サンタクロースの贈り物～クリスマススペシャルラーメン～｜リアクション

サンタクロースの贈り物～クリスマススペシャルラーメン～

　椿美咲紀と八神修は、修の部屋でいつものように宿題を解きあっていた。
「そうだね、その英文なら、訳は『私だけでなく彼もまた』であっているよ」
「シュー君といると、本当に勉強がはかどるわ」
　美咲紀はほくほくとノートに英訳を進めていく。
　決して英語が苦手なわけでも、勉強が駄目なわけでもない美咲紀だったが、友達とやるほうが楽しい。
「長文読解は難しいよね。テストになると、ただ訳しただけでは一瞬戸惑うような問題も増えたし」
「引っ掛け問題はやめてほしいわ。この間の小テストで『クラリスさんの今一番好きな人は？』って質問で、思わず『マウリス』って答えかけてしまったし」
「わかる。正解は『アーサー』だったね。あの長文を訳すと、『私は過去に何人もの男性と恋をした。オーガストにクラーク、マイケルにニコラス。みんな私に夢中だった。マウリスもその一人だ。一番長く続いた彼との恋は、もう半年にもなる。営業課のベンジャミンも私の彼だった事があるし、広報部のアーサーは最愛の人だ』って書かれていたからな」
「マウリスと付き合っているのよね、って思って、でもよくよく考えると、一番好きな人はアーサーなのよね。提出する直前に気づいて書き直したわ」
　テストを思い出し、苦笑する二人の耳に、聞きなれない音楽が流れ始める。
「シュー君、聞こえる？　これ、チャルメラじゃない？」
　美咲紀が立ち上がり、窓辺を覗き込む。
「このあたりじゃ珍しいな」
　足元にじゃれ付いてきた子猫のタイガを肩に乗せ、修も美咲紀の隣に並んで音のするほうを眺めてみる。
「シュー君、腹が減っては勉強ができないのです。夜食にしましょう！」
　美咲紀がほんのり顔を赤らめて、お腹を押さえる。
　どうやらお腹が鳴ってしまったらしい。
「それじゃ、今日の勉強はこのぐらいにしておこうか」
　美咲紀にハンガーにかけておいたコートを手渡し、修もコートを羽織る。
「今日は俺のところに居るってのは、使用人には言ってある？」
「もちろんよ。帰りが遅いと心配するしね」
「それは結構」
　修の肩の上のタイガが、二人が出かけるのを察してそっと床に下りる。
「いい子だね。夜には戻ってくる」
「本当に賢い子よね」
　修と美咲紀はかわるがわるタイガを撫でて、チャルメラの鳴る屋台へ向かった。