次はないよ？」
　普段の温厚さは何処へやら。いつもと違う低い声、鋭い目つきで更に脅す。

「すいませんでしたー！」
　ベソかきながら逃げるREDCを見て、お仕置きしたほうが良さそうと氷華はろっこんを発動。
（許そうと思ったけどやめた）
　恥ずかしい目に遭わされた怒りと恥ずかしさで、氷華は自分にカラーボールを投げつけたREDCメンバーに「凍れ」と念じる。
　ダッシュで逃げ出そうとしたメンバーの足が氷で覆われ、身動きできなくなった。
「氷華さん？」
　逃がすと思っていたが足止めするなんて。予想外の展開に立樹は驚いた。
「リア充撲滅というが、お前はリア充になるために何か努力をしたのか？」
「ああ、したさ。でもなれなかった！」
「それは、あなたの努力が足りないから。嫌がらせをする暇があるなら、もっと自分を磨け」
　私達を襲うと怖いこと、わかった？　と言うと、ろっこんを解除。
　猛ダッシュでREDCメンバーが逃げるのを見届けると、立樹は氷華に頭を下げて謝る。
「先程はお見苦しいところを見せてすみません。大の大人が、こんなんじゃ頼りないですよね」
　苦笑しながら、いつもの優しい口調に戻った立樹だった。
「私のほうこそ、怖いところを見せたようで……」
「この一件は忘れましょう。冷えてきましたね。早くお店に行きましょう」