畑中 華菜子は熱心に祈っていた。
かれこれもう、数十分、クリスマス雑貨店『Joulupukki』のサンタ☆ポストの前にいる。
願い事を書いてポストに入れると、サンタクロースに届くとか。
『世界中のみんなが幸せになれるように、クリスマスラーメンを配ってくださいアル!』
先ほどポストに入れてみたのだが、華菜子はポストにその熱い思いを語っていた。
「熱々のクリスマスプレゼントが届いたら、みんな温かくて、ほっこりした気持ちになると思うんですアル……!」
ぐぐっと拳に力を込め、熱く熱く語りかける華菜子。
そんな華菜子の横を、ゲーセン帰りの
葛西 一義が通りかかった。
「おい、お嬢ちゃん、ラーメンが食いてぇのか?」
びっくりして振り返る華菜子。
「うおっ?! そうアルけど、声出てたアルか?」
「おう、かなりはっきりと声に出してたなぁ。こんだけ寒い日が続けば、ラーメン食いたくならぁな」
「そうアル! ラーメンはみんなの心を幸せにする、素敵な食べ物アル!」
「そのラーメンをみんなに配りたいときたか。……よし、俺に任せておきな。こう見えてもラーメン作りにはちぃとばかし自信があるぜ」
「ほんとアルか? 寝子島のみんなにも、サンタクロースにも、配れるアルか?!」
「サンタクロースに会えるかはわからねぇし、世界は広いからせいぜい寝子島一帯が限度だな。だが俺は以前ラーメン屋台もやってるから、お嬢ちゃんの理想のラーメンってやつを、一緒に作ろうじゃねぇか」
「感激アル。猫島軒でもラーメンを沢山振るまうアル」
「あのラーメン屋の娘だもんなぁ。猫島軒のラーメンは毎日食ってても食いたくなる美味さだよなあ」
猫島軒は旧市街の参道商店街にあるラーメン屋で、賑やかで話題の尽きない店主と優しい奥さん、そして愛らしい看板娘の華菜子が評判の店だ。
「となると、俺が作るよりも猫島軒で作ったラーメンを配るほうがいいのか?」
「ううん、ラーメンは熱々が最高アルよ。猫島軒のラーメンは寝子島一美味しいアルけど、配って歩いたら延びてしまうアルよ……」
「そうか。ならやっぱり俺と一緒に屋台を引くか」
「サンタさんに配って欲しいけど、一緒に配るのもありだと思うアル」
そう、サンタさんへのお願いだから、華菜子が作って配るのはちょっとお願い事とは違うのだ。
でも、美味しいラーメンを配ってみんなが幸せになってくれるなら、それはそれでアリかもしれない。
「なら決まりだな。今から材料買い出しに行くか。なに、材料費は任せとけ、クリスマスシーズンだしな」
「行くアルー!」
ぐぐっと意気投合する二人。
さぁ買出しにと思った瞬間、二人はぴたっと立ち止まる。
なぜか雑貨店『Joulupukki』の横にサンタ姿のおじさんがいた。
何時来たのか、いつからいたのか。
二人はまったく気づいていなかった。
ソリの変わりにクリスマス風の飾り付けがされたラーメン屋台を持っているのはいったい?
二人は顔を見合わせる
その目はお互いに「まさか本物のサンタ?」といっている。
そして同時に首を振った。
サンタ姿のおじさんと、ラーメン屋台は首をふっても消えなかった。
「あ、あの。おじさん、サンタクロースさんアルか?」
華菜子が恐る恐る声をかける。
けれどサンタ姿のおじさんはニコニコと微笑むばかり。
そして二人にポストカードを手渡した。
『ラーメン屋台と素敵なクリスマスを』
読み終え、二人が顔を上げると、
「「消えた?!」」
声がハモる。
ラーメン屋台はそのままに、サンタ姿のおじさんはどこかえ消えてしまっていた。
「本物、か……?」
葛西がサングラスをかけなおす。
「わ、判らないアル。でも、屋台は本物アル……っ」
恐る恐る華菜子が屋台に触れても、消えたりはしなかった。
「マジかよ」
葛西も触れてみる。
しっかりとした造りのそれは、幻覚や幻の類ではなかった。
「ここを見て欲しいアル。食材も全部そろっているアル!」
屋台の中に用意された食材に、華菜子は歓声を上げる。
「本物だな」
食材をチェックして、葛西も頷く。
麺類はもちろんのこと、葱やチャーシュー、海苔など、ラーメン作りに欠かせない食材がすべて用意されていた。
「こいつを使わせてもらうか」
葛西は頷く。
得体の知れない誰かからの食材。
本来なら、口にいれないモノだろう。
けれどなぜか、不思議と疑う気持ちがわいてこなかった。
そして華菜子もそれは同じだった。
「きっと、サンタさんが協力してくれているアル」
予定変更。
買出しをやめて、二人はクリスマス仕様の屋台を引いて、夜の寝子島に繰り出すのだった。
はい、こんにちは。
今回は、クリスマスイベントの『サンタさんに手紙を送ろう!』企画より、畑中 華菜子さんの願いを一部採用させて頂きました。
美味しくラーメンを頂くもよし。
一緒に作るのもよし。
新作ラーメン考えるのだってありですよ?
クリスマス仕様の屋台は、屋台を出したいと願う人の前に、忽然と姿を現します。
なので、今夜は寝子島のいたるところに屋台が出現するでしょう。
参加した方は、自分で屋台を出してもいいし、
他の参加PCさんの屋台に関わってもいいし、
モブのNPCを指定して、そのNPCが出してる屋台に関わってもいいです。
自分で屋台を出す人は、コメントページに特徴などを書き込んでおくといいと思います。
ガイドに登場していただいたお二人が参加された場合、お二人ともガイドとは違う行動をとっていただいても大丈夫です。
皆様の美味しいアクションをお待ちしております。